第33話 友達として
屯平は必死に逃げていた。
走って走って、その場所から何処でも良い遠くへ。
( はぁはぁはぁ…… 。
早く…… 早く逃げなくちゃ…… 。 )
屯平は後の事も考えずに走っていた。
カスミと相当嫌な事があったのだと分かる。
屯平が逃げて少しして…… 。
カスミと麻理恵は遅い屯平の事が気になる。
「 先輩…… 遅いなぁ。 」
「 屯平のやつ…… こんな可愛い子放置して。
だからモテないんだっての! 」
カスミはイライラして店員に屯平の事を尋ねる。
するとお会計を済ませて帰った事を知らされる。
「 あいつ…… 帰ったって。 」
麻理恵は状況を掴めずにショックを受ける。
カスミは大きくタメ息をつく。
「 ごめんね…… 私のせいだよね。 」
「 いいえ! そんな事…… 。 」
カスミは大きく頭を横に振る。
「 実はさ…… 私…… 。
あいつと友達なんかじゃないの…… 。 」
「 えっ…… ? 」
麻理恵は分からずびっくりしてしまう。
「 小学校の頃からさ…… 同級生で一緒のクラスだったんだけど。
あいつの事…… いじめてたんだ…… 。 」
衝撃的な話をされて麻理恵は驚いてしまう。
カスミも思い詰めた表情をしつつお酒を頼む。
ゆっくりとお酒を飲んだ。
「 あいつさ…… 良く笑うやつでさ。
アニメやゲームが大好きで、嬉しそうに話してるの見ててさ、なんか…… うざかったんだよね。
今思い出しても意味分かんないよね…… 。 」
子供の頃、カスミは屯平の事を嫌った。
恥ずかしげもなく話す姿を気持ち悪いと思っていた。
いじめの理由は子供の頃なんかは、ほんの些細な理由からだった。
カスミは屯平を周りの女子と男子でからかい始めた。
「 私ね…… 変なあだ名付けたり、指差して笑ったり色々しちゃったんだ…… クズだよね。 」
麻理恵は屯平の悲しき過去に驚愕する。
カスミは悲しそうにお酒を飲みつつ話を続けた。
「 私がからかい始めてからあいつ…… クラスの中でゲームとかの話しなくなって。
笑わなくなったんだ…… それで私もスッキリみたいな感じで。 」
聞いているだけで腹が立つ話。
あまりにも自分勝手な言い分だった。
「 それで中学生になって…… 他の学校から来た子に、屯平の事言って…… みんなでからかったの。 」
酷いいじめの話だった。
屯平がカスミから逃げた理由は当然だった。
そしてカスミが高校三年生になった時、ある転機を迎えた。
同じクラスの飛鳥にずっと片想いしていた。
そして勇気を振り絞り…… 放課後の教室で告白をした。
「 私ね…… 意外にクラスの中心的存在なの分かってたし、可愛くしてたから結構モテてさ。
だから…… 絶対上手くいく! って信じてた。
相当自信があったんだと思う…… 。 」
カスミが告白すると飛鳥は。
「 ごめんなさい…… キミとは付き合えない。
告白してくれてありがとう。 」
優しくお断りをした。
カスミは顔を赤くして現実を受け入れられずにいた。
「 ねぇ!? どうして!??
他に好きな人とか居るの??
嫌な事があるなら治すから…… 。
お願いだから考え直して? 」
カスミはくじけずにそう言うと、飛鳥はそこからゆっくり離れようと歩いて行く。
「 待って! お願い…… 理由を教えて? 」
飛鳥を呼び止めると優しい飛鳥から見たことない厳しい表情に変わる。
「 カスミさん…… いじめしてるだろ? 」
その告白にカスミは動揺する。
必死に分からないフリをした。
「 キミが屯平をいじめてるのは前から知ってる。
ずっと…… ずっと前からね。 」
カスミの心臓は動揺して高鳴っている。
「 俺はね…… ずっと許せなかった。
何度注意しようと思ったか…… 。
屯平はいつか辞めるから大丈夫!
ってずっと言ってた…… 。
でも今まで辞める事なく続けてたよね?
