第20話 荷電粒子砲
シティーアイランドを駆け回るアイラは、すぐに街角でたむろする中型ゴリラパラドクスを発見する。
「いたいたっ!」
見つけるなりアイラの操縦でキー坊がビームガンを連射すると、中型ゴリラパラドクスの注意がこちらに向いた。
「さあこっちこっち!」
「グーギュルル!」
キー坊が背を向けて挑発するように尻尾を振ると、中型ゴリラパラドクスはまんまとそれに乗って追いかけ始める。
「ほらほらー!」
そんな感じでビームガンで射撃をしながら中型ゴリラパラドクスの注意をひいていくアイラは、通信をリコリスとルーテシアの二人に繋いだ。
「リコリー、ルールー! そっちは調子どう?」
「こっちはうまくいってるわ」
「こっちも」
「よーしっ、それじゃあこのままパラドクスたちを集めよっか!」
「「おー!」」
一方ティナとゴウレックスは開けた一本道を見据えて荷電粒子エネルギーをためているのだが。
「あれ……、なんかたまりが遅いような……?」
ティナの感じる通り、大きく開かれたゴウレックスの口にある砲口に凝縮する荷電粒子エネルギーが半ばからなかなかたまらないのである。
「どうしよう、このままじゃ……! アイラちゃんたちがパラドクスの気をひいてくれてるのに!」
仲間たちの頑張りを考えるティナは独り焦燥を抱えていた。
さらに悪いことに先程まで動きが止まっていたボスゴリラパラドクスが、再び動き始めたのである。
「ルルルオオオオオ!」
ボスゴリラパラドクスの背中に大型のミサイルが顕現し、チャージ中のゴウレックスに向かって放たれた。
「そんな!」
荷電粒子エネルギーのチャージ中で足元を固定しているため回避もできないこの状況に、ティナが目を背けた時。
「……あれ?」
ゆっくりと目を開けると、三体のビートボーグがビームガンでミサイルを撃ち落としていたのだ。
「ララミリアさん!」
「その声は、クラフト君!?」
そう、ここに飛んできたビートボーグ三体は最初ゴウレックスが暴走したときに止めてくれたクラフトたちが操縦していたのである。
それだけではない、通信を届けたのは意外な人物だった。
「ララミリアさん、聞こえまして!?」
「その声は、委員長!?」
「うちのクラスで有志を募り、
そう、以前決闘で戦ったマリア・ヒラリーだったのである。
「委員長……ありがとう!」
思わぬ救援に感激しているティナに、今度はビートボーグから通信が。
「そこのデカいパラドクスはあたしたちに任せてちょうだい!」
「その間にララミリアさんは荷電粒子砲を!」
「エインさん、シュタイン君……! ――絶対に成功させる!!」
クラフトたちの援護でティナの士気が上がった次の瞬間、ノイズ混じりにこんな通知が届く。
『
「もちろんYESで!」
『
「ああんっっ!」
その途端ティナの身体にあの快楽と僅かな痛みを混ぜたような感覚が迸り、同時に耐Gウェアの色も変化した。
「――お待たせ、いくよゴウレックス!」
オレンジ色に目を光らせたティナの号令を皮切りに、ゴウレックスの口の砲口で急速に荷電粒子エネルギーが蓄積されていく。
「ティナー! お待たせー!」
ちょうどその時、アイラたちのアクセルラプター三体が街中の中型ゴリラパラドクスをこちらに誘導してきてくれた。
「ナイスタイミングだよアイラちゃん! ――みんな、ゴウレックスの正面から退避して!!」
仲間たちが射程から外れたのを見計らったティナは、発射スイッチの安全蓋を外す。
「荷電粒子砲、発射あああ!!」
ティナが発射スイッチを押すと、ゴウレックスの口からとてつもないエネルギーの奔流が放たれた。
「う、うううっ!!」
とてつもない重圧に苦悶の声をあげるティナ。
黄色いエネルギーの奔流がパラドクス全てを飲み込み、開けた海の方に向かって放出される。
そして放出が終わったとき、パラドクスたちは全て跡形もなく
「これが……荷電粒子砲……!」
あまりの威力に呆然とするティナに、今度はマリアから通信が届く。
「全く、相変わらずあなたの機獣はとんでもないですわね。これではわたくしの救援が半分意味がなかったですわ」
「あはは……なんかごめんなさい」
「あなたが謝ることではございませんわ。シティーアイランドが守られて何よりでしてよ」
どこかつっけんどんなマリアの言葉に、ティナは顔を少しひきつらせて笑った。
「ティナー!」
そこへ駆けつけてきたのは、キー坊に乗ったアイラである。
「やっぱすごいよティナとゴウレックスは! あの数を一度に殲滅しちゃうなんて、アタシも思わなかったし!」
「わたしだって想定外だよ~」
息を切らしながら受け答えするティナ。
何はともあれ、シティーアイランドは守られたのであった。
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