第43話 鈍感


麻理恵は人気になった屯平にヤキモチを妬いていた。

周りの女の子達は満更でもないと言って、隠れて見て楽しんでいた。

麻理恵は屯平の眼帯に気付き、直ぐに屯平の元へ走っていく。


「 先輩っ!! 」


ビクッ! となって飲み物を少し溢してしまう。


「 何だ…… 麻理恵かぁ…… 。

いきなりどうしたの?? 」


「 また怪我してる!!

何かあったら言うって約束したでしょ? 」


まるでお母さんのように厳しい。

しどろもどろになりながら言い訳を考える。


「 まぶたがかぶれて…… 腫れちゃって。 」


そう言うと直ぐに眼帯を外される。

慌てて直ぐに手で隠そうとしたけど、手を掴まれて腫れた目を見られる。


「 やっぱり嘘だった!

誰かに殴られたんでしょ??

何で直ぐに言わないの?

直ぐに1人で抱え込むんだから! 」


直ぐに眼帯で目を隠す。

怒られてるんだか、心配されているのか分からなかった。


「 ごめん…… 。 」


「 もっと頼って良いんだからね? 」


屯平は頼るのが苦手だ。

今までは親と飛鳥以外は他人。

相談すらしたことがなかった。


「 もういいです!

罰として帰りはご飯食べて帰りますよ。 」


「 はい…… ? 」


麻理恵は直ぐに戻っていった。

女心はとても難しく、屯平には意味が分からない事の連続だった。

屯平も飲み物を飲みながら戻って行く。

その後ろ姿を女性社員が見ている。


「 あの2人どんな関係?? 」


「 そう言えば前から話してなかった? 」


「 そうだったの!? 」



屯平との距離感が近いのを気にしていた。

その日屯平は人気者だった。


「 じゃあ…… 俺はそろそろ。 」


帰ろうとするとお喋りな女の子が近づいてくる。


「 お疲れ様です…… 二宮さんって今日時間ありますか?

仕事で分からない事があって…… 。 」


「 予定があるけど大丈夫ですよ。

何が分からないんですか?? 」


明らかにデートのお誘いが分からなく、真面目に仕事の事だと思い親身に答えようとする。


「 ならまた今度でいいです。 」


あまりに鈍感なのでキツい口調で諦めていった。


「 あぁ…… そうですかぁ。 」


屯平は頭を傾げながら帰って行く。

女性社員達からはまたこそこそと話をされる。


「 見た目はマシになっても中身はそのまんま。 」


「 分かる、分かるぅ! 鈍感過ぎ。 」


「 えぇーーっ? それも意外に良くないですか? 」


帰ってからも噂の種にされていた。


待ち合わせ場所に着くと、既に麻理恵が待っていた。


「 お待たせ、出てくるときにウチの女子社員に仕事の相談されちゃったさ。 」


直ぐに麻理恵はピンと来て気づく。


「 で…… なんて答えたんですか? 」


「 ん? 今から予定あるから、仕事の事なら今答えるよって。 」


鈍感な返答に麻理恵もタメ息をついてしまう。


「 屯平くん…… 仕事の話は口実だよ?

本当は別の意味があったのかもよ。 」


屯平は言われて気づいてびっくりする。


「 そうだったのかぁ…… どんな意味があったのかなぁ。

本当に心の中って全然分からないな。 」


勉強になると思いながら歩いていた。


「 あのさ…… マッチングアプリとかまだやってたりするの? 」


「 あれかぁ…… もう辞めたよ。

俺にはもう必要ないかなって。 」


普通に返答した言葉を、麻理恵は色んな解釈をしてしまう。


( 必要無くなった!? どういう事??

彼女が出来たのかな?

それとも…… 好きな人が出来たとか? )


考えてもキリがない。


「 必要ないって…… どうして? 」


「 んーーっ…… なんでだろ?

