第44話 クリスマス
クリスマス当日。
待ち合わせは13:00。
それまでに愛理と一緒に選んだ服を着て、鏡を見て合うか見る。
「 んーー 案外悪くないか?
30過ぎのおっさんには少し明る過ぎやしないか?
まぁ…… 笑われたらあいつのせいだしな。 」
あまり自分では買った事のないセーターに、ダッフルコートを着て外に。
外は少し雲って暗く、雪がいつ降ってもおかしくない寒さ。
いつもの喫茶店でココアを飲んで少し落ち着く。
いつもと同じ行動をすることが1番落ち着けるのだ。
「 クリスマスなのに同じ物頼んで…… 。
これだから独り身は! 」
愛理にいつものように煽られる。
でも笑って全然効いていない。
愛理もその様子を見て気味悪くなる。
「 今日はだね…… 予定があるのだよ。
可愛い後輩ちゃんが行きたいとこあるみたいで、仕方なく付き合って行ってくるのだよ。
いやぁ…… 人気者は忙しいねぇ。 」
嬉しそうにニコニコしながら語っている。
「 はいはい…… 値札付きっぱなしで偉そうにすんな! 」
愛理は直ぐに値札をハサミで切ってくれる。
「 んふふふ、羨ましいのかい?
嫉妬は見苦しいなぁ。 」
「 それは良かったですね…… 。 」
その後も屯平はマスターに楽しそうに話していた。
それを愛理も聞いている。
「 まっ、頼りになる先輩って感じなのかな?
そろそろ行ってくるかな! 」
屯平は直ぐにお会計をして行ってしまう。
愛理は少し気になる事があった。
「 そう言えばあいつ…… デートだって分かってないんじゃないだろうな!?
普通に考えてクリスマスに一緒に居たいって、好意がないとおかしいだろ。
ちょっと教えてあげないと!! 」
慌てて出ようとするとマスターに止められる。
「 良いんだよあのままで。 」
「 でも相手の気持ち分からなくて、絶対にあいつただ誘われたと思ってるし。
言ってあげないといつまでも気づきませんよ? 」
愛理が必死に話すとマスターはにっこり笑って。
「 あの子は深く考えるとテンパるからね、敢えて言わないのが1番良いんだよ。 」
不満そうにしながら愛理は屯平の後ろ姿を見ていた。
「 絶対あいつ…… フラれちゃいますよ。
鈍感野郎なんだから。 」
マスターは屯平を笑って見送っていた。
12:30になる頃…… 。
待ち合わせの駅前に既に着いていた屯平。
( クリスマスに女性と出掛けるのは初めてだ。
だからと言っておどおどしたりはしない。
何故なら…… 俺は立派な大人なんだからな!
どっしりと構えて時間にも余裕で間に合う。
これこそ大人の中の大人だな。 )
嬉しそうにしながらプレゼントを持って歩いている。
「 誰かーーっ! 泥棒!! 」
女性の叫び声が聞こえる。
屯平が前を見ると凄い勢いで走ってくる男が。
( クリスマスに鞄盗られるなんてツいてないな。
こんな人混み逃げてるなら誰か捕まえてくれるだろ。 )
屯平は周りを見ると女性しかいない。
戦おうにも相手は大男。
( 俺にはこの後予定があるんだ…… 。
誰かがやってくれる…… さ。 )
屯平は目をつぶって見なかった事にしようとする。
「 私はいつも誰かの為に頑張る先輩…… 。
カッコいいなって思います! 」
麻理恵との会話を思い出していた。
通り過ぎようとする大男に、飛び付いて止めようとする。
「 おいっ! 手を放せよ! 」
屯平は相手に殴られても放そうとしない。
「 そ…… その鞄を返せ。 」
「 うるせぇーーっ!! 」
凄い勢いで振り払われてしまい、ぶっ飛んで壁にぶつかる。
屯平は地面に倒れてしまう。
「 クソ…… 面倒なやつだった。
早く逃げないと!! 」
直ぐに周りの人達が電話をして警察が駆けつける。
犯人は仕方なく諦めて止まってしまう。
「 良かったなぁ…… 。 」
屯平は何も出来ずに倒れていたけど、その一瞬の時間を稼いだお陰で簡単に捕まえられたのだ。
「 ありがとうございます。
お体大丈夫ですか!? 凄い音してましたけど。 」
女性に何度もお礼を言われる。
フラフラになりながら立ち上がる。
「 全然…… 何もしてませんよ。 」
恥ずかしいので直ぐに立ち去ろうとする。
でも被害者の女性に止められてしまう。
手当てをされて少し警察にも事情を話さないといけなくなってしまった。
( ヤバい…… 早く行かないと!! )
時間は14:00を回っていた。
直ぐに走って待ち合わせの大きな時計台の下に。
「 はぁはぁ…… もう帰っちゃったかな? 」
周りを探すとやっぱり居ない…… 。
「 クソぉ…… スマホ充電切れなければ電話出きるのに。
完璧な計画がもうむちゃくちゃだよ。 」
と前を見ると麻理恵が立っていた。
手には温かいカフェオレを持っている。
「 あれ…… ? もう帰っちゃったと思ったのに。」
「 だってここで会うって約束したじゃない。
なら絶対来ると思ってたよ。 」
そう言って屯平の乱れた服装を直してくれる。
「 さっき噂になってたよ?
鞄盗まれたって人が居て、1人の男性が立ち向かって吹っ飛ばされたって。 」
少し噂になっていた。
「 なんだ…… その話は?
俺だったら泥棒を投げ飛ばしてたね。 」
自分だとバレていないと思い、嘘をついてカッコつけていた。
麻理恵はクスクスと笑ってしまう。
「 私は吹っ飛ばされた人好きだけどね。
相手は大柄の男だったってさ。
みんな普通は逃げ出しちゃうよ。 」
笑いながら話す姿は、まるで全て見ていたように話していた。
「 あの…… これ! 」
手に持っていたプレゼントを渡した。
少し落として汚れてしまっている。
「 えっ? これ私に? 」
「 うん…… クリスマスだから。 」
周りからはクスクスと笑われてしまっていた。
屯平には何でか分からなかった。
「 普通もっとムードあるとこで渡すだろ。
あの男何も分かってないな。 」
「 本当だね、あんな最低な渡し方初めてみた! 」
話し声が聞こえて屯平も笑われた理由に気づく。
「 あわわっ! やっぱりそれ…… 返して?
もっと違うとこで…… 。 」
麻理恵は気にせずに開ける。
「 可愛い…… これ良いの?? 」
屯平がこの日の為に特注で頼んだ、クリスマスの雰囲気を味わえるスマホケース。
少しお金がかかってしまった分、凄く良く出来ていて可愛く仕上がっていた。
「 うん…… 良ければ。 」
麻理恵は直ぐにスマホに着ける。
「 ありがとう! これでいつでもクリスマス気分を味わえるね。 」
嬉しそうにしていると頑張って良かったと思う。
屯平は麻理恵の喜んでいる顔を見て、凄く嬉しくて暖かい気持ちになっていた。
( 何か複雑な気分…… 。 )
直ぐに2人は移動してクリスマスを堪能する事に。
イルミネーションを見たり、大きなツリーを見たり。
夜になって予約していたレストランに行く。
「 ここね、1度来てみたかったの!
だから凄い楽しみだったんだぁ。 」
麻理恵の嬉しそうに話す姿を笑って見ていた。
最近麻理恵の顔を見る事が多くなっていた。
美味しいクリスマス料理を食べて、2人でケーキも食べて楽しいクリスマスを過ごしていた。
「 これね、屯平くんにプレゼント。 」
綺麗に包まれていて四角い箱に入っている。
嬉しそうに開けると、中には腕時計が入っていた。
「 こんな高そうなの受けとれないよ。 」
「 全然大したもんじゃないの。
おじいちゃんが時計屋さんで、良い時計なのにいらなくなっちゃったって言うから、似合うだろうなぁと思って。
早く着けて、着けて! 」
普通に買ったら凄く高そうな時計。
申し訳ない気持ちもありつつ着ける。
「 凄い似合うよ。 」
屯平は安物の時計は着けたりしても、1度も良い時計を買った事がなかった。
だから凄くその時計が良いものに感じた。
それよりも自分の為に選んで、買ってくれた気持ちが何より嬉しかった。
「 ありがとう…… 。 」
着けて嬉しそうな顔を見て、麻理恵も嬉しくなる。
楽しくクリスマスを過ごし、駅の改札口まで送った。
「 今日は楽しかったよ。
ありがとう! またね。 」
そう言い改札口を越えて行く。
屯平も楽しかった気持ちを残しつつ、ゆっくりと離れて行く。
( 楽しかったなぁ…… 。
来年も一緒に過ごしたいけど、その頃には麻理恵にも彼氏出来てるかもなぁ。 )
と悲しみつつも楽しかった余韻を楽しんでいた。
でも何かが引っ掛かっていた。
クリスマス…… 誰かに言われた事が引っ掛かる。
「 屯平は相変わらず鈍感だな。
女性にとってクリスマスは特別なんだぞ?
男みたいに適当に過ごしたりはしない。
大切な人と過ごしたいって思ってるもんなんだぞ?
だから誰かと過ごす事があったら、その人は屯平に好意があるって事さ。 」
屯平は立ち止まる。
何を忘れていたのか思い出した。
急に走って切符を買う。
改札口を越えて階段を駆け上がる。
息を切らしながら上る。
( はぁはぁはぁ…… 飛鳥…… ありがとう。
お前はいつでも俺の事を気に掛けてくれてたんだな。
ずっと忘れてた…… 。 )
飛鳥と他愛のない話をした事を思い出していた。
その言葉を思い出して屯平は、どうしても麻理恵に伝えたい事があった。
電車がやって来る。
どうにか間に合い周りを探すと、奥のとこで麻理恵は電車を待っていた。
「 麻理恵ーーっ!! 」
凄い大きい声で叫んだ。
それに気づき目が合う。
「 どうしても伝えたい事が! 」
電車が来てしまい声が下記消されて、電車でお互いの姿が見えなくなってしまう。
( まだだ…… 諦めるか!
あっちに走っていけば間に合う!! )
階段を駆け上がり走って向かう。
電車はそんな事はお構い無く扉が閉まる。
屯平が向かい側に着く頃には行ってしまった。
「 あぁ…… 間に合わなかったか…… 。 」
帰ってしまったと思い、静かになったホームに1人立っていた。
「 どうしたの?? 」
声が聞こえて見てみると乗らずに待っていた麻理恵が居た。
汗だくで疲れている屯平を心配して駆け寄る。
「 あの…… クリスマス楽しかった。 」
「 うん…… 私もだよ。 」
屯平は頭を掻きながらもじもじしている。
「 もっと…… もっと話がしたいなって。 」
屯平は恥ずかしそうに言った。
「 来年も…… 再来年も…… クリスマス。
一緒に過ごしたいなって…… ダメかな? 」
麻理恵は笑ってしまう。
嬉しくなり抱きついた。
「 良いですよぉ! 」
屯平はホッとして笑う。
不器用な恋を諦めていた男は、初めて告白をした。
かなり分かりにくくカッコ良くはなかった。
それでもその言葉には、屯平の気持ちが沢山含まれていたのを麻理恵は分かっていた。
その言葉をどれ程待ち望んでいたか…… 。
2人はその日から恋人になった。
手を繋ぎ、終電を逃してしまったので屯平の家へ。
2人は楽しそうに歩いて行くのだった。
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