第41話 自信のつけ方


肌寒くなってきた季節。

もう冬になってきたのを体感じる。

そんな中で屯平は街中の中で1人で立っていた。


( あの野郎…… いきなり出掛けたいからって、こんな人混みのとこで待ち合わせなくても。

しかも何分待たせるんだ?? )


イライラしながら待っている屯平。


「 お待たせぇ。 」


直ぐに怒ろうと振り返る。

愛理がいつもとは大きく違い、服装は可愛い感じにして髪にはカールがかかっていた。


「 おま…… じゃあ行くぞ。 」


怒ろうと思ったけど来る準備に時間がかかったのが良く分かったから、強く言う気が無くなってしまった。


「 女性がいつもと違う時は、今日は可愛いねの1つくらい言うのがマナーよ。 」


「 うるせぇな! まずは遅れた事を謝れ! 」


最近良くねるるに同じ事を言われるから耳タコになっていた。


「 おしゃれしたんだから仕方ないでしょ?

さぁ行きましょ! 」


渋々付いていく。

用事に付き合ってと言われただけで、実際の用事の内容は一切聞いていない。


「 にしても今日は何処行くんだよ。 」


「 つべこべ言わずに付いてくる! 」


相変わらず一方的。

考えてみたら愛理と休みを過ごすのは初めてだった。


「 ここ入るわよ。 」


おしゃれな服屋さん。

屯平とは無縁のお店。


「 俺はここで待ってる…… 。 」


面倒くさくて外で時間を潰そうと考えた。

すると愛理に手を掴まれる。


「 あんたも来るの。 」


無理矢理一緒に中に入れられてしまう。

屯平もその勢いに負けてしまった。


「 いらっしゃいませ! 」


明らかにおしゃれな店員さんがお出迎え。


( おいおいおい……明らかに場違いだろ。

俺なんかずっと着てたパーカー。

ヨレヨレで年期が入ってるし。 )


居るだけで自信が無くなりそうだ。

そこに居るお客さんもやっぱりおしゃれ。


「 えーー っと、これかしら? 」


屯平にシャツを合わせて似合うかを見る。


「 愛理さん…… 何をやってらっしゃる? 」


「 見て分かるでしょ?

コーディネートしてあげるのよ。」


愛理は屯平の服装がイマイチだと思い、少しでも印象から変えようと思ったのだ。


「 これも良いわね…… このダッフルコートは? 」


着せ替え人形のようにされるがまま。

色んな服を持ってきては似合うかを照らし合わせる。


「 何かここの店…… 少し高そうじゃない? 」


「 ちょっとはね…… 。

でも女性受けしやすい服装多いのよ?

私に任せておきなさい。 」


そう言って集中して探していた。

そしてコートからセーター。

あらゆる冬のコーディネートした服装が出揃った。

カゴには沢山の服が…… 。


「 合計で38000円になります。 」


屯平は耳を疑った。


「 3800円…… ? 」


「 いいえ、38000円になります。 」


屯平はそんな大金を服で使った事がない。

フィギュアやグッズではホイホイ出していたけど、服なんかは大体5000円で沢山買っていた。


「 カード使えますか? 」


仕方なくカードでの支払い。

痛い出費になってしまった。

泣きたい気持ちで外に。


「 遅い遅い、次行くわよ。 」


そう言われてまた次へ。

近くのおしゃれな美容室に。


「 ここって…… 。 」


「 私の行きつけの美容室。

さぁ行くわよ。 」


大きな美容室。

従業員も凄い数…… 。


「 予約していた鈴村です。 」


「 お待ちしておりました。

さぁ荷物を置いてあちらへ。 」


屯平は鞄を剥ぎ取られて、綺麗な美容師の女性に案内されて椅子に。


「 今日担当致します、真中です。

宜しくお願いします。 」


トントン拍子に何かを始めてしまう。

屯平はツッコミのも面倒で諦めてしまった。


「 凄いクセっ毛ですね…… 。

縮毛矯正したら変わりますからね。 」


( しゅくもう? きょうせい?

