第42話 キミは似ている
「 あのぅ…… やめてください。
友達と来ているんで。 」
5、6人も居て逃げられそうにない。
逃げられないように囲まれていた。
「 大丈夫だって、カラオケ行くだけだから。
君凄い可愛いよ? だから遊ぼうよ。 」
愛理はチャラチャラした奴が大嫌い。
無駄に絡まれて良い迷惑をしていた。
無理矢理離れようとすると、手を掴まれてしまう。
「 おい! 折角誘ってやってんだろ?
あんまり調子に乗んなよ? 」
男の力は強く振りほどく事が出来ない。
周りの人達も見てみぬフリ。
「 やめてください…… 。 」
愛理は無理矢理連れて行かれそうになり、焦って抵抗しても力には勝てない。
助けて…… そう願うしかなかった。
「 これだからモテない男は困るな。 」
ナンパ男達が振り向くと屯平が来ていた。
「 なんだ? このおっさんは?
どっか行けよ!! 」
「 おっさん言うな、まだ30だ。
お前らみたいなガキにおっさん言われたくないな。」
珍しく屯平が強気でいた。
愛理は直ぐに手を振りほどいて屯平の後ろに。
「 モテる男の秘訣その1…… 。
女性はガラス細工のようなもの。
丁寧に扱うべし、知らないのか? 」
今まで覚えたモテる秘訣を語り始める。
ナンパ男達はポカンとしていた。
「 何だこのおっさんは? 引っ込んでろ! 」
その勢いは強く周りに響き渡る声だった。
屯平は全く臆する事なく立っている。
( あれ…… ? こんな男らしかった? )
愛理は怖がっていたのに、いつになく凛としている屯平が格好良く見えていた。
「 この子は俺の友達だ…… 。
モテたいなら本を読め、本を。 」
口喧嘩をしている内容はどうかと思うけど、やっぱり男らしかった。
「 ちょっと痛い目見せてやるか? 」
慣れているのかナンパ男達は上着を脱ぎ捨てる。
愛理は怖くて屯平の服を強く掴む。
「 んふっふっふ…… 。
頭悪いやつはこれだから困る。
お前らのやることなんか、古いドラマレベルな事過ぎて詠めてんだよ。 」
ナンパ男達は呆気に取られてしまう。
こんな男は今まで居なかったからだ。
「 ここに来る前に通報しといた。
直ぐに警察が来るだろうな。
だから早くどっか行け!! 」
屯平が強気で居た理由が分かった。
警察が来るから安心していたからだ。
ニヤリと屯平は笑う。
「 えっへっへ。 」
ナンパ男達は不適な笑みを浮かべる。
屯平は嫌な予感が…… 。
「 どうして…… 笑っているの? 」
「 ここの場所から警察は早くて10分かかる。
だから少しまだ時間がある。
悪い事してるとこういうの詳しくなるのさ。 」
そいつらは度々揉めていて、交番からここまで来る時間の計算が出来ていた。
無駄な知識だけ豊富だった。
「 おっとっと…… それは…… 。 」
屯平の万策が尽きる。
ナンパ男達は屯平に近づいて来る。
「 良かったらそこのマックで奢ろうか…… ? 」
「 ふざけんなーーっ!! 」
最後の抵抗は虚しく、勢い良くボコボコにされてしまう。
愛理は引き離されてしまい、屯平が見えなくなる。
「 誰かーーっ! 誰か助けて下さい!! 」
大きな声で助けを求める。
すると周りの人達が電話をかけたり、スマホで写真を撮ったりし始めた。
さすがにヤバくなり勢い良く逃げて行った。
屯平は無惨に倒れていた。
「 屯平ーーっ!! 」
駆け寄るとゆっくり起き上がる。
殴られたり蹴られたりしたけど、辺りどころが良かったのか大怪我はしていなかった。
目は青く腫れてしまい、折角おしゃれをして髪も整えたのに台無しだ。
「 あんなガキ共はモテないな…… 。
年長者を敬えないなんて、何て世の中だ。 」
減らず口は相変わらずだった。
愛理は屯平の服を強く掴みながら…… 。
「 なんで? 何で隠れてなかったの?
隠れてたらこんな事ならなかったのに。 」
痛々しい姿を見て申し訳なくて言ってしまう。
「 だって俺は男だろ?
