第39話 嫉妬


ストーカー事件も終え、麻理恵も安心して平和な日常に戻った。

マスターにだけ全てを告げて、安心した様子になっていた。


屯平にはケガが残り、いつもと変わらない日常に戻っていた。


「 ほわわわぁーー っ…… 。

なんだか喉かだなぁ…… 。 」


仕事の手を止めて窓の外を眺めている。

色々な事があってこんなに落ち着いてるのは、久しぶりな気持ちだった。

少しウトウトとしながら、眠そうになっていた。


「 二宮君、今日はわが社の宣伝撮影の為にねるるさんが来ている。

担当頼むからね。 」


部長からまたいつもの重要な仕事を任される。

ねるるは会社の看板キャラになる予定。

社運が懸かっている。


「 分かりましたぁ…… 。 」


渋々待合室へ歩いていく。

部長は嬉しそうに見送った。


屯平が待合室に着くとマネージャーが待っていた。


「 二宮さんこんにちは。

今日は社内での写真撮影、それに社長との対談。

社食の試食と忙しい日程になっています。

御同行宜しくお願い致します。 」


屯平は眠そうにしながら一緒に会社の中を回る。

相変わらず仕事モードになると、カメラ目線で可愛いポーズを決める。


( ほう…… 良くやるもんだな。

あいつはアイドルとか興味ないとか言ってるけど、ちゃんとやれてるじゃないか。 )


芸能界に全く興味がなく、芸能人が目の前に居ても他の人のように熱くはなれなかった。


「 可愛いよなぁ…… 。 」


与一がいつの間にか隣に居て嬉しそうに見ている。


「 あぁ…… そうなのかな。 」


全く無関心でつまらなそうにしてい屯平に、腹が立って詰め寄る。


「 おいおいおいおい! お前正気か!?

あんな美女が近くに居てそんな…… 。

そんな適当な態度失礼だぞ!! 」


屯平とは正反対で芸能人と結婚したい与一。

どうにかお近づきになりたくて必死になっている。

興奮して叱られても興味が湧かない。

ねるる…… 巴は友達だと言う思いしかなかった。


「 そんなに必死なら後は任せる。

俺はお腹が痛いからトイレに。 」


と言って与一の肩に手を乗せる。


「 そうかぁ? なら遠慮なく! 」


嬉しそうにしながらこっそりスマホで撮影している。

そんな中もプロの立ち振舞いで、ファンを魅了するようなポーズをして撮影されていた。


「 OKでーーす、少し休憩入りまーーす! 」


やっと休憩で巴も椅子に座り、少し休憩してひと休み。


「 お疲れ様です…… 良ければどうぞ。 」


与一が直ぐ様飲み物を渡す。


「 どうも…… 屯…… 二宮さんは?? 」


辺りを探しても居ない。

代わりに与一が居て不満そうにしている。


「 あいつですか??

お腹を壊しましてトイレに駆け込みまして。

社会人としてあるまじき行動。

後程厳重注意と担当を交代致します。 」


必死にガツガツと来る与一に興味がない。

直ぐに立ち上がる。


「 あれ? どうかなさいました? 」


「 トイレ! 1人で行けるから付いて来ないで! 」


プンプンしながら歩いて行った。


「 はい…… 御ゆっくりどうぞ…… 。 」


与一は怒らせてしまったと思い、1人悲しく落ち込んでしまう。


トイレでは鍵を閉めて、1人スマホゲームをして時間を潰していた。


「 重要だか知んないけど…… 興味ないんだよな。

出世したい奴がやれって話だよ。

俺は…… 俺のやりたい事をやる、ホイホイっと! 」


屯平は楽しそうにゲームをしている。


( ドンドンっ!! )


凄い勢い良くノックされる。


「 はい、今使用中です。 」


「 お腹は大丈夫かしら? 」


ん? 外から聞こえるのは女性の声。

恐る恐るゆっくり扉を開ける。


「 うおぃっ!! ここは男子トイレだぞ?

何でここに居るんだよ。 」


「 私が頑張ってるのに見ないとか…… 。

あんたどんだけ目が悪いの?? 」


サボってるのはバレバレで、屯平を叱りに来たのだ。


「 …… 何か人が多いのとか苦手で。

良く分かんないから興味でなくて。 」


「 もう!! 本当サボりやなんだから。

早く次やるから行くよ? 」


そう言い手を引っ張る。

屯平は直ぐに振り払ってしまう。


「 おい! 会社の中では距離感守るって約束しただろ?

