第12話 いざ、婚活へ!
数日が経って屯平は婚活パーティーに来ていた。
心臓はバクバクで破裂しそうに。
この為に新しく新調したスーツに身を包み、女に飢えた狼の中で何処までやれるのだろうか?
「 マスター! 聞いて下さいよ。
あのバカは何故か分かんないですけど、いきなり婚活パーティーなんて行って…… 。
本当何考えてるんだか分からない。 」
「 そうですかぁ、それはそれは。 」
マスターも精神が安定して、やっと働けるようになっていた。
愛理もいつまでも休んでられないと思い、頑張って生きようと考えている。
「 ずっと死んでるような顔してたのに、何を思ったのかいきなり…… 。
寂しさを埋めたくなったんですかね? 」
コーヒーをドリップしながらマスターは。
「 そうだねぇ…… 飛鳥君の為にじゃないかな? 」
婚活と飛鳥の為とは全く噛み合わない組み合わせだ。
「 飛鳥君はずっと気にしていたんだよ。
彼の幸せを願ってね。
だから安心させたいのかも知れないね。
もう俺は大丈夫だよって。 」
納得してしまう。
あんなに奥手で女性恐怖症が動いた理由。
屯平らしい決意の形だった。
「 本当…… 変なやつ! 」
笑いながらバカにしていた。
マスターも久しぶりに笑顔の愛理を見れて、凄く嬉しい気持ちになった。
「 びゃびゃびゃっ…… 趣味は…… 。
ミュージカル観賞に…… 麺作りいっ!! 」
会場では明らかに浮いていた。
緊張していて尚且つ、一般受けしやすい趣味にしてみたけど、実際に受けるかは謎だった。
周りから苦笑いが溢れてしまう。
( こいつには勝ったな…… 。 )
周りの男性陣からはそう思われていた。
そこのパーティーの形式は、椅子に座り男性と女性に分かれて自己紹介をする。
後はバイキングを楽しみつつ、気の合う殿方を探すのだ。
「 私は会社を経営してまして、大きくはないですが蓄えもあります。
休日はアウトドアキャンプをしたりしてます。
相手が出来たらキャンピングカーで一緒に行けたらな、と思っています。 」
( 何だよこのスペックは!?
明らかに勝ちゲーに来てるじゃないか。
女性陣の目も釘付けになってるし。 )
女性恐怖症の前に、趣味やスペックも完全に負けていた。
「 それではフリータイムに致します。
どうぞお楽しみ下さい。 」
緊張してぶるぶる震えている。
何をすれば良いのか?
話をかけるにはどう話題を振る?
屯平は頭をフル回転させて考えても、全然分かる気配はなかった。
( どうにか…… どうにか誰かと話さないと。
話す…… ? どうやって??
仕事場でもまともに話せないのに、ここで女性と仲良くなるなんて出来るはず…… 。 )
目の前がぐらぐらと回ってしまい、屯平はゆっくりと倒れてしまった。
係の人が控室に連れていき、目が覚めるまで様子を見ることにした。
単なる脳震盪のようだ。
周りから笑い声が聞こえてくる。
( まただ…… いつもと何一つ変わらない…… 。 )
起きたのはそれから何時間後。
みんな帰ってしまい係の人しかいない。
「 大丈夫ですよ、良く…… 良くある事ですから。」
その話し方で分かる。
やっぱり珍しいのだと。
「 失敗した…… 。 」
初めての婚活パーティーは失敗に終わり、一人悲しくタメ息をつくばかりだった。
次の日会社に行き仕事をしていた。
いつもと何一つ変わらない。
「 休憩入ります! 」
そう言い仕事場を離れる。
直ぐに近くの自販機の前でスマホをいじっている。
高速で何かを打っている。
「 えーーっと…… 初めまして。
趣味は…… 陶芸っと。 」
屯平は全然諦めていなかった。
マッチングアプリを始めていた。
高速で色々な女性にメールを送る。
嘘の趣味や身長も軽く嘘をつく。
写真は撮るの得意ではなく、一番良い写りかたをしたくて近くの証明写真機で写真を撮った。
「 ウッシッシッシ…… 。
他と差をつけるにはやる気よ。
やれば出来るもんだな。 」
自画自賛してはいるが、他のやってるユーザーは格好良く魅せるためにキメ顔をしたりして、屯平のような履歴書に載せるような写真は誰も居なかった。
離れた場所から屯平を見る人陰が。