逃げてばかりはいられないからな。 」
痛そうにしながら立ち上がる。
「 そうだ…… これ。 」
屯平が愛理に手渡してきた。
それは手袋だった。
「 これ…… 買ってきてくれたの? 」
トイレには行かずに近くの服屋で買って来たのだ。
「 寒そうにしてたろ?
だからそれでも着けてろよ。
デザインまでは文句言うなよ。 」
その手袋はシンプルなデザインな物。
それでもとても温かかそうな物だった。
「 ありがとう…… 。 」
嬉しそうに直ぐに着ける。
手が温かくてポカポカに。
「 やっと笑ったな。
さぁ電車来るから行くぞ。 」
そして頭に手をポンと乗せる。
「 ホント…… 飛鳥さんに似てる。
親友だから似ちゃうのかしら。 」
認めたくなくても屯平の後ろ姿は、あの時見た飛鳥と重なって見えていた。
直ぐに屯平の後を追う。
駅まで送り愛理は改札機の前に。
「 今日はありがとう。
少し汚れたけど新しい服も買えたし、髪だって少しはマシになったし。 」
「 ううん…… 今日はありがと。 」
屯平は全く気にしていなく、直ぐに帰って行った。
愛理は改札機を越えて屯平を見る。
「 あっ、もしもし。
今度の休み…… 何してる?
大きな水族館見つけたんだ。
一緒に…… 行かない?? 」
嬉しそうに麻理恵に電話をかけていた。
愛理は笑ってしまう。
「 あの電話の向こうの人…… 良いな。
あんな無邪気な人に気に入られて。
ちょっとだけ…… 嫉妬しちゃうな。 」
愛理は麻理恵に嫉妬していた。
愛理は手袋を着けた手を見てニッコリ笑う。
愛理にとっても楽しい休日になった。
次の日…… 。
仕事に行くのが憂鬱な屯平。
目を思い切り殴られていて、腫れていて見せるのが恥ずかしい。
最近はケガが多くて社会人として、いかがな事なのだろうか?
と思っていた。
「 はぁ…… ならこれ使おうっと。 」
眼帯を着けて綺麗に隠す事にした。
見られると色々面倒だと思ったからだ。
「 おはよう…… ございます。 」
屯平が出勤するとチラッと皆の目が向く。
「 あれ…… ? 二宮さん?
イメージが全然…… 。 」
女性社員達はイメチェンした屯平に興味津々。
屯平は見られるのが嫌で、早歩きでデスクに着いた。
「 先輩…… お茶どうぞ。 」
いつもお茶なんて出してくれないのに、優しくお茶をいれて貰う。
屯平は不気味に思いながら頭を下げる。
( 気味が悪いな…… 適当に仕事しよっと。 )
周りを気にせず仕事を始める。
周りの女性社員達は見ながら何かを話している。
また陰口を言われているのだろう…… 。
そう思ってしまう。
「 二宮さんってパーマだったし、髪型がイマイチだったけど直せば案外悪くなくない? 」
「 それあるね、私は結構あり。 」
意外にも好評だった。
愛理の見立てはさすが現役大学生。
女性受けしやすい髪型にしていた。
「 二宮さん…… そろそろ休憩にしてみては? 」
女性社員に言われて時間を見ると、集中していたのか昼前になっていた。
「 ああ…… もうこんな時間か。
少し飲み物でも買ってくる。 」
そう言ってその場を離れる。
直ぐに女性社員達は集まり、楽しそうに話をし始めた。
「 二宮さんちょっとカッコ良くない? 」
「 分かる分かる! 前髪で隠れてたけど、目も二重で大きいし。 」
女性達からは好評で話題の種になっていた。
そこに麻理恵がやって来る。
「 お疲れさまでーーす!
何のお話してるんですか? 」
「 二宮さんの話よ。
イメージ変わって良いなって! 」
麻理恵には何の話なのか分からなかった。
皆で自販機に行った屯平を見に行く事にした。
「 麻理恵ちゃんあれよ。 」
「 えっ!? あれが先輩!?? 」
麻理恵も驚きが隠せなかった。
格好良くなったと思ったけど、麻理恵は周りの屯平への印象が変わってしまった事の方が気になっていた。
印象一つでここまで人気なるなんて…… 。
麻理恵はヤキモチを心で妬くのだった。
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