第2話 気まずい会社


階段から転げ落ちて会社を休んでしまっていた。

そこまでケガも酷くなく、3日で退院出来た。

足腰は当分は痛い。


「 会社の同僚に差し入れくらい買ってくかな。 」


菓子折りをある程度買って会社に。

学校を休んだ次の日みたいに行きたくなかった。


「 皆さん…… 急なお休みすみませんでした。 」


皆は仕事をしていて返事すらしてくれない。


「 二宮! もう大丈夫なのか? 」


上司からは心配してもらっている。

これもリーダーだからこその、部下への体調管理の一つなのだろう。


「 あ…… はい、大丈夫です。 」


大丈夫だと分かると仕事に戻っていった。

屯平も直ぐに仕事にかかる。

ノルマをこなす為、一人パソコンを打ち込んだり電話をしたりと仕事をする。


お昼になりトイレに行った。

手を洗い自販機で飲み物を買う。


「 二宮さん、もう来ちゃったんですけど? 」


「 早くない? もう少し休んでくれても良かったのにね。 」


社内からOL達の声が聞こえる。

明らかに悪口だろう。


「 お詫びのつもりだか分かんないけど、どら焼きなんて買ってくる? 普通。 」


「 確かに確かに! 太るっつーーの。

本当女性の事考えてないよね。 」


酷い言われようだった。

話が途中で止まった瞬間に社内に戻る。

当然OL達は会話を変えた。


( ここには俺の居場所なんてないな。

屋上でも行くかな…… 。 )


お昼を持って屋上に。

ベンチに座り持ってきたカツサンドを食べる。


「 本当嫌われもんだな。

居なくなっても誰も困んなそうだな…… 。 」


虚しさもありつつ食べ終わり、一人で携帯ゲーム機を取り出してゲームをし始める。

ヘッドホンをつけてやると、休憩時間の少ない時間でもその世界に入ってる気分になれた。


「 よしよし! これでこうやって。 」


一人夢中にやる時間は至福の時だった。

直ぐに時間になり戻った。


仕事は用がなければ一人黙々とやってられる。

たまに誰とも話さずに帰宅する事も。

終わって帰る支度をして、挨拶をして帰る事に。


( どら焼き全然減ってない…… 。

こんなの誰も食べないよな。 )


残ったどら焼きも虚しく、また悲しそうに帰って行った。


「 あーーっ! 二宮先輩!

もう帰るんですか? 相変わらず定時に帰りますね。」


目の前に現れたのは隣の部所で働くOL。

柿沼麻理恵22歳。

ここに来てまだ浅く、元気で誰とでも話す。

隣の部所の屯平とも話すくらいアグレッシブ。


「 別に…… やることないし。

お疲れさまでした。 」


無愛想に通り過ぎようとすると。


「 先輩、先輩! あのどら焼き私も食べても良いですか? 」


「 えっ…… 食べたきゃ食べて良いよ。

誰も食べないし…… 。 」


そう言ってエレベーターで下に行ってしまった。

麻理恵はどら焼きを取りに行った。


「 柿沼さん…… そんなの食べるの? 」


他のOL達に話をかけられていた。

気にせずどら焼きを食べる。


「 普通に旨いですよ?

みんなも食べたら良いのに。 」


美味しそうに食べる麻理恵に。


「 和菓子って糖分無駄に多いのよ?

そんなに食べたら太っちゃうわよ。 」


皆はどら焼きを貶して行ってしまう。

麻理恵は言っている意味が分からなかった。


「 そんな事言ってたらケーキとか食べれないじゃん。

てかてか、もう1つ食べても良いよね?? 」


3個どら焼きを食べていった。

麻理恵は少し変わっている。


「 おら! おら! 文句言ってんじゃねぇぞ! 」


ゲームセンターでゲームをしている。

そのゲームの中では自分は最強。

相手をぼこぼこに出来る。

まさにストレス発散の場所。


( ん? 対戦相手か…… 面白い! )


向かい側の席の人から対戦の申し込みが。

断る事も出来るが勝つことが出来たら、負けるまでずっとタダでプレイ出来る。

対戦相手が諦めたらそこで終了。


( なんだなんだ? そんな動きで俺に勝てるかな? )


優勢にキャラを動かしコンボを決める。

格闘ゲームはやってる時間がそのまま反映されるくらい努力のゲームだ。

なんだかんだで相手に動きを読まれて、逆転負けをしてしまう。


「 なにいぃーーっ!? 」


店内でデカい声を出して立ち上がってしまう。

直ぐに我に返り再戦へ。

格好良くスーツを脱ぎ捨て、Yシャツ姿で腕まくりまでしてしまう。


( 会社のストレスで少し荒くなっていたようだ。

ここからが俺の本気だ…… 。

次はお前が負けて金を払う番だ!! )


一時間後…… 。

屯平は負けに負けて大量のお金を投入していた。

屯平の自信とプライドはズタボロにされていた。


「 はぁはぁ…… 日が悪い。

相性も悪いのを使ってたし仕方ないよな。 」


言い訳をして帰ろうとする。


「 本当弱いやつが居ると、こっちはたった100円で何時間でも遊んでられるな。 」


何とも酷いセリフ。

格闘ゲーマーがこんな酷い煽りゼリフを言われて黙ってられるはずもない。


「 うおぉーーいっ! 誰に言ってんだ!? 」


向かい側の席に行くと、凄い笑っている飛鳥が居た。


「 にっしっしっし! そんな雑魚いコンボじゃ、子供くらいしか倒せんぞ。 」


「 お前…… この野郎ーーっ!! 」


笑う飛鳥の首を絞めて怒りをぶつける。

本当に仲の良い二人だった。


「 そんな怒るなよ。

酒でも飲んで元気出せって。 」


居酒屋でビールを飲んで居た。

ビールジョッキを一気に飲み干していた。


「 うっぷ! 今日はお前の奢りだぞ?

こっちがいくら使ったと思ってんだ。 」


「 はいはい、分かりましたよ。 」


飛鳥は髪をかき上げる。

乱れると直ぐにこれをやる。


「 あの…… 良かったら一緒に飲みませんか? 」


女性二人が話をかけてきた。

屯平はドキドキして胸が苦しくなる。


「 あの…… あのぉ、いきなりだとあれだし。

まずは連絡先を交換してだね…… うん。 」


「 すみませんが…… そちらの男性になんですけど。」


屯平にではなく、奥に座っていた飛鳥にだった。

屯平は大恥をかいて赤面しながら座る。

飛鳥はまた歯を見せながら笑った。


「 悪いんですけど連れが居ますので。 」


軽く誘いを断ってしまった。

悲しそうに自分たちの席に戻っていってしまう。


「 飛鳥…… 俺なんかに気にするなよ。

行きたきゃ行けよ…… 俺は慣れてるし。 」


直ぐに飛鳥が屯平の首を腕で絞めてきた。


「 バカな事言ってんじゃねぇって。

今日は朝まで飲み明かすんだろ?? 」


( 本当俺が言うのもあれだけど。

飛鳥は本当良いやつだ…… 。

女性に興味ないのか? 全く女性の陰がない。

だから俺とはいつも一緒だ。 )


屯平はまたビールを大きく飲んだ。


「 ぷふぁーーっ! よーーし!

俺の方が飲めたらお前の家のグッズ貰うからな。 」


「 何言ってんだよ、負けるかよ。 」


二人は大きくなって遊び方や触れあい方も変わったが、全く変わらない友情がそこにはあった。


夜中におんぶをされて帰る屯平が居た。


「 むにゃむにゃ…… どうだ。

俺の方がなんでみょ…… ちゅよいんだよい…… 。」


寝ぼけて夢の中ではまだ戦ってるようだ。


「 うっしっし、本当面白いな。

屯平の魅力に気づいてくれる人が早く現れないかなぁ。

俺はそれが待ち遠しい。 」


自分も酔っているのに、頑張って屯平を家まで運んだ。

飛鳥は格好良いだけではなく、男らしくもあった。

本当に屯平に無いものを沢山持っていた。

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