決闘、そして暴君とのシンクロ

第7話 新たな火種

 翌日ティナがクラスに入るなり、他のクラスメートと話していたアイラがやってくる。


「あ、ティナー! やっほー!」

「おはようアイラちゃん」

「ねえねえ! 今日からティナも実技の授業受けられるんでしょ? アタシも混ぜてよ~!」

「う、うん。いいよ」

「やったー! やっぱ持つべきものは友達だね!」


 フランクなアイラに腕を肩に回されて、ティナは嬉しさ半分戸惑い半分であった。


 それからも授業の合間でアイラが構ってくるものだから、ティナは途中から周りの目が気になり始める。


(わたしなんかが人気者のアイラちゃんと仲良くしてもいいのかな……?)


 そんな不安を抱えつつ実技の授業を向かえるところで、ティナはアイラと一緒に格納庫へ歩いた。


「おっはーキー坊! いい子にしてた~?」

「グーギュルルル!」


 アイラの挨拶にキー坊が元気よく鳴いて応える。


「やっぱりアイラちゃんってキー坊ちゃんと仲良しなんだね」

「えへへ、でしょでしょ~?」


 キー坊に顔を擦り寄せられてはにかむアイラを見て、ティナはゴウレックスのいる方へ顔を向けた。


(それに比べてわたしは……)


 他の生徒を見てもそれぞれの機獣といい関係を築いているものだから、なおさら自分の遅れをティナは感じてしまう。


 そんなティナの肩にアイラが手を置いた。


「それじゃあゴウレックスのとこ行こっか!」

「う、うん」


 そしてアイラと一緒にティナが向かうと、ゴウレックスは静かに鎮座している。


「ゴウレックス……」


 恐る恐るティナが歩み寄ると、ゴウレックスは顔をおもむろに向けた。


「ドゥルルルル」

「ゴウレックス、わたしでいいの?」


 不安げな問いかけをするティナに、ゴウレックスは顔を寄せてコックピットハッチを開ける。


「これってティナをちゃんと認めてるってことじゃん! すごいよティナ!」

「そっか……!」


 ゴウレックスの従順な態度とアイラの励ましに元気付けられて、ティナはそのコックピットに乗り込んだ。


「んんっっ!」


 背後から伸びてくるケーブルと耐Gウェアが接続したとき、またしても快楽と僅かな痛みを混ぜた不思議な感覚が全身を迸り、ティナは身体をのけ反らせる。


「そうだ、わたしはゴウレックスと繋がってるんだ……!」


 コックピットハッチが閉じたところで、ティナはゴウレックスを前進させて格納庫から出した。


「ティナー!」

「アイラちゃん!」


 ゴウレックスに乗るティナの元に、アクセルラプターのキー坊に乗るアイラがやってくる。


「ちょっと遅れてるところあるけど、大丈夫かな……?」

「心配ないよ、アタシも練習付き合うからっ!」

「アイラちゃん……ありがとう」

「いいってことよー!」


 モニターの通信越しにやり取りをするティナとアイラ。


 こうしてティナはアイラの手助けのもと、初めての実技の授業を受けたのだ。


 実技の授業も順調に進んで、青い学生服に着替えたティナとアイラの二人は廊下を歩いている。


「やっぱ心配いらなかったね、ティナってばセンスいいじゃ~ん!」

「えへへ、そうかなあ?」


 アイラに腕を肩に回されて、ティナもはにかんだ。


「これでゴウレックスとも繋がれたんだよね」

「うん、そうに決まってるって!」

「おーい、アイラ~」

「あ、呼ばれたからちょっと失礼するね。また後で~!」


 別のクラスメートに呼ばれるなりアイラが離れると、ティナは少し寂しさを感じてしまう。


「やっぱりアイラちゃんは人気者だから、わたし以外にも仲良しな友達がいるんだよね。それに引き換えわたしって……」

「――ララミリアさん、少しよろしくて?」


 ティナがうつむいてると、突然誰かから声をかけられた。


 顔を上げると、目の前に薄紫色の髪を縦ロールに巻いたお嬢様然とした少女と取り巻き二人が立っている。


「あれ、確か学級委員長のヒラリーさんだよね」

「その通りですわ、アナタみたいな地味~なお方にも覚えてもらえて光栄でしてよ」


 偉そうなこの少女の名前はマリア・ヒラリー、指折りの大企業であるヒラリー財閥の令嬢だ。


「あの、ヒラリーさんがわたしなんかに何の用でしょうか……?」

「単刀直入に申し上げますわ、あんまりウタハさんとべったりするのはお控えなすって」

「アイラちゃんと……?」


 目を丸くするティナに、続けて刺々しい言葉を投げかけたのは取り巻きの少女二人。


「地味なクセに人気者のウタハさんと仲良くなろうだなんて文不相応っす!」

「そうデス! ちょっと珍しい機獣を手に入れたからって、いい気になるんじゃないデス!」

「そ、それは……」


 取り巻きの二人になじられたティナはすっかり萎縮してしまう。


「そういうことですの、ララミリアさんも身の程をわきまえてウタハさんと節度を持った関わりを……」

「――アタシがどうかしたの?」


 そこへひょっこりと戻ってきたのはアイラだった。


「あ、アイラちゃん!」

「ま、まさか本人がお出ましになるとは思いませんでしたわ。でもこの際どうでもいいですわ」


 深呼吸するとマリアはビシッ!と指差してアイラにもの申す。


「ウタハさん、あなたはクラスでも一番の人気者ですの。だからそんな地味なのと関わる必要は……」


「ねえ、それってティナのこと……?」

「ひっ!?」


 ティナをけなされたことで静かに怒りを燃やすアイラに、マリアは怖じ気づいた。


「誰と仲良くしようとアタシの勝手じゃん! なんでイインチョーにあーだこーだ言われなきゃなわけ!?」

「わ、分かってませんわね! アナタがそんな地味なのとばかり仲良くしてたら、クラス内で不満が膨らみますの!」

「そんなのアタシ知らないもん!」


 視線でバチバチと火花を散らすアイラとマリアに、渦中のティナはオロオロとするばかり。


「そこまで申し上げるなら、決闘ですわ! わたくしがアナタ方二人の相手をして差し上げますわ!」

「言ってくれるじゃん! こうなったらアタシとティナで相手してやるんだから!」

「え、ええ~!?」

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