4話 行動を持って反省しろ
「もういいじゃんそういうの‼」
キーヴァはベッドから飛び起き、ヴィンスに詰め寄った。
よくよく見ると、キーヴァは随分と成長したことに気づいた。
身体が大きくなったのは言うまでもないが、何より顔つきが大人になった。
その特徴的な秘色の瞳には、吸い込まれるような魅力がある。
「……どうしたの?」
「いや……」
ヴィンスは焦りを悟られないよう、特に何も書くことが無いのにペンを握った。
そして、1つ聞くことを思い出した。
「1つ気になってたんだが」
「んー?」
「魔王が倒されたって噂はどこで聞いたんだ?」
「えっと……ボイル峡谷だったかな……嘘つきアシュリンが出るところだよ」
「ああ、あそこか……」
ボイル峡谷とは魔族領と接した要所である。
天然の要塞と言っても過言ではないほどに険しく、それでいてとても美しい峡谷だ。
しかし、本当に険しすぎて王都軍も魔王軍もどちらも支配を放棄している。
両者睨み合うこの戦況の中で、唯一平和と言える場所なのだ。
あそこ近辺にも噂が流れていたというと、やはり魔王が倒されたということは確実。
疑う余地は無いということか。
「ねぇ、これで取り調べは終わり?」
キーヴァがヴィンスの顔を覗いた。
「ああ、ほとんどな」
「そっか、それじゃ私は帰るね。お兄ちゃんの邪魔しちゃ悪いし‼」
キーヴァは部屋に散らかしていた荷物をまとめ始めた。
大体の荷物を袋に詰めると、そそくさとドアの前へ移動し、ドアノブを握った。
「それじゃ‼ またどこかで会おうね、お兄ちゃん‼」
「待て」
ヴィンスはキーヴァの肩を強く掴んだ。
「まだ用事は終わって無いぞ、キーヴァ」
「あ、あれれ……さっき、取り調べは終わったって……」
「ほとんど、って言ったよな?」
「そ、そうだったかなぁ……?」
ヴィンスは、1枚の書類をキーヴァに見せつけた。
「お前、『勇者』を偽ったよな? だから、詐欺罪だ。それと、盗賊家業をしていたってことは窃盗罪もだ。それを副書記官長の俺が見過ごすわけ無いだろ?」
「う、嘘だよね……? 最愛の妹を犯罪者として捕まえるなんて、あり得ないよね……?」
「ありえるに決まってるだろ」
「魔王すぎる‼」
何だその比喩表現……。
とは言え、妹を犯罪者として捕まえるのは忍びなさ過ぎるのは事実だ。
「そこでだ、お前にチャンスをやろう」
「へ?」
「残りの調査……偽物の『勇者』を探す調査に同行し、この仕事を手伝え」
「……めんどい」
「そうか、犯罪者になりたいか」
「手伝います」
キーヴァは荷物を投げ捨て敬礼をした。
ちなみに、その敬礼ポーズは今は採用されていない古いポーズだとは、面倒くさすぎてヴィンスは言えなかった。
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