機獣バトルトーナメント

第22話 機獣バトルトーナメントの知らせ

 それからというものティナは学業に励みつつ、アルバス先生の元での特訓も受ける日々を一ヶ月ほど続けてた。


「へー、アタシが知らない間にティナも頑張ってたんだー」

「うん、アイラちゃん。なかなか前に進めてないけどね……」


 授業の合間アイラの隣で廊下を歩くティナは、相変わらず後ろ向きな発言をする。


 そんな彼女の肩に腕を回してアイラが励ました。


「まあまあ、ティナならきっとできるって! アタシ信じてるよ!」

「アイラちゃん……! うん、わたし頑張る!」


 平らな胸の前でぐっと両腕を構えて燃えるティナに、アイラはにっと笑う。


「その意気だよティナ!」


 そんな会話をしながら更衣室で学生服から耐Gウェアに着替えた二人は、校庭へ向かった。


 そこでまず実技の担当であるバスター先生が、クラス全員にこう告げる。


「授業の前にお知らせだ。今度の週末に本校主催の機獣バトルトーナメントが開催されることは知ってるな?」

「はい!」


 バスター先生の言葉に、クラス一同は元気良く返事をした。


 機獣バトルトーナメント、それは選抜されたウォーリアーたちがトーナメントで実力を競い合う競技である。


「この競技で一年生から出場する代表三名を指名する。マリア・ヒラリー」

「ま、当然ですわ」


 バスター先生に呼ばれるなり、起立したマリアは縦に巻いた紫の髪をかきあげて自信を表明。


「アイラ・ウタハ」

「はいっ!」


 呼ばれたアイラが元気良く起立する後、バスター先生が最後に指名したのは。


「ティナ・ララミリア」

「ふえっ、わたし!?」


 予想もせずすっとんきょうな声をあげたティナであった。


「以上三名が一年生からのエントリーだ。呼ばれた者は気を引き締めて機獣の操縦技術を磨くように。話は以上だ」


 そんな発表から始まった実技の授業は過ぎていき、あっという間に昼休みとなる。


 食堂でアイラと待ち合わせしていたティナは、そこでサンドイッチをつまむことにしたのだが。


「…………」

「ティナ、おーい」


 サンドイッチを手に持ったままポカーンとするティナの目の前でアイラが手を振る。


「はっ! ごめんアイラちゃん!」


 するとティナは我に返ったようにビクッと反応した。


「アタシは別にいいんだけどさ。そんなにトーナメントの代表に選ばれたのが意外だった?」

「だってわたし、ゴウレックスに乗れるようになってからまだ一ヶ月くらいしか経ってないんだよ!?」

「でもそのゴウレックスがめちゃ強いんじゃん! 選ばれて当然っしょ!」

「そうかなあ……?」


 ハキハキとしたアイラに対し、ティナはまだ浮かない顔。


「とにかくっ、せっかく選ばれたんだからお互い頑張ろうよ!」

「そうだね」


 これを機にティナはより一層ウォーリアーとしての練習に励むようになり、そして迎えた週末。



『やって参りました、学園のスタジアム! さあ、選抜ウォーリアーたちの入場です!』


 アナウンスと共に各学年から選抜された生徒たちが集うのは、校舎に隣接する巨大なスタジアムだ。


「改めて見るとやっぱり大きいね……」


 スタジアムの広さに改めて圧倒される彼女のそばで、ウズウズしているのはアイラだ。


「う~っ! もうワクワクが止まんないよー! 目指せ、優勝!」


「――ウタハさんもやる気十分みたいですわね」


 腕を振りあげたアイラの後ろから声をかけてきたのは、同じく選抜ウォーリアーのマリアである。


「あ、イインチョー!」

「委員長も派手な耐Gウェアを着ているんだね。ちゃんと見るの初めてだよ」

「おーほっほ! ヒラリー財閥の令嬢足るもの当然でしてよ~!」


 手をあごに添えて高笑いするマリアは、アイラの最新型とも違うフリルがふんだんにあしらわれたドレスを思わせるデザインの耐Gウェアを身にまとっていた。


 ちなみに選抜ウォーリアー以外の生徒たちは皆観客席で見物である。


「確か八人が選抜ウォーリアーなんだっけ。どんな人がいるんだろう?」

「各学年から選ばれているだけあって、どのお方も手練れではございますわ。その中でもあの方は別格かと」


 マリアが指差したのは、すらっとした長身で黒髪の女子生徒だ。


「あの人って確か……!」

「そうですわ、ウタハさん。イザベラ・ティーガー、この学園でも最強との呼び声が高いお方ですわ」

「イザベラ・ティーガー……!」


 ティナがおどおどと目を向けるも、イザベラは気づいていない様子。


「でもっ、最強はティナとゴウレックスっしょ!」

「そ、そうかなあ……?」

「最強かはさておきララミリアさん、わたくしと当たるまで敗北は許しませんわよ」


 そう言って拳を突き出したマリアに、ティナは顔を上げて拳を突き返した。


「もちろんだよ、委員長! わたしたちだってすごい頑張ってるんだもん!!」

「アタシも負けてらんないな~! お互い頑張ろっ!!」

「うん!」

「ええ!」


 そんな感じでお互い闘志を燃やしていると、スタジアムの方からアナウンスが流れてきた。


『ただいまより機獣バトルトーナメントを開始します!!』

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