第21話 溢れる運気


屯平は仕事終えてゆっくり来たくしていた時の事。

相変わらずマッチングアプリも上手く行かず、婚活パーティーに行っては恥をかくばかり。

段々と話せるようになってきているが、周りの勢いとアピールの仕方と比べれば天と地の差。


稼ぎも平均的で顔は並み以下。

話しも下手で目を合わせる事も出来ない。

長年努力しなかった付けが回って来てしまった。


( なんだよ、なんだよ…… 。

頑張ったって上手くいかないじゃないか。 )


飛鳥はずっと屯平を応援していて、絶対に良い人が現れる。

そう信じて事あるごとに話していた。


「 屯平なら大丈夫さ。

なんたってこんな良い男なんだぞ?

いつか最高の女性が現れるさ。 」


飛鳥の言葉を思い出していた。


「 何が良い男だよ…… まともに話せない。

やっと付き合ってもフラれる。

お前の目が悪かったとしか言えないな。 」


皮肉を溢しながら歩いていた。

歩いていると宝くじのお店があった。


「 お客さん、良かったら買ってかないかい?

ここで当たりが何回も出たんだよ? 」


宝くじ売場のおばちゃんが売り込んで来た。

屯平は嫌そうに首を傾げる。


「 ここで当たった事あるんだったら…… 当分出ないのでは? 」


相変わらず嫌みのような話をしてしまう。

おばちゃんは笑いながら首を振る。


「 あんた何も分かってないわね。

だからいつまで経っても彼女すら出来ないのよ? 」


当てずっぽうで言われたが、当たってしまっていた。

負のオーラが溢れていた。


「 余計なお世話ですよ…… 。

今の話を聞いて気分を害したので。

それではお元気で。 」


そう言い残して離れようとする。


「 8桁の番号を書くだけよ?

もし大金手に入ったら人生変わるわよ?? 」


無視して歩いて行ってしまった。

屯平は賭け事が大嫌いだ。

何故なら運がない事を知っているからだ。


懸賞に応募しても当たった事はない。

基本楽しみにしていた旅行の日は雨。

ゲームの発売日に並んでも、自分の前の人の分で売り切れてしまう。

屯平じゃなくても運に頼りたくもなくなる。


また歩いていると謎の占い師が、テーブルと椅子を用意して占いをしている。

とても人気なようで女性の列が出来ている。

屯平は鼻で笑ってしまう。


( あんな胡散臭い人に頼ってしまう…… 。

典型的な心が弱い人って感じだな。

誰かに助言されたりすがりたい。

何ともお金と時間の無駄遣いなんだろか。 )


一瞬立ち止まってしまったが直ぐに歩き出した。

占い師は屯平の後ろ姿をジっと見詰める。


「 そこの冴えないお兄さん!

良かったら占ってあげようか? 」


屯平に話をかけてきた。

占いをしているのにも関わらず、何故か屯平に興味を示していた。


「 間に合ってるんで…… 。 」


そう言い直ぐに行こうとする。


「 友達の喪失感と自分の不甲斐なさに、絶望してしまっているね。

あんたが変わりたいなら占ってあげるよ? 」


屯平の足が止まる。

適当にそれっぽく話すのは、ぺてん師や詐欺師の戦法の1つ。

それにしても言い当てられて、屯平は少し興味が出てしまう。

仕方なく列に並んでみた。

社会勉強と暇潰しには丁度良かった。


30分くらいすると自分の番に。

占い師の女性は若く、紫色のローブであからさまな占い師。

20代くらいで胡散臭かった。


「 まずは手を出して頂けますか? 」


仕方なく手を差し出すと手を強く握られる。

屯平は少しドキッとしながら相手を見ると、集中して目を瞑っていた。


「 凄いです…… こんなに負のオーラがある人は初めてですね。

色々な人を見てきましたが、ここまで凄い人は初めてですよ。 」


屯平は少しニヤっと笑う。


( 読めたぞ…… こう言って不幸な人に商品を売り付ける。

次話すのは…… これを持っていればなんやかんや。

そんな感じかな? )


最近は色々あり疑心暗鬼になっていたのもあった。


「 お兄さん…… これを持っていれば…… 。 」


出た! と言わんばかりの決まり文句が出て来てしまう。

屯平は直ぐに立ち上がる。


「 あっ…… もう良いです。

こんな物に頼るのは心が弱い人だけ。

人を騙すのはあまり良いこととは言えないな。 」


一丁前に捨て台詞を吐き捨てて帰ろうとする。


「 そこらのぺてん師と一緒にするなよ。

私は13代目の大占い師、紅天月詠べにてんつくよみだぞ。 」


名前まで胡散臭い…… 。

立ち上がった月詠はかなり背が低い。

子供と間違われてしまいそうなくらいに。


「 私の力を試させておくれよ。

今回の占い代金とこの御守りはタダでくれてやる。

その代わりに運が良くなったら知らせる事! 」


そう言い取り出して渡そうとするのは、青黒くピカピカと光り輝く石だった。


「 この石はね、太陽から一番近いと言われている山頂で採れた石なんだってさ。

だから+のエネルギーでいっぱいなんだ。 」


子供っぽい見た目もあり、屯平のおどおどした態度は失くなり、少し偉そうに石を手に取る。


「 こんな石でか…… ?

こんなんで運が良くなるとは到底…… 。 」


明らかに態度はでかくなり、タメ口で上からの物言いに。


「 案ずるな小心者!

この石の効果は絶大だ。

今持っているだけで黒いオーラから、色が変わりつつある。

お兄さんとこの石の相性が良いのさ。 」


月詠には小心者なのがバレていた。

仕方なくその石を貰う。

でも屯平は財布を取り出した。


「 お前が本物か偽物かはどうでもいい。

こう言うのはちゃんとしないと気が済まない! 」


無理矢理占いの代金を手渡した。

そしてゆっくり帰っていく。


「 本当…… 変わりもんだねぇい。

って…… あのオーラは…… 黄金のオーラ!?

あんなオーラを出している人見たことない。 」


屯平の体には黄金のオーラで覆われていた。

石と屯平は運命的に巡り合わせられたかのように。

そしてゆっくりと手のお金を見る。


「 えっ…… 3千円?

うちの店は一回1万以上なんだけど…… 。

本当面白い…… あはははは。 」


月詠は計り知れない人間の可能性に笑うばかりだった。


屯平は石を手に握りながら歩いていた。


「 暇潰しとか興味本位だったからって、こんな石貰うなんて俺もまだまだだな。 」


夜のお惣菜を買って帰ろうとスーパーに立ち寄る。

店内のお惣菜を探索していると、美味しそうなステーキ弁当を見つける。


( 美味そう…… でも少し高いな。

500円くらいにならないかな? )


そう思っているとバイトの学生が割引シールを貼りに来た。

1つ1つ丁寧に貼っている。


( もしかしたら…… あのステーキ弁当も? )


その予感は的中し、シールを貼られる。

ゆっくりと近付きその値段を確かめる。


「 えぇっ!? 500円?

半額でもなく500円って!? 」


直ぐに手に取りレジへ。

悪い事をした訳ではないのに、精算されるまでは少しソワソワしてしまう。


「 お弁当1つで…… 500円になります。 」


やっぱりこの値段だった。

直ぐに支払い嬉しそうにスキップして帰っていった。


その頃に店ではマネージャーが弁当コーナーに来ていた。


「 誰だ!!? この値札貼ったのは!? 」


バイトの学生が貼った事を言うと怒鳴り出す。


「 バカもん! 俺が言ったのは格安のトンテキ弁当だよ。

まさか…… こんな高いステーキ弁当に500円の値札貼るなんて…… 。

誰か買ってないだろうなぁ。 」


時既に遅し…… 屯平は格安でステーキ弁当を手に入れていた。

石の効果なのだろうか?

屯平の生活はそこから大きく変わってくる事を、まだ本人も知らなかった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る