何を言ってるんだ?? )


知らない用語が沢山出てくる。

されるがまま髪に色々されてしまう。

屯平は目をつぶっていたら、少しずつ意識がなくなり眠ってしまう。

緊張して疲れていたのだろう。


「 うふふ…… 子供みたいね。 」


美容師のお姉さんも笑ってしまう。

店長のおじさんが愛理の元へ来た。


「 愛理ちゃんいらっしゃい。

今やってるのが例の? 」


「 うん、格好良くしちゃって。 」


愛理は少しでも外見に気を付ければ、自信に繋がると思っていた。

だから服装から髪型まで一変させようと思った。


少しだけ遡る事数日前…… 。

愛理はストーカーに追いかけられる事が無くなり、ひと安心して平和が訪れていた。


「 愛理ちゃん、もう最近は追い回される事は無くなったかい? 」


「 あっマスター、はい、もう大丈夫です。

色々心配させてしまいました。 」


マスターもそれを聞いてひと安心。

それと言いたかった事が…… 。


「 その事なんだけど…… 本当の事は絶対に言わないけど、多分屯平君がやってくれたんだと思うよ。 」


マスターからの言葉に耳を疑ってしまう。


「 まさかぁ! だってボディーガードするって言って1日しか来ませんでしたよ? 」


「 解決したから来なくなったんだろう。

それとあの時、屯平君大怪我してただろ?

もしかしたらその事に関係してるのかも。 」


愛理は少し屯平がやってくれたのかもと思った。


「 なら何で素直に言わないんですかね?

俺がやってやったんだから、もう大丈夫だって! 」


「 彼は凄く不器用だからね…… 。

自分の事よりも他人を優先して動いてしまう。

それが彼の良いところでもあるんだけどね。 」


愛理はその日からお礼が言いたかった。

その気持ちを今日別の形でしていたのだ。


「 愛理ちゃん終わったわよ。 」


そう言われて見てみると、屯平がやって来た。


「 何か落ち着かないなぁ…… 首もスースーするし、さらさらヘアーなんて似合わないだろ。 」


髪型が変わるだけで本当にイメージが違った。

前髪もくるくるしてなくて、目が見えるようになっていた。

目を見ると大きくてクリクリしていて可愛らしくも見えた。

愛理もびっくりして言葉に詰まる。


「 おい、感想はどうしたよ? 」


「 あっ、そうねぇ…… 前よりはマシかしら? 」


と言ってみたけど前と大きく違い、オタクっぽく見えずに少し男らしさも感じていた。

少しギャップにやられてドキドキしてしまっていた。


「 次行くわよ…… 。 」


また次に行く場所に向かった。

寒くなってきて冬はあっという間に日が沈む。

二人で人気なレストランに行き、人気な料理を頼んだ。


「 はぁ…… 今日の出費凄いなぁ。 」


「 何言ってるのよ、少しはエスコートするってのを教えてあげたんじゃない。

良い勉強代になったんじゃない? 」


考えていなかったけど、屯平の事だけの為に過ごした1日だった事に今気づいた。


「 あり…… がと。 」


屯平は照れくさそうに言った。


「 分かれば宜しい!

ご飯奢って貰ったし気にしないで。 」


愛理も素直に気持ちを伝えられていないけど、少しでも感謝を伝えたかった。


( 寒い…… 手袋持ってきたら良かった。 )


外は寒くて手が冷たくなって痛くなっていた。


「 ちょっとトイレ。 」


「 えっ? 分かった。 」


屯平は唐突にトイレへ。

愛理は走って行ってしまう屯平を見てため息をつく。


( 何かこんな寒い日はあの人の事思い出すなぁ。 )


一年前の冬の寒い日。

愛理はバイトを終えて帰っていた。


「 寒いなぁ…… 何でこんな薄着にしちゃったのかしら。

明日はもっと厚着しなくちゃ。 」


寒そうにしながら駅へ歩いていた。


「 愛理ちゃーーん! 」


愛理は振り向くと飛鳥が追いかけて来ていた。

いきなりな事に驚いてしまう。


「 飛鳥先輩! どうしたんですか?

こんなに急いで。 」


「 はぁはぁ、今日は外寒いからさ…… ちょっと薄着に見えたから余計なお世話したくなってね。 」


そう言いマフラーを巻いてくれる。

とても温かくて寒さが紛れる気がした。


「 それじゃあお疲れさま。

明日はもっと温かくして来なよ。 」


手を振りながら帰って行った。


「 お礼…… 言いそびれちゃった。 」


愛理は見えなくなるまで飛鳥を見ていた。

体だけではなく心まで温かい気持ちに。


寒い日になると思い出してしまう。

その時のマフラーは今でも宝物だ。


1人で待っているとチャラチャラした連中がやって来る。


「 ねぇねぇ今1人??

俺たちと遊ばない? 良いだろ? 」


愛理は雰囲気の悪い連中に絡まれてしまう。

早く屯平が帰って来るのを待っていた。

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