第32話 トラウマ
屯平は麻理恵とデートした日から、マッチングアプリを通してではなく直接メールをするようになっていた。
大した話ではなくても人と繋がっている、それだけで心の隙間が埋まるような気持ちだった。
その日は飛鳥の実家に来ていた。
屯平はお墓に良く通っているけど、実家にある仏壇にも線香をあげに来ていたのだ。
「 外は暑いなぁ…… 全く。
本当だったら夏は一緒に、遠くまで遠征してアニメの元になった場所巡りしたりしてたのにな。 」
屯平は仏壇に飾られている笑った飛鳥の写真を見ながら愚痴を溢していた。
時間が経っても来ると悲しい気持ちが込み上げて来る。
「 屯平ちゃん! 冷たい飲み物とケーキ出したから食べて頂戴。 」
飛鳥のお母さんは優しく、いつも笑っていて飛鳥と笑った顔がそっくりだった。
屯平とは昔からの付き合いで、もう1人のお母さんのような存在。
体は弱かったけどいつも元気で溢れている。
「 頂きまぁーーす、 ばくばく…… ! 」
屯平は自分の実家よりここに通ってしまうくらい、おばさんの事が好きだった。
「 おばさん…… 電気切れそうだな。
これ食べたら変えてやるよ。 」
ケーキを沢山口に入れて、おばさんが大変だと思う家の照明を新しいのに変えた。
「 屯平ちゃんわざわざ良いんだよ?
お客さんなんだからゆっくりしてて。 」
「 何言ってんだよこれくらい。
お客さんって感じじゃないしね。 」
屯平は人見知りが凄いけど、おばさんには心を開いて話せていた。
「 屯平ちゃん…… 良いのよ?
私の事なんか気にしないで。
1人で大体出来るんだから。 」
おばさんは屯平が来るのが嬉しかったけど、飛鳥の代わりのように家の事をしてくれていたから、申し訳ない気持ちになっていた。
「 全然気にしないでくれよ。
どうせ家に居ても暑かったし。
ここはエアコン効いてて涼しいや。 」
親友の代わりにおばさんの家の事をやっていた。
飛鳥やおばさんの為に…… だけではなく、一番は自分がそうしたかっただけだった。
「 屯平ちゃんは本当に優しいね。
彼女の1人くらい出来てもおかしくないのに。 」
おばさんは屯平の事を気にしてくれている。
飛鳥の分まで幸せになって欲しいと思っていた。
「 これが本当大変で…… 。
おばさん聞いてくれよぅ。
この前会った女性なんてさ。 」
屯平は会った女性の愚痴を沢山してしまう。
おばさんは笑っては励ましてくれて、楽しく話していた。
仕事を終えていつものように帰ろうとしていた。
屯平は仲間との付き合いもないから、軽く寄り道したりする事があっても、基本は真っ直ぐ帰宅している。
「 せんぱぁーーいっ! 」
帰り道歩いていると麻理恵が呼び止めてきた。
「 どうしたんだ? 何か忘れ物? 」
「 全然違いますよ。
仕事も終わったし、少しご飯行きません? 」
またご飯に誘われた。
前回はマッチングアプリで偶然会ってしまい、仕方なく付き合ってくれたのだと思っていた。
「 別に良いけど…… ? 」
「 やったぁ! なら私が良いお店知ってるので。 」
そう言って二人はお店に。
麻理恵を見ると楽しそうにしている。
「 思ったんだけど…… いつでも付き合うけど、麻理恵さんにはもっと年の近い人居るだろ?
俺なんかと行かなくても…… 。 」
悪いと思い気を遣うと麻理恵は、屯平の目の前に回り込んで止める。
「 誰と付き合うかは私が決めます!
