第5話 愛理の友達


愛理は大学生。

将来の目標はまだ無くて模索中。

喫茶店でバイトをしている。


「 愛理ーーっ、一緒にランチ行こう! 」


友達に誘われて一緒にランチへ。


「 ねぇねぇ、最近はどうなのよ?

あの年上の彼とは?? 」


同級生の芳賀美紀。

活発で探求心の塊で恋ばなが大好き。

恋ばなを活力にして生きている。


「 そうねぇ…… 全然かな。 」


飛鳥への片想いを相談中。

美紀はそれをおかずのように、パスタを音を立ててすする。

少し下品な女の子である。


「 それは…… それはあんたが悪いわよ。

可愛いのに奥手で!

今までだって相手から寄ってきたから付き合えてただけで、あんたはいつだって奥手だもんね。 」


楽しそうにウキウキと話している。

愛理は不安そうにパスタを食べる。


「 それよね…… 私は気は強い方だけど、恋愛にだけは奥手なんだよね。

情けない…… 。 」


「 本当それよ! 情けないわ。

んでもって好きになった理由は?

まだ聞いてなかったわね。 」


それは遡る事大学生になったばかりの事。

一人暮らしで仕送りでの貧乏生活。

少しでも節約生活をしているが、遊ぶお小遣いが欲しくてバイトをする事に。

稼げるなら何処でも良かった。


「 キミは可愛いねぇ、即採用だよ。 」


マスターは直ぐに気に入り採用してくれた。

暇そうな店なので楽出来そうに見えていた。


「 初めまして、俺は白岩飛鳥です。

今年で30になるとこかな? 宜しくね。 」


今まで一目惚れした事が無く、告白されて成り行きで付き合ってばかりだった。

そんな彼女は背が高く、顔もカッコいい飛鳥に一目惚れ。

直ぐに胸を締め付けられる思いに。


仕事は真面目にやり、基本は飛鳥から色々習っていた。

コーヒー何かには興味無かったが、一緒に働くのが楽しくなっていた。


「 勉強熱心だねぇ、偉いぞ。 」


笑ってたまに頭を撫でてくれる。

それが堪らなく嬉しかった。


「 私にもやらせてくれ! 」


「 あっ、マスターは大丈夫です。 」


但し好きな男性に限る。

優しく笑って話す顔も好きで、バイトの日数を増やしてしまう程楽しくなっていた。


「 ふーーん、そんなにカッコいいんだ。 」


「 そうなのよ、お客さんの中でもかなり人気でさ…… 。

優しいし下手な俳優よりカッコいいのよ。 」


美紀は話を聞く内に何となく察していた。

これはあまりにも惚れすぎて、美化し過ぎて過大評価しているのだと。


( 聞いていても全然ダメね。

こっそり潜入しようかしら。

愛理は今日大学で居残り勉強だし。 )


美紀はこっそり偵察に行くことにした。

念のためにいつもよりメイクも濃くして、本気モードにはしていく。


( 古くさい店内ね…… 。

しかもダサいジャズなんて流してるし。

正直ここのマスターのセンスを疑うわ。 )


ボロクソ言いたい放題。

席に座るなり店内を見渡していた。


「 いらっしゃいませ。

初めてのお客様ですね。

ゆっくりと選んで下さいね。 」


そう言いお冷やを置いてった飛鳥。

その瞬間に愛理のハートに恋の矢が刺さった。


( うっ!!!! 何よこれ!?

こんなカッコいい人居る??

地下アイドルにもこんなイケメン居ないわ。 )


正にハートを鷲掴みにされてしまった。

目を大きくクリクリさせて、飛鳥を追って見てしまう。

目が合うとニコッと笑ってくれる。


「 あっ…… 惚れた。 」


応援する筈だったのに、あっという間に恋のライバルになってしまった。

飛鳥は本当に人気者だった。


「 おいっ! お客さんも全然居ないんだから、一緒にマラカスの達人やろうぜ。

かなり激むずゲームなんだ。 」


後ろの席から大きな声で呼び掛けていた。

こっそり美紀が覗くと屯平が居た。

仕事を終えてゲームを楽しんでいる。


( 飛鳥様に馴れ馴れしく…… 。

天パーオタクは静かに…… あれ?

この人ってもしかして?? )


美紀は飛鳥の話の時、毎回のように一緒に話されてる男を思い出した。

天然パーマのオタク。

飛鳥に馴れ馴れしくて図々しい。

ほとんど一致してしまっていた。


( にしても飛鳥様とは月とスッポン。

あの子がイライラするのも分かる。 )


じっと見続けていると目が合ってしまう。


「 あっ、すみません…… 。 」


美紀が謝ると直ぐに目を反らす。

全く気にせずにまたゲームを始めてしまう。

感じが悪く見える。

席に座りコーヒーを頼み、ゆっくり飲んでみる。


( うわぁっ! 結構苦い!!

ミルクと砂糖いらないって言ったから、調整も出来ない…… どうしよう。 )


コーヒーが苦手で飲みにくそうにしていた。

屯平はトイレに行こうと美紀の席の前を通りすぎる。

少しして席に戻っていった。


美紀の席に飛鳥がやってきた。


「 お客様、楽しめて頂けていますか? 」


「 あっ! はい…… 美味しくて。 」


また嘘をついてしまう。

飛鳥はニコッと笑いミルクと砂糖をテーブルに置く。


「 もし良ければ入れてと美味しいので是非! 」


飛鳥は苦いコーヒーに悪戦苦闘してるのに気づき、砂糖とミルクを持ってきてくれたのだ。


「 ありがとうございます…… でもどうして分かったんですか?? 」


飛鳥はクスりと笑う。

そして耳元で小声で話す。


「 後ろの席のお客さん、俺の友達でして。

偶然飲むの苦戦してるの見えたらしくて。

だからお礼は後ろのあいつにして下さいな。 」


さっきトイレ行く途中に見て、飛鳥に伝えていたのだ。


「 それでは失礼致しますね。 」


そう言い下がって行った。

美紀は直ぐに屯平の席へ行く。


「 さっきは…… ありがとうございます。 」


ゲームをやりながら横目に見る。

返事もせず相手にもされない。


「 砂糖とミルク…… 店員さんに言ってくれたんですよね? 」


「 別に…… 。 」


お礼を言ったのに愛想が悪い。

美紀はその姿を見て変な人だと思う。

でも優しい人なのは分かった。


「 向かい側に座っちゃいますね。 」


積極的に向かい側の席に座る。


「 はっ? まぁ…… 勝手にして。 」


美紀は社交的。

出会いを大切にしている。

折角接点が出来たのなら、少しでも話をしたくなっていた。


「 私は芳賀美紀って言います。

大学生です。 」


話すとゲームをしててまた無視されてしまう。


「 あなたのお名前は何て言うんですか? 」


質問しても返事が返って来ない。


「 二宮屯平! 俺のタメなんだよ。 」


飛鳥が隣に座ってきた。

他のお客さんも居なくなり、ゆっくり屯平の相手をしようとする。


「 屯平…… 変な名前。 」


屯平と言う名前は珍しい。

飛鳥は笑いながら。


「 そうだよね、あははは。

良く学生の頃は豚平ってバカにされててさ。 」


子供の頃の名前いじりの話をした。


「 俺も別に気に入ってない…… 。 」


機嫌を悪くしてゲームを中断して立ち上がる。


「 おい、何処行くんだ? 」


飛鳥が引き留めようとする。

屯平は一言…… 。


「 他の喫茶店…… 。 」


そう言い残し出ていった。


「 ごめんなさい…… 私のせいですよね? 」


美紀が謝ると飛鳥は頭を横に振る。


「 あいつが子供なだけさ。

屯平は…… 重度の女性恐怖症なんだ。 」


「 恐怖症?? 」


女性と話すとき上がってしまったり、目を絶対に合わせられない。

密室空間に二人で居ると心拍数が早くなってしまう。


「 昔いじめられてからなんだ。 」


内容はあまり教えてくれなかったが、複雑な理由があるのだと察した。


「 なら私に任せて下さい!!

私が友達第一号になってあげます。 」


飛鳥の力になりたくて提案をした。

飛鳥は嬉しそうに美紀の手を握った。


「 本当かい!? ありがとう…… 。

凄い助かるよ、本当にありがとう。 」


嬉しそうに顔を近づけて来る飛鳥の顔を見れずに、恥ずかしそうに違う所を見る。


「 ははは…… はい、喜んで! 」


美紀は屯平の友達? になる事にしたのだった。


その頃、屯平は違う喫茶店の前に来ていた。


( 入りにくい…… おしゃれ過ぎる。

もっとボロくて気を遣わないとこないかな。 )


なんやかんやで何時間かすると飛鳥の喫茶店に帰って行った。

一人で飲食店に入るには敷居が高く、誰かと一緒じゃないと入れないのだった。

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