30から始める婚活
ミッシェル
第1話 30歳
ある一般的な会社。
業績は良くも悪くもない。
ごく普通の会社だ。
そんな普通の会社で働いているのは、このお話の主人公。
30になったばかりの平凡な男。
仕事の出来も並み程度で、仕事仲間との付き合いもほとんどない。
可もなく不可もなくと言う所。
屯平は今まで一度も彼女が出来た事はない。
顔は普通でも愛想悪かったりするだけで、人は離れて行ってしまう。
髪型はただの天然パーマ。
一度も気にした事はない。
身長は159センチと低め。
そんな彼を救い続けて来たのはアニメや漫画だった。
どんなに辛くても家に帰れば、現実とは違う世界が自分の部屋にはあった。
世間で言うオタクだった。
そんな彼にも唯一の友達が居た。
幼稚園の頃からの幼なじみ。
小学校も中学校も高校もずっと一緒。
屯平の大親友だ。
会社は違うけれど良く二人で遊んでいる。
170センチのナチュラルパーマヘアのおしゃれ。
飛鳥は屯平と違いかなりモテる。
でも付き合った事は一度もない。
ちなみに屯平と同じオタクである。
「 二宮君! まだ終わらないのかね? 」
上司から良く仕事が遅くて怒られてしまう。
「 すみません後少しで終わります。 」
女性社員からも冷たい視線と、明らかに陰口をされている。
仕事が終わっておしゃれな喫茶店へ。
その店で働いているのが、白岩飛鳥だった。
「 いらっしゃ…… なんだ屯平かよ。 」
「 俺はお客様だぞ?
ちゃんと接客しろよな。
奥の席使わせてもらうぞ。 」
屯平は一番奥の暗い席がお気に入り。
他の人の視線が気にならず、漫画を見たりゲームだって出来る。
屯平の安らぎの場だった。
「 飛鳥! 俺はココア頼むな。
それとパンケーキのシロップ山盛り。 」
ここのパンケーキにハマってしまい、屯平は5キロ太ってしまった。
お客さんも居ないので飛鳥は屯平の向かい側の席に座る。
「 お前も飽きずに来るなぁ。
だから太るんだぞ? 」
「 何勝手に座ってんだよ!
ここの接客マナー最低だな、ばくっ! 」
大きな口で一口。
そして大好きなアニメをスマホで見ている。
( 飛鳥は俺より社交的で彼女だって直ぐに出来そうなのに、オタクだったり俺と無駄に付き合ってるから彼女の気配すらない。 )
顔は二枚目なのにいつも冴えないメガネをかけている。
屯平だったら絶対にコンタクトにしている。
「 まっゆっくりしていけよ。 」
飛鳥は厨房へ入って行った。
「 先輩またあいつ来てますよ?
いい加減出禁にしましょうよ! 」
飛鳥の後輩店員。
大学を通いながらここのバイトをしている。
「 愛理ちゃんは本当屯平嫌いなんだね。 」
「 当然です、見た目も気にせずアニメやゲームに漫画に全力投球。
私の一番嫌悪する存在です。 」
凄い言われように飛鳥も苦笑い。
「 女性はみんなあいつが嫌いみたいだな。 」
飛鳥は屯平の事を見ながら話している。
「 あいつはルックスとかは全然で、良く女子達にはオタクだの悪口言われてた。
まともに学生時代女子と話してなかったかもな。 」
「 そんなの当然ですよ。
外見も中身も最低な男…… 。
もし同級生に居たら私も悪口言ってましたよ。 」
愛理は本当に屯平が嫌いだった。
「 そんなみんな嫌いなあいつは、俺の自慢出来る最高の親友さ。
あいつが居なかったら俺は今居なかったかもな。 」
飛鳥は悲しそうに話していた。
「 全然です! あのオタクと先輩は真逆。
先輩のイメージすら悪くさせちゃう。 」
愛理は飛鳥の事が好きだった。
仕事の先輩としてもだけど、それ以上に男としても好きだった。
「 そうかぁ…… あいつの事もっと知ったら好きになっちゃうかもね。 」
飛鳥は時折に恥ずかしげもなく色んな事を言う。
そんな正直で優しい所も好きだった。
「 おいおい! 飛鳥!
新しいアニメは豊作だぞ??
あのアイドル声優も新しいユニット組んで主題歌歌ってんだってよ。
こっち来て一緒に見ようぜ?? 」
「 おう今行くわ、ちょっと席外すね。 」
そう言って屯平の元に向かう。
二人は笑いながら小さなスマホ見ている。
「 だから言ったろ?
このアニメは神ってるって。 」
「 そうだな、この右の声優は新人かな? 」
二人が楽しそうにしている所を、羨ましそうに見つめていた。
( 飛鳥さんにアニメとかを無理矢理好きにさせたのはあいつだ。
絶対に許さない…… 。 )
密かに恨まれているのだった。
飛鳥が仕事を終えて、二人は飛鳥の家でお酒を飲んでいた。
「 だから言ってんだろ?
右の子は親も声優で二世代で声優やってんだよ。
いやぁーー 血筋ってすげぇな。 」
テレビを指差して笑っている。
まるで子供のようだ。
ちなみに大きな30歳子供。
「 会社には良い子とか居ないのか? 」
「 良い子? …… リアルなんてどうでも良い。
酒が不味くなんだろうよ。
このヒロイン越える同僚なんて、世界探しても居ねぇからな。
それよりもだな…… 。 」
飛鳥は知っていた。
今まで屯平は女性との関係を避けていたのは、色々いじめられたりバカにされてきたからだった。
そのせいで自ら関係を持たないようにしている。
傷つくくらいなら女性なんて。
屯平の前では女性の話は禁句になっていた。
だからこそ飛鳥は屯平に前に進んで欲しくて、無理にでも女性の話をしていた。
屯平を心配しての事です。
「 屯平…… 俺達の付き合いは幼稚園の時からだから、色々分かってるつもりだ。
いい加減彼女の一人や二人。
女友達で良いから作れよ? 」
屯平はテレビを見て返事をしない。
嫌な話は無視するのが屯平の悪いところ。
「 ずっと一人は寂しいぞ?
一緒に寄り添う人と暮らせたらどれだけ。 」
「 飛鳥!! 余計なお世話なんだよ。
今日は気分が悪い…… 帰るわ。 」
屯平は怒って帰ってしまった。
飛鳥は小さくため息を吐く。
「 あいつにだけは幸せになって
貰いたいんだけどな…… 。 」
屯平はぶつぶつと文句を言いながら歩いていた。
「 なんだよ、なんだよ。
余計なお世話だってんだよ…… 。 」
一人夜道を歩いていると金髪で柄の悪そうな連中が道の途中で立っている。
「 おじさんお金貸してくんない? 」
( やっぱり来たーーっ!
今は12月で今年3回目で…… やられてたまるか。 )
凄い勢いで走り始める。
直ぐに不良達も追いかけて来る。
階段を勢い良く降りてると、足を踏み外してしまい転げ落ちてしまう。
「 どぅぁあーーっ!! 」
不良達はヤバいと思い、直ぐに逃げてしまう。
階段の下で屯平は動かず倒れている。
「 こんなんばっかだ…… 。
アニメだとそろそろ何か良いことあっても、良いもんだと思う…… んだけど。 」
自分の現状に呆れて泣きながら気絶してしまった。
寒い12月の日だった。
目が覚めると病室。
頭は痛く足腰も痛みがある。
「 あんたまた絡まれたのかい? 」
屯平のお母さんが立っていた。
「 うるせぇよ…… ただ酔っ払って転んだだけ。 」
屯平はいじめられたりしても、絶対お母さんにだけはそれを言わなかった。
悲しませたくなかったからだ。
それと男のプライドもあった。
「 起きたか? 派手にやったな。 」
飛鳥も見舞いに来ていた。
屯平はイラついて布団を被る。
「 面会謝絶だ! こいつを追い出してくれ! 」
「 また子供みたいな事言って!
ごめんなさいね飛鳥君。
わざわざお見舞いに来て、こんなバカな事言われて。 」
お母さんは謝ると飛鳥は笑って。
「 いえいえ、お気になさらないで下さい。
こいつとは長い付き合いなんで。 」
そう言いテーブルに何かを置いて帰ってしまう。
屯平が恐る恐る見てみると、そこには欲しがっていたフィギュアがあった。
「 これ…… 俺の欲しがってたフィギュア。 」
「 飛鳥君がごめんって伝えてだってさ。
わざわざあんたの為にそれ買ってきたのよ? 」
屯平は直ぐに立ち上がり追いかける。
「 飛鳥ーーっ!! 」
何とか追いつき呼び止める。
「 ん? 悪かったな屯平…… 。 」
「 いや…… 俺の方こそごめん…… 。
フィギュア…… サンキューな。 」
飛鳥は歯を見せつつ笑って帰って行った。
屯平と飛鳥は大親友だ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます