第13話 初めての……


「 ん…… ん? ここは? 」


いつの間にか意識が失くなり、目が覚めたのは自分の部屋だった。


「 あっ! やっと起きました?

救急車呼ぼうか悩んでたんですよ。 」


部屋には美紀が居た。

慌てて動揺してあたふたしてしまう。


「 大丈夫です、落ち着いて下さい。

いきなりだったのでびっくりさせちゃいましたよね?

本当にごめんなさい…… 。 」


抱きついた事を謝った。

屯平は自分の領域に女性が居る。

それだけで心拍数は太鼓のように、ドントコと脈打っていた。


「 大丈夫…… そう言えば。

どうやってここに入ったんです? 」


「 ポケットに鍵入ってたので拝借しました。

部屋は鍵が合うとこ探しました。

いやぁーー 重かったです。 」


笑いながら何とも大胆な行動。

男でもやらないくらいだ。


「 それは…… 色々ありがとう…… 。 」


迷惑をかけたのでキョロキョロしながらお礼を言う。

美紀は全く気にしていなかった。


「 それにしても…… 部屋…… 。

何か綺麗になってません? 」


起きて気になったのは、部屋の散らかったゲームやフィギュアや漫画。

綺麗に整頓されていた。


「 私長女なので面倒見良いんですよね。

だから気になっちゃって片付けしちゃいました。

にしても散らかり過ぎですよ。 」


「 ありがとう…… 。 」


夜も遅いので帰らせようとすると、上着を脱ぎ始める。


「 どっどっどやぁ!?

いったたたたい、どうしたんですか?

もう遅いから帰らないと!! 」


慌てて違う方向を見る。


「 えっ? もう電車もないんで帰れないので、今日泊まっていきます。

大丈夫! 気にしないで下さい。

いつものように生活して下さいな! 」


美紀は男性の部屋に泊まるのは初めてではない。

男友達の家にすら泊まるほど大胆。


逆に屯平は女性すら家に入れた事ないのに、泊まるなんて…… 。

考えただけでも緊張してめまいがする。


( ななな…… 何だこのはしたない女は!?

普通見ず知らずの男の部屋来るか?

しかも泊まるとか…… お父さんの顔が見てみたい。)


色々考えている間にお風呂に入りに行ってしまった。


「 あぁ!! ちょっと! 」


「 大丈夫でーーす、狭いお風呂でも全然気にしないんで。

シャンプーとかも適当に使っちゃいますね。 」


自分家のお風呂のように寛いでしまっている。


( これだから最近の若い子は。

何も良いって言ってないぞ…… 。

恋愛とか女性との交遊マジでキツい。 )


度重なるストレスによって精神的に疲れていた。

屯平は飲み物を飲みながらテレビを見る。


「 ふぅーーっ、良いお風呂だったぁ。 」


美紀はお風呂から上がると、屯平のシャツを着てリビングに来た。

サイズが合わなくてブカブカで、何故かズボンは履いていない。

シャツの丈が長いから下着はなんとか見えていない。


「 わぁーーっ!! ちょっと!

人のシャツを勝手…… それズボンはどうなってんのよ??

何で履いてないんだよ! 」


「 んん?? これ似合うでしょ?

タンスから出てきたから借りてます。

ズボンはサイズ合わないんで、まっこれで良くないですか? 」


目のやり場がない格好に、屯平は慌てて目を手で隠した。


「 まぁ気にしないで下さい。

ゲームでもやりましょうよ、こんなに沢山あるんだし。

どれやろうかなぁ…… 。 」


しゃがんでゲームを探している。

屯平は恐る恐る目を開けて、ゲームを一緒に探そうとする。

すると美紀がしゃがんでいるのを、後ろからもろに見てしまう。

下着が見えそうになると直ぐに倒れてしまう。


「 あれ? ちょっとちょっと!

ゲームやろうよ? って…… また気絶してる? 」


屯平には刺激が強すぎた。

その日は結局朝まで眠ってしまった。


朝になり一緒に部屋を出る。


「 ふぅあぁぁ…… 良く眠たなぁ。 」


大きくあくびをする。

屯平は眠っていたと言うより、意識を失ってしまつまていた。

と言う方が近かった。


「 もう…… 来るなよ。

余計なお世話…… 。 」


最後まで言い終わる前に顔を近づけて来る。


「 はぁっ!? 余計なお世話?

まともに女性とも話せないのに、ほっとけるはずないじゃない。

これからも通うんで!

