第40話 いつものキミで


ねるるが積極的に屯平への気持ちを聞いた。


「 えっと…… 話してて楽しくて、嘘とかつかないし絶対裏切らない。

一緒に居て…… 楽しい先輩で友達。

そんな感じかな…… ? 」


恥ずかしそうに言うとねるるは嬉しそうに笑う。


「 良いじゃん、良いじゃん。

あんなひねくれもんと一緒に居て楽しいなんて、麻理恵ちゃんは変わりもんだなぁ。 」


そう言いまた笑っていた。


「 ねるるは屯平と…… どんな関係? 」


気になっていた事を思いきって聞いてみた。

ねるると少し考える。


「 友達以上恋人未満かな?

でも屯平の事は好きだよ。 」


なんとも思いきった発言。

麻理恵もびっくりしてしまう。

自分の気持ちをこんなに大胆に言えるねるるが、素直に凄いとも思った。


「 あいつは鈍感だから言わないと分からないけど、一緒に居ると落ちつくの。

たまに嘘つくけど直ぐに顔に出るから意味ないしね。

裏切らない男って珍しいよね。 」


ねるるが屯平への気持ちを語っていた。

麻理恵も同じ気持ちだった。

こんな可愛い子が好きなら、自分では勝負にもならないなとも思ってしまう。


「 屯平はいつも私と一緒のとき、麻理恵ちゃんの話沢山するよ。

ご飯とか食べに行ったとか嬉しそうに話してて。 」


屯平が麻理恵の事をねるるに話していた。

相当嬉しかったのだ。

麻理恵も笑みが溢れる。


「 私が思うに屯平は麻理恵ちゃんの事好きだよ。」


「 えっ?? そんな事…… 。 」


麻理恵は突然の事で心臓の音が速くなる。

遠くで屯平は何も知らず料理を頼んでいる。


「 私ね…… 屯平の魅力に気づいてくれる人は居ないのかな? ってずっと思ってて、麻理恵ちゃんみたいな良い子が好きで居てくれて嬉しい!

変な人に騙されたりしなくて良かった。 」


ねるるは嬉しそうに話していた。

でも麻理恵には気になることが。


「 ねるるは…… 良いの?

屯平君の事…… 好きなんじゃないの?? 」


麻理恵はねるるの反応が怖く感じていた。

もしも本気で好きで狙ってると言われたら……

自分に勝ち目は無いと思っていた。


「 私には仕事があるから。

だから恋愛してる余裕ないんだ。 」


ねるるが言うと麻理恵はホッとした。

ねるるはそんな麻理恵を見てニヤけてしまう。


「 麻理恵ちゃんの素直に顔に出るとこ好きだなぁ。 」


「 ええっ!? そんなこと。 」


おどおどしているとこを見て、ねるるは笑ってしまう。

そこに屯平が戻ってくる。


「 いやぁ…… 参ったよ。

焼きそば頼んだらお好み焼きが来てさ、変えてくれって言ったら安くするからって。

廃棄減らしたいからって全く。 」


と言いながらもお好み焼きを買っていた。


「 これで良かったらどうぞ。 」


「 ありがとう、いただきまぁす! 」


文句言わずに美味しそうに口に運ぶ。

食べて貰えてホッとする。


「 ちょっ、ちょっ、ちょっ!

何満足そうにしてるのよ?

普通頼まれた物買って来るでしょ??

これだから彼女すら出来た事ないのよ。 」


ねるるに怒られてしまう。


「 お好み焼き好きだよ。 」


と言いながら嬉しそうに食べている。

屯平はまた不思議な気持ちになっていた。


( 何だろう…… 麻理恵ちゃんと一緒に居るとこんなに落ち着くとは…… 。

付き合える人が羨ましいな。)


好きだと言う気持ちがあっても、年が離れて居るから自分には縁がないと思い込んでいた。

元々奥手なのもあり仕方がない部分もあった。


屯平は考え事をしながら麻理恵を見つめている。


「 屯平見すぎだってば!

女の子が食べてる所ガン見って。

デリカシーの欠片もないんだから。 」


「 あっ、ごめん。

ちょっと次の撮影の準備してくる。

もう少しゆっくりしてから来ると良いよ。 」


屯平は恥ずかしそうに立ち去る。

麻理恵は笑って見送った。


「 あれは…… やっぱり麻理恵ちゃんの事好きだよ。

あんな見つめちゃってさ。 」


「 えーーっ!? そんな事…… 。 」


ねるるは楽しそうに近づいて来る。


「 屯平はあんな年になるまで付き合った事すらないのよ?

奥手に決まってるじゃない。

麻理恵ちゃん可愛いんだから、自信持って大丈夫なんだから! 」


アイドルに言われても説得力がない。

ねるるから見ても麻理恵はとても可愛く見えていた。


「 屯平は人見知り凄いのに麻理恵ちゃんとは目を見て話せてる。

とっても信頼されてる証拠よ。 」


真っ直ぐ見て貰える、素直に羨ましく感じていた。

マネージャーから呼び出されて次の撮影へ。


「 ねるる! 」


「 えっ、なぁに? 」


麻理恵が呼び止める。


「 色々相談乗ってくれてありがと。 」


「 えへへ、当然じゃない。

私達友達じゃん。 」


そう言って行ってしまった。

麻理恵も嬉しそうに笑った。


ねるるとマネージャーは廊下を歩いて、次の場所に向かっていた。


「 幸せになって貰いたいだけだし…… 。 」


ねるるはボソっと独り言を言った。


「 えーーっ? 何か言った? 」


「 何でもない…… 早く次行こ。 」


少し早歩きになってしまう。

ねるるは屯平には幸せになってもらいたい。

本当にそう思っていた。

その為に二人はお似合いだと思ってくっつけようとした。

自分の気持ちを圧し殺したとしても…… 。


その後も順調に撮影をこなして、時間は過ぎていく。

麻理恵も近くで見学していた。

ねるるが周りを見ると屯平がまた居ない。


( そうだよね…… あいつ興味ないからなぁ。

居なくても仕方ないよね…… 。 )


辺りを探しても見当たらない。

分かっていても少し寂しくなっていた。


仕事を終えて控え室に戻り、飲み物を飲みながら休んでいた。


「 お疲れさま。 」


屯平が入って来る。


「 お疲れさま、さっきはゲームは何してたの? 」


サボってやってたゲームが気になっていた。


「 んん? ずっと見てたけど? 」


「 えっ? 全然居なかったじゃない! 」


ねるるが言うと屯平は。


「 真っ直ぐ見ると恥ずかしいから、後ろからずっと見てた…… 。

アイドルの仕事って大変だけど、凄いカッコいいなって思った。 」


ねるるは直ぐに後ろを向く。


「 真っ直ぐ見ないと意味ないじゃん。 」


「 あはは、ごめんな。 」


ねるるは顔を赤くして嬉しそうに笑っていた。

頑張ってる自分を見ていてくれた。

それが何よりも嬉しくてたまらなかった。


「 またゲーセン行くからゲームやろ。 」


「 おうよ、じゃあまたな。 」


屯平は控え室から出て行く前に何か袋を置いていった。

何かなと思いながら開けてみる。

見てみると沢山のお菓子が入っていた。


「 子供じゃないんだから…… ぷっ! 」


沢山入っていたお菓子の袋を見て笑ってしまう。

マネージャーがそこにやって来る。


「 ねるるちゃんそろそろ帰る…… ん?

誰か持ってきてくれたのかな?

こんなの誰かにあげちゃうから、有名パティシエが作ったお菓子あるよ。

だからこれは私が回収しておく…… 。 」


「 触らないで!! 」


急に大きな声を出したから、マネージャーもびっくりして袋から手を放す。


「 そんなお菓子いらないから、私はこのお菓子で充分だから。 」


屯平から貰った何処にでも売ってるお菓子。

それでもねるるにはとても大事な物だった。


「 そう…… 分かったよ。 」


マネージャーも良く分からず、荷物をまとめて帰りの準備をした。

ねるるはやっぱり屯平の事が好きだった。

大事に持って帰って行った。


屯平はいつもの喫茶店に来ていた。

ココアを飲みながらいつになくボーとしている。


「 あんたどうしたのよ。

婚カツは上手くいってるの? 」


愛理がやって来て聞いてきた。

屯平は窓の外を見ながら。


「 無理にやらなくて良いかなぁと思い始めてる。

だからと言って先の事は考えてない。

少し疲れちゃったな。 」


愛理はそんな屯平を見て察してしまう。

この数ヵ月頑張りすぎた反動で、精神的に疲れてしまっていた。

どんなに頑張っても上手く行かず、努力が報われなくて絶望していたとこもあった。


屯平のスマホにメッセージが。


( 屯平君お疲れさま。

また近くに美味しいお店が出来たの。

今度一緒に行かないかな? )


屯平はニッコリ笑う。

彼女は居なくても友達が居る。

今はそれで充分だと思っていた。


愛理はこのままではいけないと思った。

屯平の前から離れながら何かを考えるのだった。

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