第17話 頂きガール


会社で屯平はご機嫌で仕事をしていた。

積極的に人の仕事も手伝い、自分の仕事も全く抜かりがなかった。

これが青春と言うものなのか?

と屯平はニヤニヤしながら思っていた。


休憩時間には屋上でお気に入りのパン屋で買った、クロワッサンを食べながら嬉しそうにしていた。


「 先輩っ! 隣良いですか?? 」


麻理恵がやって来た。

屯平は恥ずかしそうに顔を手で擦る。

ニヤニヤしてたのがバレてしまったか不安になる。


「 そうかぁ…… 企画上手く行ったんだね。 」


「 はい。 無事に上手くいきました。 」


屯平の手を見ると絆創膏が沢山貼ってある。


「 そう言えばぁ…… 誰かがUSBを見つけてくれたんです。

清掃員のおばちゃんから聞きました。 」


いきなりの事に咳き込んでしまう。


「 ゲホッゲホッ! そう…… 。

親切な人が居て良かったね。 」


バレてないと思い知らないフリをした。

愛理は顔を近づけて目を見つめる。

直ぐに屯平は恥ずかしくなり離れる。


「 その人は可笑しいんですよ?

ゴミ収集の人に頭を下げて、手伝う代わりに待って貰ったんだって。

それで朝方まで手伝ったらしいんですよ。 」


麻理恵は色々調べていた。

当然もう屯平が助けてくれたのは確信している。


「 そう…… 。 」


また適当に流そうとすると、また近付いて顔を見つめて来る。


「 また嘘ついてる…… 。 」


「 えっえっ…… ??

何の事かなぁ…… 。 」


また誤魔化そうとすると、麻理恵は少し怒ったような表情になる。


「 何で助けてくれたのに言わないんですか?

必死に探してくれたんでしょ?? 」


もうバレてしまったと思い、観念して大きくうなずく。


「 ほらぁーー 、嘘つかないで言って下さいよ。

先輩…… 本当にありがとうございます。 」


「 うぃ…… 。 」


屯平はお礼を言われたくてやったのではない。

ただ悲しい顔を見たくなかった。

それだけだった…… 。


「 今度お礼させて下さい。

美味しいお店連れて行くんで。 」


「 うん…… ありがとう。 」


麻理恵は屯平の横顔を見ていると、クロワッサンを口に頬張る姿に女心をくすぐられてしまう。


「 何で見てるの? 」


「 別にみ見てませんよ。

私もクロワッサン買えば良かったって思って。 」


恥ずかしいので咄嗟に嘘をついた。

屯平は袋からもう一つのクロワッサンを取り出した。


「 あむっ…… これあげる。 」


クロワッサンを咥えて仕事に戻っていった。

麻理恵は1人クロワッサンを食べる。


「 美味しい…… って、食いしん坊さんかいっ! 」


自虐ネタで1人で自分にツッコミを入れていた。

食べながら嬉しくて笑っている。

食事を楽しみにしていた。


仕事が終わると出口に柚穂が来ていた。


「 あっあれ?? 柚穂ちゃん?

どうしてここに…… !? 」


「 この前仕事先聞いたんで、もし来たら会えるかな?

って思ってさ。

でも会えて超超嬉しいーーっ。 」


そう言いながら抱きついて来た。

屯平は意識が朦朧もうろうとしながら、どうにか持ちこたえている。


「 今から一緒にスポーツしに行こ!

近くにスポーツ出来るとこあるからさ。 」


「 それは…… それは楽しそうな。 」


当然スポーツは苦手。

でも嫌われたくないので絶対に言わない。

また腕を組みながらその場所に向かう。


屯平が見えて話をかけようと麻理恵が駆け寄る。

でも直ぐに柚穂の姿が見えて立ち止まる。


「 何だ…… 彼女さん居るんだ…… 。 」


少し悲しそうに話をかけずに帰っていった。


屯平は慣れないバスケや野球をやり、ヘロヘロになり倒れていた。


「 大丈夫?? スポーツ嫌いだった? 」


「 いやいや…… はぁはぁ。

ただ久しぶりだからなまってただけだよ。 」


酸素不足で息が荒くなってしまう。


「 なら良いんだけど…… 。 」


柚穂は大きくため息を吐いた。


「 あっ…… ごめんね。

俺とじゃつまらなかったかな? 」


「 全然違うの! そうじゃないの!

実は…… 色々大変で…… 。 」


何やら訳ありのようだった。

屯平は胸を張りながら。


「 俺に相談してくれるかい??

俺なら何でも相談に乗るよ? 」


安心したのか、ゆっくりと悩みを話し始めた。


それから数週間が過ぎた。

屯平はデスクでぐったり倒れていた。


周りの女性社員達から心配されている。


「 最近ずっとあんな感じじゃない? 」


「 ウチも思った、クマも目に出来てるし。 」


屯平は明らかにぐったりしていた。

休憩時間になって屋上で仮眠する事に。


「 先輩…… ? 大丈夫ですか? 」


麻理恵が心配して駆け寄る。


「 んん? 大丈夫…… 。

ちょっとだけ無理してるだけ、ありがとう。 」


そう言い直ぐに眠ってしまった。

ご飯は栄養剤におにぎり一個。

一体どうしてしまったのか心配になっていた。


会社が終わると駆け足で何処かへ向かっていった。

遠くから麻理恵は心配そうに見守っていた。


麻理恵は喫茶店に行くことにした。


「 いらっしゃいませ、あっ。

麻理恵さんじゃないですか!

どうぞ、どうぞ。 」


愛理が嬉しそうにカウンターへ案内した。

麻理恵は元気なさそうに座る。


「 どうかしたんですか?

凄い元気なさそうに見えますけど…… 。 」


「 うん…… 先ぱ…… 二宮先輩…… 最近元気なくてちょっと心配で。

軽くやつれてて、明らかにぐったりしてたし。

何か知らないかなって…… 。 」


愛理はこの前来てから会っていなかった。

マスターも同じく会っていない。

思い当たる事がなかった。


「 そう言えば一つだけ…… 彼女? らしき女性と仲良くなって喜んでましたよ? 」


麻理恵も見た女性の事だった。


「 あの綺麗な人かな…… 。

会社にまで来てたから一度だけ見たよ? 」


彼女が出来たのに何故そんなに疲れているのか?

二人は分からなかった。


愛理は仕方なく家に行ってみることに。

一度だけ酔った屯平を飛鳥と送った事があったから、家の場所は知っていた。


ピンポーーンッ!!

チャイムを鳴らしても家に居る様子はなかった。


( もう22:00よ…… またデートしてるのか? )


愛理は電車に乗って帰ろうと駅に歩いていた。

すると工事をしている場所に目がいってしまう。

とても大変そうにみんな働いている。


( 本当…… 夜の力仕事って大変だよなぁ。 )


そう思いながら通り過ぎようとする。


「 うおいっ!! 新人!!

ちゃんと交通整備しろよ!

そんなんじゃ給料出せねぇぞ? 」


怒られながら必死に交通整備をしていた。

怖い上司に叱られている。


「 大変そう…… って!

ちょっと…… なんで…… 。 」


大きく手を動かし、車を誘導している屯平がそこに居た。

慣れない手つきで一生懸命声を出し、働いていたのだ。

止まって見ていた愛理と目が合う。


屯平は少しだけ休憩を貰い、椅子に座り二人は話す事に。


「 ダサいとこ見られちゃったな。 」


「 あんた普通に仕事してるのに、何でバイトまでしてんのよ。 」


屯平は少し黙ってしまう。

そして立ち上がり話をする事にした。


「 実はだな…… 柚穂ちゃんが大変なんだよ。 」


数週間前に会った時に悩みを打ち明けられていた。

それは母親が病気で入院していて、手術にもお金が必要だと言われた。

頑張って働いていても全然足りない…… 。

だから別れようと言われていた。

屯平を困らせたくないとの事。


「 えっ!? それであんた何て? 」


「 当然…… 俺が払うの手伝うって言ったのさ。 」


愛理は思いっきり前に倒れてしまう。


「 ちょちょちょ…… ちょい待って。

まだデートして数日でしょ?

それでお金貸したの!? 」


屯平はカッコつけた顔をしてこう言った。


「 時間なんて関係ないのさ。

共に過ごした愛情の方が強かった。

それだけなんだからさ…… 。 」


完全に信じ込んでしまっていた。

明らかに怪しいのに、柚穂の為ならと言って必死に働いていた。


「 絶対騙されてるよ?

その母親は何処の病院に入院してるって聞いた? 」


「 そんな事聞けるかよ。

疑うなんて出来るわけないだろ。

用がないならそろそろ行くわ。

愛って素晴らしい!! 」


疲れているのにスキップして戻っていった。

愛理は心配そうに見ていた。


その頃ホストクラブでは?

柚穂がナンバー1ホストと一緒にシャンパンを飲んでいた。


「 それでお金の当ては見つかったのか? 」


「 うん、雅人の為に頑張ったよ?

女性経験が浅い人だから、私に今どっぷりハマってると思うよ。

だからかなり絞り取れると思うから任せて! 」


柚穂の正体…… それは男を騙してお金を取る。

世間で話題の頂き女子だったのだ。

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