こっそり麻理恵が遠くから見ている。
( どうしようかなぁ…… 。 )
麻理恵は飛鳥を失ったばかりの屯平に、上手く話をかけられないでいた。
あんなにも仲良かったのに、簡単に立ち直れるはずがない。
だから簡単に話をかけられないでいた。
「 結構送ったぞ…… ざっと見積もっても150人ぐらいに送ったかな。
さぁさぁ…… 返信はまだかな?? 」
嬉しそうに画面を見つめて、仕事に戻っていってしまった。
麻理恵は結局話せずに終わってしまう。
夕方になり、仕事を終えて片付けをしている。
そっとスマホの画面を見ると、何も通知されていない。
「 あれ? あんなに送ったのに…… どぅえっ!? 」
あまりの人気の無さに立ち上がりびっくりする。
「 二宮さんどうしました? 」
同僚の女性に話をかけられる。
「 い…… いや、大丈夫です。
それではお先に…… 。 」
恥ずかしそうに出ていってしまった。
周りの同僚も訳が分からなかった。
夜に公園のベンチに座りながらスマホを眺めている。
メール履歴は0…… 。
「 ふぁああ…… 色々勉強したのに。
恋愛は頭じゃないのかよ。
結局顔か…… 。 」
また言い訳を探したくなる。
こんなにダメだと逃げたくもなる。
するとゆっくりと近寄って来る女性。
「 喫茶店来なよ…… こんなとこ居ないで。
マスターも会いたがってるよ? 」
愛理が喫茶店の近くの公園に居た屯平を気にして来ていた。
「 うるさい…… 俺は店行かない。
絶対に絶対に行かないからな…… 。 」
あの店には思い出が多すぎたのだ。
屯平にはまだ行くには時間がかかるようだった。
「 何で…… いきなり結婚したくなったの? 」
「 分からん…… 。
だけど飛鳥が天国で安心出来るように、誰かと結婚するのもありかな? って。
そんでもって、死んだら偉そうな顔して会ってやるんだ。 」
まだまだ乗り越えられていなくても、前に進もうと頑張っていた。
自分なりに出した答えだった。
街灯に照らされて、良く見えなかった屯平の顔がうっすら見える。
何故なのかその時はいつものように腹が立たなくて、逆に少し男らしく見えた気がした。
「 あんたって本当変…… 。 」
肌寒くなってきたので帰る事に。
「 これやるよ。 」
それは高い板チョコだった。
「 何よ…… 格好つけて。
ありがとう…… 。 」
「 別に…… またな。 」
恥ずかしそうに帰っていった。
帰るときに「 またな。 」 っと言ったのは初めてだった。
いつもからかったり、ぶっきらぼうな屯平が言うとは思わなかった。
愛理はクスりと笑う。
「 何がまたなよ、でもチョコは好きだから許してやるかな。
…… っておい! 食べ掛けじゃん!! 」
折って食べたのか、2割程度食べられた後だった。
「 本当腹立つぅーーっ!!
女性に食べ掛け渡すとかありえない。
ん? そう言えば…… 婚活パーティーあの格好で行ったの?
…… んな訳ないっか。 」
でもチョコが好きだったのと、折角貰ったから仕方なく食べた。
味は美味しかった。
そして新調したスーツ姿を思い出して笑っていた。
帰りの途中で美紀が待っていた。
「 屯平さん…… 。 」
思い詰めた表情で立っている。
「 どうしたの? 道にでも迷った? 」
すると勢い良く屯平に抱きついて来る。
「 屯平さぁーーんっ…… ひっく! ひっく! 」
屯平の事が気になりやって来たのだ。
飛鳥の事で病んでると思い、心配して泣いてしまっていた。
「 あっ…… いきなりごめんなさい。
心配して動揺しちゃって。 」
直ぐに離れるとゆっくり屯平は気絶してしまう。
「 えぇーーっ!? どう言うこと?? 」
屯平は女性の目も見れず、手も握った事なんてない。
だから抱きつくなんてあまりにもハードルが高かった。
あっという間に心拍数がオーバーヒートしてしまい、気絶してしまったのだ。
その後美紀が何度も呼び掛けても目が覚める事がなく、1人取り残されてしまい慌ててしまう美紀なのでした。
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