私が先輩と行きたいから誘ったんです。
後年だってあまり変わりませんよ? 」
気が強く思った事を真っ直ぐ言える。
屯平は恥ずかしそうに頭をかいてしまう。
「 分かったよ、なら行こうか。 」
屯平は女性との付き合いは殆どなく、学生時代からまともに話せていなかった。
だからこそどうコミュニケーション取れば良いか分からなかった。
( やった! 奥手な先輩にはぐいぐい行かなきゃね。
ご飯楽しみだなぁ。 )
麻理恵は屯平が鈍感なのは当然分かっていて、自分がもっと積極的になろうと思っていた。
二人で美味しそうなハンバーグのお店にやって来た。
「 ここが本当にオススメなんです。
凄い大きくて肉汁とかヤバくて。 」
嬉しいそうに話していると屯平は。
「 そうなのかぁ…… 。
俺は恥ずかしいけど彼女とか友達ですら全然居なくて、外食とかもあまりしてなかったからな。
色々新しい発見ばかりだ。
誘ってくれてありがとう。」
屯平は笑って言うと麻理恵は他の方に顔を向ける。
「 何言ってるんですか!
毎回大袈裟なんですよ。
ちょっとお手洗いに行ってきますね。 」
少し駆け足で行ってしまう。
屯平は嬉しそうにメニューを見ていた。
トイレの鏡の前で麻理恵は、顔に手を当てて恥ずかしそうにしてしまう。
「 ちょっとちょっと…… 。
油断してたらあんな嬉しい事をさらって言う。
最近ちょこちょこ笑うとこも、本当に好き過ぎて普通を装うのキツい 。 」
顔に出てしまうと思い直ぐにトイレ逃げて来たのだ。
意味もなく落ち着かせる為に、手を洗って鏡を見る。
「 そう言えば…… 彼女居ないって…… 。
この前家に居た女性って誰だったのかな?
まぁいっか! 居ないって分かったし。 」
前向きに考えて喜んでいた。
麻理恵の勘違いしていた女性は、巴だったので心配する必要はなかった。
席に戻ると料理が来ていた。
「 お待たせしました、食べましょうか。 」
二人でハンバーグを食べる。
美味しくて屯平も大満足。
むしゃむしゃと食べる姿は、無愛想ないつもの姿と違って子供のようだった。
「 屯平じゃない?? 」
屯平は声に反応してビクッとなる。
声の方を見ると派手な服を着た女性が立っている。
「 あれ…… お知り合い? 」
麻理恵が聞くと屯平は目をキョロキョロとしている。
明らかに動揺していた。
「 やっぱ屯平じゃんか。
久しぶりじゃない! 元気にしてた? 」
綺麗な派手な女性は積極的に話してきた。
その女性は与一が飛鳥のお墓会った、綺麗な人だった。
屯平は返事をしない。
いつもと様子が違う。
「 久しぶり…… 。 」
「 中学の時ぶりじゃない?
仕事とか何してんのよ?? 」
強引に話してきて屯平はあたふたしている。
「 先輩…… こちらは? 」
「 てかパパ活してんの!?
相変わらずオタクやっての?
マジお金別に使えって。 」
麻理恵をパパ活相手だと勘違いする。
凄い失礼な話だ。
「 違いますよ。
同じ会社の同僚です。 」
麻理恵が伝えると1人で爆笑して、大きく手を叩いて笑う。
「 屯平と食事とかすごっ!
私は屯平と小学校のときから一緒だった、カスミって言うの。
ヨロシクね! 」
カスミは小学校の時の同級生。
派手でギャルっぽさが凄い。
話し方もギャル感が醸し出されている。
「 私もここ座って良い?
今旦那と来てんだけど、ダルいからこっちで食べるかな。 」
無理矢理に麻理恵の隣に座ってしまう。
「 麻理恵ちゃん? 可愛いね。
屯平とは楽しく話せてる?
コイツさぁ…… 昔から人見知りでね。 」
カスミは屯平の昔の話をする。
麻理恵はそれを聞いて笑っている。
「 少し…… トイレに…… 。 」
屯平は手荷物を持って席を離れる。
レジに行き席を指差してお会計を済ませていた。
そしてゆっくりと外へ出る。
「 ごめん…… 。 」
屯平はバレないように帰ってしまうのだった。
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