第31話 踏み出す勇気
屯平が風邪を引いて休んでる間、ずっと連絡をしてた麻理恵。
正体を隠して繋がっているマッチングアプリ。
いずれは話さないといけないのは分かっていても、話すとなると勇気がいる。
いつもは積極的な性格でも、好意を感じてる相手には一歩踏み出す勇気が出ない。
スマホの画面を見てはタメ息を吐いてしまう。
「 なんで素直になれないのかな…… 。 」
自分の部屋で奥手な所に呆れてしまう。
そんな中で会話をしていると、屯平のメッセージを見てびっくりして立ち上がる。
( 今度休みに良ければお食事に行きませんか? )
行きたい気持ちでいっぱいだったが、その為には正体を明かす必要があった。
「 どうしよう…… どどどどうしよう。 」
前までは全く好意の対象として見ていなかったのに、最近話す事が増えたりその中でクスっと笑ってしまう事があったりして、話す事が楽しみになってしまっていた。
何も知らずに買ったばかりのソファに座りながら足をバタバタさせてテレビを見ていた。
「 誘うの早すぎたかな…… 。 」
返信が来なくてソワソワしていた。
そんな事を考えているうちに返信が。
( はい、喜んで。 )
その返信を見て嬉しくて踊りだす屯平。
「 ヤホーーッ!! 」
上手くいって嬉しくてはしゃいでいた。
麻理恵は勇気を振り絞り返信していた。
自分の正体を明かす決意をしたのだ。
もし会ったときに嫌われたら…… 。
騙していたと知って怒るだろうか?
不安で仕方がなかった。
会う日になった。
その日は屯平はおしゃれをしていた。
色んな雑誌に載っていたおしゃれを掛け合わせた、最強のおしゃれに仕上げていた。
何でも合わせれば完璧だと勘違いしている。
「 んふふふふっ、これはいかしてるな。 」
歩いているときにガラスに映る自分に自画自賛してニヤけていた。
待ち合わせ場所の公園に着いた。
ベンチに座って心を落ち着かせる。
( 1時間も早く来てしまったな…… 。
ハンカチもポケットティッシュも持ってる。
今日は完璧だな…… 。 )
数々のデートを重ねて成長していた。
夏なのに無駄な重ね着をしていて暑くて、汗が止まらなくなっていた。
服の選び方はまだまだのようだ。
( にしても…… モンブランさんってどんな人だろうか?
相手からの申請に舞い上がってたけど、もし男が女のなりすましをして今日来たら。
俺は…… ぼこぼこにされて金を取られる。
顔写真が無いって怪しくないか!? )
今更ながら怖くなってきていた。
全く触れて来なかっただけに、今更見せてとも言えなくてここまで経っていた。
そしてゆっくりと歩いて来る足音が。
心臓が高鳴って太鼓のようになる。
( 待て待て待て…… ここの公園って今思えば人通り少なくて、金を巻き上げるには最高の場所では?
話が上手く行き過ぎだって思ってたんだよな。
なら…… 今のウチにお金とクレジットカードだけは、財布から別の場所に隠して避難させなければいけない!! )
必死に財布からお金とクレジットカードを出してポケットに詰め込もうとする。
「 こ…… こんにちは。 」
話をかけられてびっくりして、入れようとしていたお金とクレジットカードを全て地面に散らばってしまう。
「 わわわっ!! 」
慌てて拾い集める。
屯平の少ない全財産とクレジットカードを見られてしまう。
「 こここここ…… これはですね…… 。 」
必死に言い訳をしながら見上げると、そこには会社で良く見る顔があった。
「 麻理恵さん…… ? 」
「 先輩じゃなないですかぁ!!?
えーーっ?? びっくりしたなぁ。 」
麻理恵は知らなかったを通す事にした。
恥ずかしくて仕方がなかった。
「 あのアプリ…… やってたのかぁ? 」
「 はい! 大人になると友達とか少なくなるし、良い出会いないかな? て感じで。 」
色々恥ずかしさを隠す為に嘘をついていた。
「 そうか…… 。 」
明らかに屯平の表情は雲っていた。
麻理恵が嫌いなのではない。
自分との利害が一致しないから残念で仕方がなかった。
「 ならまた会社で。 」
屯平は直ぐに帰ろうとする。
すると麻理恵は屯平の手を掴む。
「 折角会ったんですからご飯…… 行こ? 」
麻理恵も積極的に行動して顔を赤くしていた。
バレないように平常を装うのが大変だった。
「 …… 良いけど。 」
無愛想な返事だったけど嬉しかった。
屯平は麻理恵を見ると、会社で見るときと髪型から服装が違っていた。
( 可愛らしいなぁ…… 会社で見るとキッチリして見えてたけど、プライベートは女の子って感じ。 )
夏らしい爽やかなワンピース。
靴はヒールのあるサンダル。
横目で見ていて本当に可愛く見えていた。
一緒に歩いていると同僚と歩いている感じがしない。
お互いスーツじゃないのもあった。
歩いているときに屯平の服に目が行ってしまう。
( えっえっえっ?? 先輩ってプライベートこんなおしゃれな服着てるの!?
