第30話 モヤモヤする心
朝目が覚めると与一が横で眠っている。
「 こいつ…… 何で居るんだ? 」
熱も下がりやっと起き上がれるくらいに。
おでこには熱さまシートが。
テーブルにはお粥が用意されている。
( 与一がやったのか…… 。
こいつこんな世話好きだったか? )
朝なので与一を起こす。
体を左右に揺らすと直ぐに目が覚める。
「 おぅ…… 具合は大丈夫…… か? 」
「 まぁ…… 色々悪かったな。 」
与一は直ぐに見出しなみを良くして、また会社に行こうとする。
「 そう言えばさ…… 飛鳥の事大変だったな。 」
与一は眠っている間に部屋を物色していて、飛鳥が少し前に亡くなっていた事に気付いた。
大学の頃の同級生だったから、知らなかった事を悲しんでいた。
「 おばさんが…… あまり大きくしなくて良いって言うからさ。
知らせなくて悪かった…… 。 」
与一は思い当たる事があった。
屯平が急に休んだり元気がなかったり。
そのおかしかった日が亡くなったばかりの日だった。
「 俺はさ…… お前達みたいに仲良くなかったし、軽く話す程度の仲だったし呼ばれなくても仕方ない。
ただ…… 悲しかったわ。 」
そう言いながら立ち上がり帰ろうとする。
「 あいつの墓の場所教えろよ。
会社行く前に線香あげてくる。 」
飛鳥のお墓の場所を教えた。
「 お前も…… 何でも背負い込むなよ。
なんだかんだ言っても俺ら同期だろ?
こう言う事はいつでも言えよな。 」
与一はいつもと違い、悲しそうに話していた。
「 今日はゆっくり休んで置けよ。
冷蔵庫にコンビニ弁当とか入れといた。
じゃあな!! 」
与一は朝早くに出ていった。
屯平は少し複雑な気分だった。
仲の悪いやつに助けられ、飛鳥の事も気遣われる。
「 本当気分屋なんだから。 」
だけど少しだけ嫌いじゃなくなっていた。
テーブルの用意されたお粥を食べる事に。
一口食べるとほっぺたが落っこちるくらい、美味しくて心がこもっていた。
嬉しそうに笑って食べるのだった。
お粥を作ったのが誰なのかは全く分からないままだった。
与一は暑い中お墓参りに行っていた。
近くのコンビニで線香と、美味しそうなスイーツを買って。
お墓の前にいざ来てみると、少し会わなかっただけで二度と会えなくなってしまったのだと目に沁みてしまう。
「 なんで良いやつって早死にするんだろな。 」
お墓には沢山のお供え物が置いてある。
お花もお菓子もちゃんと頻繁的に入れ替えられて、どれだけ周りから愛されていたか実感する。
「 お前は俺の知ってる中で、一番優しくて自分らしく生きてて格好良かったな。 」
大学の時の記憶が蘇る。
与一が仲間達と飲みに行く時の事。
女性人気の飛鳥が来れば、参加する人も増えると思い誘う事にした。
「 飛鳥! 良かったら俺たちと飲みに行かない?
たまには交遊関係増やす努力しようぜ。
付き合い悪いんだからさ。 」
飛鳥は荷物をまとめて帰ろうとしている。
「 悪いな、あまり行く気になれなくて。
誘ってくれてありがとう。 」
そう言い通りすぎて行く。
「 待てよ! 付き合い悪いって。
可愛い子達沢山来るんだぞ?
たまには楽しもう?? 」
すると飛鳥は立ち止まる。
「 なら何で屯平は誘わないのかな? 」
「 人数…… 人数が結構パンパンで。
また次誘うからお前だけで来いよ、なっ? 」
本当はまだ入る余裕はあった。
ただノリが悪くて女性が苦手な屯平が居ると、絶対に盛り上がらなくなるのが目に見えていた。
「 尚更俺は行かなくて良いじゃないか?
仲良いやつらで楽しむと良い。 」
飛鳥はそう言い歩いて行く。
「 おいっ! いい加減分かれよ?
あんなやつと居るとお前まで嫌われるぞ?