飛鳥さんから私は頼まれてるんで。 」


何事に置いても強引で、男のように大胆な行動が多い。

屯平よりも男勝りにも感じる。


「 じゃあ私はここで。

後で連絡するんで、バイバイ! 」


最初から最後まで優しく笑って話してくれていた。


「 何で俺なんか気にするんだか…… 。

連絡するって…… 番号とか教えてないけど。 」


色々あったけど仕事に行くことに。

ポケットのスマホがバイブする。


( 昨日は泊めてくれてありがとう。

女性への恐怖症治す為に頑張ろう!

また連絡するね。 )


とメッセージが送られて来た。


「 えっ?? いつの間に? 」


昨日気絶したりしてる間に、ちゃっかり番号やIDを勝手に交換していたのだ。

色々しっかりしている。

あくびをしながらまた仕事に向かうのだった。


美紀は大学で嬉しそうにしている。


「 美紀どうしたの?

何かあったの?? 」


愛理が聞くと笑いながら。


「 昨日トントンと盛り上がっちゃってさ。 」


「 トントン…… もしかして屯平の事!? 」


愛理はびっくりしてしまう。

美紀は何だか気分良さそうにしている。


「 昨日心配して会いに行ったら、抱きついただけで倒れちゃってさ。 」


屯平の事を想像すると納得してしまう。


「 それで家に運んでお泊まりしてきたのよ。 」


「 お泊まりーーっ!!?

何でそんな事になる訳よ? 」


愛理はびっくりしっぱなし。

美紀は全く動じずにしている。


「 泊まりとか普通くない?

ウチ的には友達の家とか良く泊まるし。 」


愛理は屯平を少し同情してしまう。

こんな大胆な子が来たらパニックになっても仕方がない。


「 だからって…… 。 」


「 愛理…… トントンやっぱりそんな悪い人じゃないよ?

話しててもぎこちないだけで、本当につまんない訳でもないし。 」


美紀は屯平を絶賛している。

そして恐怖症を克服出来ると信じていた。


( 何よ…… そんな詰めたら絶対嫌がるのに。

何も知らないくせにさ。

って…… 何で私がイライラしてるの? )


何故か心がざわついていた。


屯平は帰りに1人ゲーセンに居た。


「 あんた…… やっと来たわね。 」


いつもの帽子の子がやって来た。


「 またやる気になったの? 」


「 うるせぇ…… やらないならどっか行けよ。 」


そう言うと帽子の子はニッコリ笑いゲームを始める。

屯平は相変わらず無気力にスティックを動かす。

簡単に帽子の子に勝ってしまう。


「 クソぉ…… やっぱ強いわ。 」


負けるといつものように再戦してこない。

諦めて帰ったかと思う。


「 はいっ…… これあげる。 」


帽子の子が飲み物を買ってきた。

エナジードリンクを手渡す。


「 ありがとう…… 。 」


貰ったのでベンチに座り二人で飲む。


「 あんた…… この前落ち込んでたけど、もう大丈夫なの? 」


帽子の子が心配していたのだ。


「 どうだろう…… あんまり良いとは言わないけど、ずっと立ち止まってはいられないからな。 」


その話し方で何か複雑な理由があるのが分かった。


「 私…… で良ければいつでも言って良いよ?

話くらいなら聞くし…… 。 」


優しい言葉に嬉しくて少し笑う。


「 ガキんちょに相談するようになったら終わりよ。

大人はな…… 色々大変なんだよ。

恋愛とか人生とか複雑なんだから。

まっ…… 大人の男になったら分かるさ。 」


そう言うと少し考えてしまう。

何か傷つく事を言ったか? と心配になる。


「 おっさんが説教すんなし。

恋愛とかは絶対あんたよりは分かるし。 」


何やら気に触ってしまったらしい。


「 そうだな…… 恋愛は難しい…… 。

そうだ! マッチングアプリって知ってる?? 」


「 はっ? …… マッチングアプリ? 」


帽子の子に自分の作ったプロフィールや、送った申請メッセージを見せる。


「 何これ…… やる気の欠片も感じないんですけど。

しかも何でプロフ画像証明写真??

あははっ!! 凄いウケるんですけど。 」


プロフィールを見て凄く笑っていた。

笑っていると声のトーンが高くなっている。


「 そんな笑う事ないだろ!!

真面目に…… やってんのに。 」


「 ごめん、ごめん。

わた…… 俺がアドバイスしてやるよ。 」


そう言って色々アドバイスをして貰った。

名前も知らない2人が楽しそうに婚活の為、話し合っている。

屯平にまた1人友達が出来たのだった。

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