概要
いまだ幕末の昏さを残す、帝都郊外。
瑞香は町外れの、小さな貸本屋のひとり娘。
生まれつき身体が弱い彼女は、店番をしながら少しずつ物語を綴り続けてきた。
あるとき、憧れの作家に送った原稿が文芸同人誌に掲載されることになった。
ああ、冬には、あの文士さまと、同じところに……。
だが、彼女は知っていた。
身体は秋までもたないと、医者が言っていることを。
生きたい。生きていたい。
はじめて心から願う彼女に、父親はある決断をした。
瓦斯灯がほのかに照らす明治の夜を。
巨大な月が運命を削りだす、激動の時代を。
そのあやかしは、生まれ出でて、跳んだ。
ねえ、あたしの喉を噛み切っておくれよ。
あんたの肝を喰ろうてやるからさぁ。
おすすめレビュー
新着おすすめレビュー
- ★★★ Excellent!!!是非、読んでみられて下さい。お願い致します( ;∀;)
カクコン9が終盤に差し掛かりました。だから、僕はこのレビューを書いています。
「皆様、是非、この素晴らしい物語を読んでみられて下さい」
こんなお願いを思わず書いてしまう事を、どうかお許し下さい。
この一か月以上の間に数々の作品がカクヨムの世界に生まれて来ました。そのどれもが作者様の、熱い想いと、強い決意と、そしてとてつもない「書く」苦しみを伴ない、時間に追われながらも、心おらずにとにかく懸命に綴られていると思います。
だから僕にできる事は「応援」する事!
レビューって、客観性とか、物語の根幹的な想いとか、取り扱うテーマとか、そんな筆者様の大切な「何か」を掴む事も大事だけど、こちらの…続きを読む - ★★★ Excellent!!!文字から世界が見えるよう。声と匂いまで。
第2話にして、もうレビューコメントを書いております。
それくらいの衝撃を受けました。
ストーリーはまだはっきり分りません。だってまだ2話までしか読んでないから。
でも、一語一句が。台詞が。ちゃんと綺麗に共鳴し合って一つの世界を作っているんです。
妖のほの暗い世界と、人が作り出したガス灯の、橙色の明かりが共存した世界。
それが、文章を通してブワッと目の前に広がります。
なんなら本屋の埃と黴と、古い木造建築の匂いまで漂ってきそうな。
四の五の言わず、とにかく読むべし。
ええ、読んで下さい。
私も引き続き3話から読み進めます!
オススメ!
追記:
読み終えました。
私、沈丁花の香り知らないんで…続きを読む - ★★★ Excellent!!!濃い闇の奥で、しゃなりと咲くは沈丁花
明治時代、文士、あやかし。
そのキーワードに期待してページを開いた者を決して裏切らない、濃淡の際立つ、あでやかな物語。
独特の語り口を持つ作家様の筆致が、時代を感じる情景と、キャラクターたちの台詞にこれでもかとマリアージュしております。
文士の遊楽先生は、文句なく完璧に素敵ですし、キャッチコピーで「あたしの男に、手ぇ、出すんじゃねぇ」と啖呵を切っているあやかしさんは、しなやかで危うくて強い。
他にも魅力的なキャラクターが目白押しな中で、ヒロインの瑞香さんが、ひたすら戸惑いながらも、前を向こうとする姿が、個人的にものすごくキュンなのです。
また、こちらの作品はコメント欄で、有志による二次…続きを読む