何か無駄な重ね着に見えるけど、凄いおしゃれに見えるんですけどーー 。 )
いつもとのギャップに麻理恵の心はときめいていた。
屯平への補正により意味不明な重ね着も、格好良く見えてしまっていた。
( 今日の為に服とか新しいのにして良かったぁ。
少しは可愛く見えてるのかな? )
屯平の反応が気になっていた。
「 麻理恵さんは…… 。 」
「 麻理恵って呼んで下さい!
プライベートなんだから。 」
よそよそしくされたくなくて、少しでも近付きたくて呼び方も変えて貰いたかった。
「 あ…… そうかぁ…… 麻理恵で。 」
全く目を見てくれないが呼んで貰えて嬉しかった。
「 先輩じゃなくて屯平で良いよ。 」
( おいおいおい!!
いきなり屯平って。
ラフ過ぎないっ!? 嬉しいけども。 )
麻理恵はドキドキして顔を熱くしていた。
「 さすがに屯平は…… 。
なら屯平くんにする。
あっ! 屯平くんにしますね。 」
ラフな呼び方をしていたら、ついタメ口になってしまい直ぐに言い直す。
「 タメ口で良いよ…… プライベートなんだし。 」
( ちょっとちょっと…… 何だ今日の先輩は!?
男らしい? なんだろう…… 積極的って言うか。
ギャップ萌えしちゃうじゃんかよ! )
心が踊りまくりの麻理恵と違い、屯平は至って平常心だった。
何故なら同僚と出掛けている程度にしか考えていなかった。
それだけではない。
自分とは違い友達探しだと思って、デートだとは全く思って居なかったからだ。
おしゃれなイタリアンのお店に着く。
そこは雑誌で女性に大人気のお店。
屯平に抜かりはなかった。
「 ここだ…… よ? 」
見ると凄い長蛇の列が。
雑誌に載った店だから当然だった。
「 凄い列で…… だね。 」
「 うん…… そうだね。 」
仕方がなく並ぶ事に。
日差しは強く熱風が二人を襲う。
( ヤバい…… 折角の食事でこれってヤバくない?
日焼けしちゃうかもだし…… 。
俺の服と重ね着し過ぎて通気性最低だし。 )
汗をかく屯平を見て心配に思う。
「 屯平くん、あそこに入ろ! 」
指差した場所はラーメン屋だった。
しかもあまり綺麗ではなく、カウンター席のお店だった。
「 あそこで良いの…… ?
ここのお店は…… ミシュランの星があるんだかないんだかのお店で…… 。 」
暑くて屯平は軽くフラついしまう。
「 良いの! あそこに入ろっ? 」
屯平の腕を掴みラーメン屋へ。
屯平は申し訳ない気持ちでいっぱいだった。
「 涼しくて良かったね。
良い匂いだねぇ。 」
嫌な顔せずにニコニコしながらメニューを見ている。
「 本当に良かった…… の? 」
「 ん? 全然ここで満足だよ。
人気とか全然気にしないし、ここだって充分美味しそうじゃない?
沢山食べようっと。 」
屯平は麻理恵を見つめてしまう。
( 今まで結婚出来れば誰でも良いと思ってたけど、こんな子が理想的なんだろうな。 )
麻理恵が可愛いだけではなく、店とか気にせず一緒に来てくれる。
理想的なんだと思っていた。
「 つけ麺にしようかなぁ…… 。 」
迷う姿も可愛らしく目に映っていた。
屯平は嬉しそうに微笑んでしまう。
二人が注文すると直ぐに料理が来た。
麻理恵はつけ麺にして、屯平は大盛りのラーメンにした。
「 つるつるーーっ! …… 美味しい!! 」
嬉しそうに食べている。
屯平の予定とは違ってしまったけど、これはこれでありか? と思えた。
屯平もラーメンを食べる。
「 美味しいな…… ズルズルズルーーっ!! 」
凄い音を立てて食べる。
「 ちょっと! 音立てすぎだよ。
あはは、マナー教えてあげるね。 」
笑いながらマナーを教えて貰えた。
いつもは気を遣い過ぎて疲れる屯平は、凄い気が楽になっていた。
二人は楽しい時間を過ごした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます