第19話 ボスゴリラ吠える
「……学生たちに託すのは心苦しいが……、頼んだぞ……」
自警団からのノイズ混じりな通信を受け取り、アイラたちは改めて闘志を燃やす。
「行くよ、みんな!」
「うん!」
「ええ!」
「うっす!」
アイラの号令で四人は機獣を操縦して駆け出した。
「ルルルオオオオオ!!」
「グルルルアアア!!」
大小ゴリラパラドクスが肩から小型ミサイルを発射するも、身軽なアクセルラプター三体はひょいひょいとかわしていく。
しかし30メートル近い巨体のゴウレックスは、そのミサイルをもろに受けてしまっていた。
「うううっ!」
ミサイルの猛撃による衝撃で、ティナはコックピット内で顔を歪める。
「ティナ!」
「わたしは平気、それよりもアイラちゃんたちは行って!」
「分かった!」
ティナの願いを聞き届けたアイラが、奮起してアクセルラプターのキー坊を走らせた。
「とりゃあーーーーーーー!!」
「グーギュルル!!」
走りながらすれ違いざまに背中の刃で中型ゴリラパラドクスたちを切り裂くキー坊。
「私たちも負けてられないわね! アイビー!」
「グーギュルル!」
リコリスの号令でアイビーが地面に爪を突き立てて身体を固定し、背中のガトリング砲をぶっぱなした。
「グルルルアアア!?」
「ティナっち、ここはうちらに任せて!」
「うん! ルーちゃん!」
ルーテシアの指示で、ティナとゴウレックスはボスゴリラパラドクスの元へ向かう。
「グルルルオオオオオ!!」
「ルルルオオオオオ!!」
ゴウレックスの咆哮にもボスゴリラパラドクスは怯むどころか、分厚い胸板を叩いて雄叫びを返した。
「行くよ、ゴウレックス!!」
「グルルウウウン!!」
ゴウレックスが地面を蹴って駆け出すと、ボスゴリラパラドクスは左肩のガトリング砲で応戦。
「うううっ! 耐えてゴウレックス!」
「グルルルルル!!」
浴びせられる銃弾の嵐を受けきりながら、ゴウレックスはボスゴリラパラドクスの懐に突っ込んだ。
「グルルウウウン!!」
ゴウレックスが鋭い牙の生えた強靭なあごで、ボスゴリラパラドクスの片腕に食らいつく。
「グルルルルル!!」
しかし敵の豪腕は想定以上に頑丈で、ゴウレックスの
「ルルルオオオオオ!」
その間にボスゴリラパラドクスがもう片方の腕でガンガンとゴウレックスを何度も殴打する。
「うううっ!」
重い衝撃にうめくティナだが、それにも負けず彼女は操縦桿を固く握った。
「踏ん張って、ゴウレックス!!」
ティナの叱咤激励でゴウレックスは攻撃方法を転換し、ボスゴリラパラドクスを力一杯ぶん投げる。
「ルルルオオオオオ……!」
円心状に砕け散る地面に叩きつけられてうめくボスゴリラパラドクスを、今度はゴウレックスが強靭な足で踏みつけてから再び食らいついた。
「ティナ、後ろ!」
ふと届いたアイラの警告でティナが後ろに気を向けると、中型ゴリラパラドクスが背後から一斉に飛びかかろうとしているのに気づく。
「てぇい!」
しかしティナはゴウレックスの尻尾で中型ゴリラパラドクスをまとめてなぎ払った。
尻尾の一撃で粉砕される中型ゴリラパラドクスたち。
「いっけえええええええ!!」
「グルルウウウン!!」
ティナの雄叫びに応えるよう、ゴウレックスはあごに力を込めてついにボスゴリラパラドクスの片腕を食いちぎった。
「グルルルルル……ルルルル……!」
片腕を失いその力を弱めていくボスゴリラパラドクス。
「トドメだよ、ゴウレックス!」
「グルルルオオオオオ!!」
ティナの操縦でゴウレックスがボスゴリラパラドクスの顔面に噛みつこうとした、次の瞬間。
「ドルルルオオオオオ!!」
今までとは違う大気を揺るがすボスゴリラパラドクスの咆哮に、ティナは一瞬怯んでゴウレックスを後退させてしまう。
「え、一体なに!?」
その隙にボスゴリラパラドクスが巨体に似合わぬ軽快さで後ろに飛び退き、再び雄叫びをあげた。
「ドルルルルオオオオオ!!」
分厚い胸板を叩きながらの咆哮で、シティーアイランド上空のあちこちに亀裂が走り始める。
「そんな!」
亀裂から降下してくる大量の中型ゴリラパラドクスたちに、ティナは戦慄を覚えた。
「こんな数、わたしたちでどうするの……!?」
声を震わせるティナの目前で、モニターにある文字列が表示される。
「荷電粒子砲……? これを使えっていうのゴウレックス?」
「ドゥルルル」
ティナの問いかけにうなづくよう、ゴウレックスが静かに唸った。
「ダメだよ絶対ダメ! そんなことしたらシティーアイランドが……!」
頭をブンブン振って否定するティナ、そこへアイラからの通信が届く。
「ティナ! こっちとんでもない数になってるよ!」
「アイラちゃん、……ゴウレックスが荷電粒子砲使えって言ってるんだけど……」
「荷電粒子砲って、この前の!? ――それだよ!」
何か閃いたようなアイラに、ティナは戸惑い気味に伝えた。
「でもでもっ、こんなところで荷電粒子砲なんて撃って大丈夫なのかなあ!?」
「それもそうか……ううっ!」
「アイラちゃん!?」
ティナとゴウレックスが振り向くと、中型ゴリラパラドクスのパンチで吹っ飛ばされるキー坊が目にはいる。
「アイラちゃん!」
とっさにゴウレックスを走らせて、キー坊を殴り飛ばした中型ゴリラパラドクスを一撃で噛み砕く。
「大丈夫!? アイラちゃん!」
「う、うん。アタシは平気。――そうだティナ! あそこから海の方に向かって撃てば、建物を巻き込まないで済みそうだよ!」
「それホント!?」
起死回生のアイラの閃きに、ティナが食いついた。
「うん! ほら、あそこからなら海まで一直線に開けてるでしょ!」
「本当だ!」
アイラの言う通り、今いる地点から少し離れた地点であれば海までの一方向だけが建物もなく開けているのである。
「ティナ、いけそう?」
「うん、やってみる! ゴウレックス!!」
「グルルルオオオオオ!!」
ティナの号令で移動したゴウレックスがその姿勢を変えた。
背中と尻尾の付け根の装甲を展開し、足元のアンカーを下ろして地面に固定する。
そして低く一直線になった体幹を通して大きく開け放たれた口の砲口にエネルギーが凝縮され始めた。
それと同時にアイラがリコリスとルーテシアの二人に通信を繋ぐ。
「リコリー、ルールー! シティーアイランドに散らばったパラドクス全部アタシたちでティナのところに集めよう!! そうすればゴウレックスが全部やっつけてくれるはず!」
「話は分かったわ、アイラ!」
「うちも力になる!」
三方向に散るアクセルラプターたち。
シティーアイランドでのパラドクス殲滅作戦が開始された。
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