これだから社交的なやつは。 」


少しドキドキしながらトイレを出る。

直ぐに後から付いて行く。


「 次は社食だってさ。

早く食べに行こう、行こう!」


嬉しそうに体をぶつけてくる。


「 近い、近いって。

何度言わせれば良いんだよ。

こんなとこ誰かに見られたら、俺は嫉妬されてボコボコにされるかも知れないんだぞ? 」


「 ふぁーーい。 」


二人は撮影現場に戻って行った。

それをこっそり見ている人陰が…… 。


( うぇーーっ!? ウソぉ??

何であの二人あんなに距離近いの!?

しかも何であんなに仲良さそうなの!!? )


麻理恵はびっくりして隠れてこっそり見ていた。

屯平との距離感に嫉妬してしまってしまう。

そのまま二人の後を追って行った。


食堂では色々な料理を食券を買って食べる。

平凡な物ばかりで何の変哲もない。


「 二宮さんはどれがオススメ? 」


巴がねるるに戻り、あまり親しくないように接している。


「 何だろ…… 焼きそばかな。 」


それを聞くなり遠くから与一が走ってくる。


「 焼きそばーーっ!?

お前なぁ…… そんな下品なB級料理食べるか!

ねるるさんはAランチですよね。

日替わりで美味しいお肉やお魚があってですね。 」


与一が興奮しながら屯平と巴の間に割り込み、必死に熱弁していた。

屯平はタメ息をつきながら焼きそばを押す。


直ぐに巴も同じのを券売機でボタンを押した。


「 あれ…… Aランチじゃなくて良いの? 」


「 二宮さんがオススメしてくれたから、仕方なく食べようかなぁって。 」


与一にお勧めされたのより、屯平のお勧めを優先したのだ。

与一は当然落胆し、崩れ落ちてしまう。


「 ん? ちょっと待てよ!

何でお前ねるるさんにタメ口なんだ?

俺がそんな態度絶対許さんぞ!! 」


与一は当て付けのように屯平を叱り始める。

首を絞めて屯平を苦しめていた。


「 宮内さん! ちょっとうるさいです。

ちょっとあっちに行ってて貰えます? 」


「 あっ…… はい…… 失礼しました…… 。 」


ねるるに叱られて与一はゆっくりと離れて行く。

やっと二人きりになれてホッとする。


「 やっと二人きりになれたね! 」


「 おいっ、ちょっと言い過ぎだぞ?

あんな風に言ったらあいつだって可哀想だろ? 」


屯平は不憫な与一を気にしていた。


「 いつも屯平をイビってるから良いの…… 。 」


屯平が与一に色々されてるのを聞いていて、ねるるは内心腹が立っていたから、良い気味だと思っていた。

ボソッと話したので屯平には聞こえていなかった。


それを離れた場所から見ている麻理恵。

屯平との距離感が近く、ねるるに嫉妬していた。

そんな麻理恵に気づくねるる。


「 麻理恵ちゃん! こっち、こっち。 」


ねるると麻理恵はこの前会って友達になっていた。

まだ麻理恵はまともに話していなく、緊張しっぱなしだった。


「 ねるるさん、こんにちは。 」


「 ねるるで良いよ。

麻理恵ちゃんとは初めてじゃないんだから。 」


見つかってしまい三人で食べる事になった。

なんとも複雑な組み合わせ。


「 麻理恵さんと友達だったの? 」


屯平が聞くとねるるは嬉しそうに麻理恵の横に座る。


「 そうそう、女の子同士で仲良し。

屯平は麻理恵ちゃんのご飯頼んできて! 」


「 えっ? 俺が?? 」


文句言いながら仕方なく歩いて行った。

ねるるは笑って見送る。


「 麻理恵ちゃん! 屯平の事好きなの? 」


「 えぇっ!? 」


ねるるの目的は何なのか?

焦る麻理恵…… 。


そうとも知らずに呑気に食券を買っていた。


「 あっ…… また焼きそばにしちゃった。

何好きか聞くの忘れた。

また巴にグチグチ言われるぞ。 」


男は呑気にメニューに悩んでいたのだった。

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