麻理恵とメールとか電話するようになってからは、寂しくなくなったからかな。 」


麻理恵は屯平の話を聞いて顔を赤くしていた。

堂々と話しているけど、それは好意にも感じてドキドキしてしまう。


「 そうなんだぁ…… 。 」


麻理恵は上手く返答出来なかった。

顔が熱くなって直ぐに良い返答を思いつけなかった。


「 そう言えば…… 麻理恵は彼氏作らないの? 」


( えっ…… ? )


麻理恵は立ち止まってしまう。

正直悲しかった気持ちが一番。

それともっと気持ちが伝わっていると信じていた。

この質問で全てが崩れ落ちてしまった。


「 あっ…… うん…… 。

今はまだ仕事で充分充実してるし。

良いかなぁって思ったりして。 」


ショックで明らかにテンションが下がってしまう。

屯平はそんな事とも知らずに普通に話している。


「 そうかぁ…… 麻理恵なら直ぐにでも彼氏出来そうなのにな。

周りがほっとかなそうだけど。 」


麻理恵は普通の会話に思えて、屯平の気持ちが良く分かる言葉を聞き逃さなかった。


( もしかして…… 好きかどうかは分からないけど、可愛いって認識にはなってのかな?

じゃないと言わない言葉が出てきてるし。 )


不器用な屯平の為に色々考えてしまう。

元々屯平は奥手で、自分の気持ちには鈍感。


「 今日は俺が奢るね。

カレーの店なんだけど、旨いのに誰も知らないとか知ってるとかって話でさ。 」


屯平はオススメのお店に連れていき、どうでも良いうんちくや豆知識を話していた。

前と違って段々慣れていて、自分の事を話すようになっていた。

夢中に話してる所を見て、幸せそうに聞くのが好きだった。


「 カレーは結局プロが作ってこそでさ。 」


「 うんうん、それでぇ? 」


楽しそうに話していると、屯平は一瞬我に返る。


「 自分の話し過ぎてた…… 。

カレーの話なんて面白くないのに。 」


「 えっ…… どうして??

楽しくなかったら言ってるよ。

楽しいから聞いてるんじゃない。

屯平くんの話、私好きだよ? 」


屯平は照れてしまう。

カレーを食べながら居心地が良くて、時間が過ぎるのがあっという間に感じていた。


「 そのカレー1口貰っても良い? 」


「 俺の? シーフードの食べてみて! 」


1口食べて美味しそうにしている。

屯平は黙ってみている。


( 何でこんな子が俺とこんなに出掛けてくれるのかなぁ。

男なんて沢山居るだろうに。 )


屯平はずっと気になっていた。

友達でもいつまでも2人きりで会える訳ではない。

男女はパートナーが出来ると、色々複雑になるのは良く分かっていた。

いつか終わると思うと少し悲しく感じていた。


食べ終わり出ると外は、クリスマスのイルミネーションが街を照らしていた。

見渡す限りのイルミネーションに麻理恵は嬉しそうにしている。


「 聞いてる? 」


「 あっ、聞いてなかった。 」


屯平は見とれてしまい話が聞けていなかった。

イルミネーションを見ていたのもあるけど、麻理恵に目がいってしまっていた。


( 最近多いな…… 気をつけよ。 )


屯平達はイルミネーションを楽しみながら歩いていた。


「 クリスマスって…… 予定あったりするの? 」


麻理恵から唐突に聞かれる。

当然独り身には無縁な日。


「 全然暇だけど? 」


すると少しだけ沈黙が起きる。


「 良かったら何処かに行かない? 」


麻理恵は勇気を出して誘った。


「 俺で良ければ! 」


そう言うと嬉しそうにスキップをし出す。

屯平にはその意味が分からなかった。

ただ1人より2人の方が良いのかな?

それぐらいにしか思えなかった。


「 なら約束ね。 」


2人は指切りをする。

屯平は凄く恥ずかしくて顔を反らす。


屯平は人生で初めて女性とのクリスマスを過ごす事になった。

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30から始める婚活 ミッシェル @monk3

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