第9話 ある日の日曜日


日曜日は仕事がお休み。

昼まで寝たりとか、買い物行ったり何をするのも自由。

そんな休みは何をするのか?

屯平は喫茶店に居た。


「 はぁーーっ、折角の休みなのにどうしてこんな店に来なくちゃいけないんだか。 」


飛鳥が休日出勤で仕方なく来ていた。


「 ごめんよ…… 急に腰を痛めてしまって。 」


マスターが腰を痛めてしまい、急遽日曜日に入ることになってしまったのだ。


「 マスター、何も気にしないで下さい。

どうせ大した予定もありませんでしたし。 」


「 うぉいっ!! 何普通な顔してディスってんだよ。

今日は秋葉原に遠征して、中古のゲームを買い漁る予定だったろ。 」


いつでも出来る事より、大変なお店を手伝う事にした。

屯平は仕方ないのは分かっていた。

それでも楽しみにしていたから怒っていた。


「 …… つまんねぇ。

ちょっと買い出し行ってくる。 」


少しでも気分転換に外に出ていった。


「 飛鳥先輩は休んでも良かったんですよ? 」


愛理が言うと頭を横に振る。


「 そう言う訳にはいかないよ。

まだ愛理ちゃんはコーヒー入れられないし、ここは軽い軽食も作らないといけない。

楽しみに来ているお客さんを悲しませたくないからね。 」


マスターの事からお客さんの事まで、気にする飛鳥を心から好きになっていた。

そして少しでも仕事量を減らさせてあげたくて、少しずつだけど練習もしている。

マスターは奥でゆっくり休んでいた。


( 今はマスター居ないから二人きり。

何か色々ドキドキするな…… 。 )


愛理は働いてる飛鳥を見ながらドキドキしていた。


一人宛もなく歩いている屯平。

映画でも見ようかと思ったが、一人だと何か調子が出なかった。


( つまんない…… つまんない。 )


一人で公園の周りを歩いていた。


お店に一人のお客さんが。


「 いらっしゃいませ。

お好きな席へどうぞ。 」


お店に来たのは麻理恵だったのだ。

店内をキョロキョロして何かを探している。


「 ここから見えるのかな…… ? 」


屯平のお気に入りの席を見つける。


「 あ…… ここからあの公園の池も見える。

絶対ここだ…… やっと見つけた! 」


嬉しそうに座る。

そして愛理からお冷やを貰う。


「 飛鳥先輩…… あの女性…… 。

凄い可愛い人ですね。 」


「 本当だね 、何か凄い周りをみたりしてる。

待ち合わせでもしてるのかな? 」


麻理恵がカフェオレを注文して、飛鳥が作り運んで行った。


「 いらっしゃいませ、こちらがカフェオレでございます。 」


「 ありがとうございます、良いお店ですね。 」


そう言いながら景色を眺めてカフェオレを飲む。

美味しそうにニコニコしている。

それを離れた場所から見ている二人。


「 可愛いからタレントって言われたら絶対信じちゃうくらい可愛い。

あんなに目も大きくて。 」


愛理は嫉妬していた。

可愛い子が来ると飛鳥が一目惚れしないか心配になる。

飛鳥の顔色を伺うと、いつもと何も変わらなかった。


ガシャンッ!!

お皿を床に落として割れてしまう。


「 すみませんでした。 」


飛鳥が落としてしまったようだ。


「 大丈夫ですか?? 」


「 …… うん大丈夫だよ。

少しだけめまいがしただけ。

もう大丈夫だから。 」


そう言って直ぐに割れた皿を片付ける。

少し心配だったけど、飛鳥が大丈夫だと言うのを信じた。

ただ少し疲れたのだと。


「 店員さーーんっ、ちょっと良いですか? 」


麻理恵が手を上げて呼んでいる。

直ぐに愛理が行く。


「 店員さん凄い綺麗ですね。

大学生ですかぁ?? 」


麻理恵はぐいぐい近寄って来る。


( 綺麗?? 何言ってるのよ。

私は沢山メイクして普通くらいが精一杯。

それに比べてあまりメイクしてるように見えないし、髪だって凄い綺麗…… 。 )


愛理は劣等感を感じていた。


「 大学生です…… バイトしてます。 」


「 へぇーー そうなんだぁ…… 。

ここに髪の毛クルクルしてる、物静かな男性って居ますか? 」


愛理は少し考えたけど思い当たるのは、屯平くらいだった。

だけど絶対違うと思った。

あんなオタクがこんな綺麗な人と、知り合いなはずないと思ったから。


「 いいえ…… 居ないです。 」


「 そうかぁ…… 違ったのかな…… 。 」


( 知らないと言ったら凄く悲しそうな顔をしてしまった…… 。

こんなに綺麗な人に思って貰える人なんだから、多分凄く素敵な人なん…… 。 )


「 たらいま…… 。 」


そこにやって来たのは屯平だった。

直ぐに麻理恵は立ち上がり屯平の所へ駆け寄る。


「 せぇーーんぱい! 」


「 ん?? 」


やっぱりクルクル髪は屯平だった。

愛理はまた屯平の事が嫌いになった。


「 この喫茶店探したんですよ。

会社の周りとか色々。

でもネットで調べたらここかなって。 」


わざわざ顔を近づけて話したくて、少し背伸びをして話をしている。

逆に屯平は距離を取りたくて顔を横に向ける。


「 そうなんだ…… 。 」


素っ気ない返事をした。

悪気はない…… 良い返答が思いつかないだけだった。


「 先輩も座って下さい。

一緒に付き合って下さいよ。 」


素っ気ない返事に慣れていた。

悪気が無いことも。


「 …… うん。 」


そう言うと手を引っ張られて座った。

ニコニコしている麻理恵とは正反対に、屯平はおどおどして落ち着きがなかった。


「 初めまして、屯平の友達の白岩飛鳥です。

屯平とは知り合い何ですか? 」


「 はい、会社の後輩です。

飛鳥さんって凄いイケメンですね。 」


何でもズバズバ言えちゃうのも麻理恵の良いところ。


「 全然そんな事ないですよ。

コイツかなり口下手ですけど、どうか宜しくお願いします。 」


深々と頭を下げた。

直ぐに屯平は止める。


「 何恥ずかしい事してんだよ!

いつまでも…… 子供扱いすんな。 」


「 あはは、悪い悪い。

どうしても嬉しくてな。 」


飛鳥は嬉しそうに話した。

その光景を微笑ましく見ている。


「 はい勿論です!

先輩は私が面倒見ますから!! 」


「 それなら安心だ。

あははははっ。 」


飛鳥は凄く嬉しそうだった。

少し話したので席を離れようとすると。


「 …… 飛鳥、具合悪いなら病院行けよ。 」


飛鳥は屯平に言われるとニコッと笑った。

愛理は驚いてしまった。


「 先輩…… もしかして…… 調子悪いんですか? 」


「 うん…… ちょっとね。

あいつには隠し事出来ないな…… 。 」


愛理は離れている屯平を見る。

今日一緒に居た時間は自分の方が長いのに、少し一緒に居ただけで具合が悪いのが分かった。


( 何よ…… 何よ…… 。

偉そうにして…… でも。

少ししか見てないのに分かるの…… 凄い。

それと同時に羨ましいな。

私ももっと早く気づきたい。 )


愛理はそう思った。

一緒に居た時間の長さはどうやっても追い付けず、嫉妬するばかりだった。


「 先輩、先輩…… おすすめはなんですか? 」


「 パンケーキ…… 。 」


二人は飛鳥のパンケーキを食べる。

美味しそうに食べながら、屯平に感想を言ったりしていた。

屯平の返事は一言ばかり。

でも話題はずっと麻理恵が出していた。


「 先輩そろそろ私帰りますね。

良い場所教えてくれてありがとうです。 」


そう言いお会計に。

屯平はお会計してる間も手を振られても、頭をペコペコするだけだった。


麻理恵が店を出て駅に向かっていると。


「 ちょっと待って!! 」


飛鳥が走って追いかけて来た。


「 あれ? お釣り間違えてました? 」


「 はぁはぁ…… そうじゃないんだけど。

屯平の事…… 宜しくお願いします。 」


深々と頭を下げる。


「 あいつ…… 色々と面倒だけど、麻理恵ちゃんが話かけてくれて凄い喜んでると思うんだ。

だから…… だからこれからも仲良くしてやって欲しいんだ。 」


友達の為に頭を下げてまでお願いしていた。

麻理恵は笑いながら。


「 飛鳥さんって本当優しいんですね。

任せて下さいな、面倒見てあげますよ。 」


そう言うと飛鳥は笑っていた。

麻理恵も手を振りながら帰って行った。


その頃店では愛理が屯平の席に来ていた。


「 本当あんたって口下手で見てるだけで腹立って来るんですけど? 」


「 うるせぇ…… 。 」


夜になり帰り道での事…… 。


「 今日は悪かったな。 」


「 気にするなよ…… お互い様だ。 」


麻理恵への優しい対応を感謝していた。


「 明日…… 明日秋葉原行こうか?

仕事早めに上がるからさ。 」


「 ああ、行こうか。 」


二人は約束して別れた。

飛鳥は大きく手を振っている。


( この約束が果たされる事はなかった。

俺が飛鳥を見た最後の姿だった…… 。 )

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