ハッキリ言って…… 最低な人間だと思っている。 」
飛鳥から厳しい言葉を沢山ぶつけらてしまう。
カスミは立ったまま泣いてしまった。
「 俺は…… あいつをいじめたキミを絶対に許さない。
人の痛みを分からない人の事好きになれない。
本当にごめんね…… 。 」
そのままゆっくりと離れる。
「 傷つけてごめんね。
だけど…… 屯平の事を何年も傷つけていたんだよ。
それだけは分かって欲しい。
また明日ね…… 。 」
また変わらずに学校生活を送ろうと告げて帰って行った。
カスミは声を殺して泣き続けていた。
失恋した痛みと積み重ね続けていたいじめの数々。
まるで天罰をくらった気持ちになっていた。
「 それから私…… 色々考えて屯平をいじめるの辞めたんだ…… 。
中学校生活の最後だったけどね。 」
反省してカスミは辞めていた。
でも周りはそうはいかなかった。
カスミが辞めても日課になっていて、陰口や裏で笑うのは当たり前。
カスミは止める事も出来ずに心を傷めていた。
「 そのまま卒業式迎えてさ…… いつか謝ろうと思ってて。
今日会って…… お酒の力借りて謝ろうって。 」
カスミは押さえきれずに涙を溢す。
麻理恵も悲しくなりもらい泣きしていた。
「 ウチに小学校に入ったばっかの娘が居るの。
子供が生まれてまず思ったんだ…… 。
この子がいじめられる事もあるのかなって。 」
親になりまた別の目線になって思うことが沢山あった。
そして自分のしてきた事を恥続けていた。
「 麻理恵ちゃん…… あいつがいきなり帰った事を怒らないであげて?
それと…… 嫌いにならないであげて?
全部私が悪いんだからさ。 」
大きく頭を下げる。
「 先輩の事これぐらいじゃ嫌いになりませんよ。」
笑ってそう言うとカスミも安心する。
「 あいつが奥手なのも、自信がないのも全部私のせいなんだ。
だから…… 何て言えば良いんだろ…… 。
大目に見てあげて欲しいの。 」
麻理恵は少し考えてから。
「 先輩って…… 口下手で不器用で素っ気なくて。
初めて会ったときから印象は良くなかったんです。
でも…… 遠くから見た時、凄く悲しそうに見えたんです。
だからもっと知りたくて、私から積極的に話かけたんです! 」
麻理恵は恥ずかしそうに話した。
「 先輩の事良く見てたら皆の嫌がる仕事をしてたり、後輩には素っ気なくても仕事のフォローをする。
凄く…… 凄く優しい人なんですよ。 」
カスミは嬉しそうに笑っていた。
「 麻理恵ちゃん…… 優しいんだね。
私と違ってあいつの良いとこ沢山見つけられて。
本当に…… あなたみたいな子が近くに居て、あいつは幸せもんだね。 」
「 ぜぜぜ…… 全然!!
私なんか全然ですっ。 」
恥ずかしそうに照れ隠しをした。
「 この前ね…… 飛鳥君のお墓に行ったの。
あんなにハッキリ言われて、私はやっと目が覚めたの。
だから飛鳥君には…… ずっとお礼と…… ごめんなさいが言いたかったな。 」
カスミは飛鳥のおかげで罪の重さに気づけた。
そしてそれ以降は、他の人の身になって考えて生きてきた。
「 飛鳥さんって…… 凄い素敵な男性だったんですね。 」
カスミは笑いながらこう言った。
「 当然よ! 私の初恋の人なんだもん。
誰にでも優しくて友達の為なら、本気で怒れる素敵な人。
顔だって屯平と違ってイケメンだったのよ? 」
冗談を交えつつ二人は笑っていた。
そのまま少し話をして帰る事になった。
当然屯平からの連絡はなかった。
「 屯平の事宜しくね。 」
「 はい! 任せてください! 」
カスミは麻理恵が帰るのを見ていた。
( それにしても…… 屯平。
あなたは幸せもんだよ。
あんな良い子がいつも側に居るんだから。
好意があるの気づいてんのかな?
…… 分かるはずないかぁ。 )
カスミは麻理恵に今までの思いを話せて、少し気が楽になっていた。
二人の今後を楽しみにしながら笑うのだった。
その頃に屯平はある病院へ。
「 お久しぶりですね…… 。 」
「 先生…… もう俺は…… 。 」
先生にもたれ掛かるように倒れる。
相当精神的に追い込まれていたのだろう。
先生は優しく屯平を部屋に運ぶ。
一体…… この人物とは?
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