それで良いのかよ!! 」
飛鳥は笑ってこう言った。
「 俺の友達を悪く言うやつと仲良くなりたくはないからな。
与一はそっちと仲良くすれば良いさ。 」
そう言い行ってしまった。
与一にはその言葉が凄く心を締め付ける。
イライラしていたと同時に、自分らしく居てカッコいいとも思った。
自分は気に入られる事ばかり考え、そんな生き方が羨ましくも思えたからだ。
そんな事を思い出しながらお墓の前にしゃがみこんでいた。
「 お前の事だから…… 死んでも屯平の事気にしてんだろな。
本当に…… 優しいんだからさ。 」
少し涙が出そうになるが、直ぐに目を擦った。
そして仕事もあるので行く事に。
「 また来るわ…… 今度は酒持ってくるな。 」
与一はゆっくり歩きだすと、綺麗な女性とすれ違う。
飛鳥は当然目で追ってしまう。
その女性は飛鳥のお墓へ。
「 相変わらずモテモテな事で。 」
こんなに慕ってもらえていて羨ましくなっていた。
その女性を少し見ていると線香をあげて、静かに涙を流していた。
「 みんな悲しいんだよな…… やばっ!
仕事に遅れちゃうっ!! 」
急いで仕事に向かうのだった。
そこに居た女性は悲しそうにお墓の前に居た。
屯平は熱さまシートをおでこに貼り、1日安静にしていた。
そこへいきなり来客が。
「 大丈夫かぁ? 生きてるぅ?? 」
心配して来たのは巴だった。
「 おいおい! 男の1人部屋に勝手に上がり込むなよ。
何だかんだ言ってもお前はアイドルだろ? 」
屯平は慌てて言うと勝手に冷蔵庫から飲み物を取り出し飲んでいる。
「 別に大丈夫でしょ。
私は記者とかから逃げるの上手いし。 」
平然と飲み物を飲みながらおでこに手をやる。
「 熱は下がったかな…… 。 」
急に手を置かれてびっくりする。
屯平は直ぐに手をどけてしまう。
「 子供扱いするなよ。
お前なんで俺の家の場所知ってるんだよ? 」
「 前に免許証見たからね。
女ってメンズより視野広いから! 」
なんとも良く分からない言い分。
お粥の入っていた土鍋を見ると、全て食べ終えていた。
台所に置かれているのを見て嬉しそうに微笑む。
「 お粥美味しいかった? 」
「 これお前だったのか!?
…… 塩加減がちょっとな。 」
恥ずかしそうに皮肉を言う。
当然それが照れ隠しなのが直ぐに分かる。
「 うん! また作ったげるね。 」
嬉しそうに土鍋を洗う。
屯平は申し訳なさそうにしていた。
「 色々世話かけたな…… 。 」
「 本当だよ! こんな可愛い子に看病されて幸せなんだからね??
今度何かお礼してもらおっと! 」
巴は嬉しそうにしていた。
屯平にとって風邪を引いた時の看病は、飛鳥かお母さんと妹にしかされた事がなかった。
だから今の現状がとても不思議に思ってしまう。
その頃会社では上の空の麻理恵が居た。
ポカンっと口を開けて窓の外を見ている。
「 聞いたぁ? 隣の二宮さん風邪で休みらしいよ。
あの人って風邪引かないかと思ってた。 」
周りから屯平の噂が聞こえてくる。
麻理恵は直ぐに隣の仕事場へ。
行くと直ぐに与一に会った。
Yシャツはヨレヨレで髪がいつもより乱れている。
「 あれ…… 麻理恵ちゃんどうしたのかな? 」
「 二宮先輩…… 大丈夫ですか? 」
心配そうに言うとあくびをしながら。
「 ふぅわぁぁ…… 大した事ないさ。
明日には来るだろうよ。 」
麻理恵も一安心する。
「 そう言えば…… 昨日あいつの家に女性が居たな。
帽子被ってたけどあれは可愛い子だった。 」
謎の男センサーに反応していた。
麻理恵は何故かドキッとしてしまう。
「 先輩の…… 彼女さんですか? 」
気にして聞くと与一はバカ笑いをする。
「 彼女な訳ないだろ??
あははははっ!! あいつに限って。
どうせ清掃サービスか何かだろ。
本当勘違いだって、わはははっ! 」
麻理恵はホっとしていた。
( 私…… 凄くホっとしてる。
何か嫌な女だな…… 。 )
麻理恵は自分の恋心にヤキモキするのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます