人質同然に元敵国の将軍の屋敷で暮らすエル。そのモットーは貴族の娘らしからぬ、独立独歩、自給自足。むしろ実家にいた頃より楽しいかも!その前向きな明るさに魅了されます。
軽妙な語り口で、必要以上に深刻にならず、でも時に重荷を背負った人間の悲しみや寂寥感を醸し出す文体。たとえて言うならばジンジャーや山椒が隠し味の大人のクッキーでしょうか。ウイスキーと楽しみたくなるような。リディス将軍の人となりがまだあまり明らかになっていませんが、彼にも何か忘れられないお菓子の思い出などがあるのかもしれませんね。エルと絡む中で、明らかにされてゆくのも楽しみどころの一つだと思います。
カクコン期間中ということで、公開済の14話の半分まで読ませて頂きました。ぜひ、コミカライズ実現させて下さい。応援しています。
エーレアンヌ・リットヴァルデン・リジオという貴族名を失い、新たに下働きのエルとして、元の敵国の将軍であるリディス・ルキソエールに仕えるようになって半年。
継母にいじめられ、自分のことは自分で出来た彼女。食事が与えられない代わりに、処分される小麦粉や砂糖が与えられた。
こんなに立派な食材なのに、処分なんて勿体ない!
そのお菓子の腕前はすっかり噂になり、今ではお茶会まで開いてしまうほど。
そんな彼女のもとに、リディスがやって来る。
お茶会を咎められていると思っていたエルだったが、リディスにはある秘密があった。
誤解されやすい将軍×怯えつつも権力に屈せず言いたいことを言う炭焼き。
スイーツを通して交流する二人は、果たしてどうなっていくのでしょうか。
面白いです。
僕は第2話を読んだ段階で思わず楽しくなりました。
こちらの物語を強く皆様にご推薦させて頂きます。
さて、何が面白いのか? ネタバレにならずにご説明させて頂きます。
まず、ライトノベルや一般エンタメ小説、さらには大衆文学に純文学(ちと大袈裟かな)まで、「何をもってして面白い」のか。この問いに応える事は物凄く難しい事であるし、また物凄く簡単な事でもあります。僕の個人的見解で言わせて頂ければ、
「先が読めない事」
これが「面白さ」です。実に単純で明快で、これが真理です。
ある程度の読書量を越えた方ならご理解頂けるかとは思いますが、小説とは経験値があれば筆者の文脈的なセンスを予想し、その先の展開、下手をすれば次の行に書く内容ですらある程度はわかります。それは一般文芸の起承転結であったり、純文学が好む独特の視点や思想であったりですが、なんとなくわかっちゃいますよね?
とは言え、そう言う所を理解して新しいモノを書こうとして、「尖った方向」や「極端な内容」に行きがちなのも一般的な書き手の方には多いのですが、僕はどうしても「ネタ」に見えてしまって興ざめします。
これはあくまで個人の見解ですが、極上の小説のひとつ(敢えて多くの中のひとつ)の形は、
「先が読めそうで何かが違う」、というモノです。
そういうほんの「僅か」をまるで料理の隠し味を自在に操る様に、文脈や展開に忍ばせる、それこそ「興味」と「面白さ」を両立出来ているのではないかと考えています。
さて、こちらの物語。
僕はとても「面白い」と思いました。第2話の段階で「もう、傑作だ」と思っています。
だから、強くお勧め致します。
まだこちらの物語に気づかれてない方があまりに多いのですが、ぜひ一読されて見て下さい。筆者様の極上の手腕が随所に垣間見え、この先が楽しみな傑作でございます。
皆様、宜しくお願い致します( ;∀;)