第18話 大混戦

「こ、これは……!」


「すごい……!」


 目の前で繰り広げられる激しい戦いに、アイラとティナは口をあんぐりと開けてしまう。


 キャノントータスの背中に搭載された大口径のキャノン砲が火を吹いてゴリラパラドクスを破砕し、軽快な動きで街中を駆け回るウルフソルジャーが背中の二連装ビーム砲で敵を的確に撃ち抜いていく。


 しかしゴリラパラドクスも負けておらず、その豪腕でウルフソルジャーを殴り倒したり、肩からミサイルを発射して自警団を牽制していた。


「わ、わたしたちが加わってもいいのかなあ……?」

「そんなこと言ってる場合じゃないっしょ! ――みんな行くよー!」

「ええ!」

「うっす!」


 アイラの号令で、三体のアクセルラプターが駆け出す。


「蜂の巣にしてやるわよー!! アイビー!」

「グーギュルル!」


 アイビーと呼ばれたリコリスの青いアクセルラプターが途中足を止めて背中のガトリング砲をぶっぱなし、ゴリラパラドクスへの突破口を開いた。


「グルルルアアア!!」


「サンキュー、リコリー! そらそらそらあ~!!」

「グーギュルル!」


 アイラのキー坊が肩に装着したビームガンで牽制射撃をしながらゴリラパラドクスに接近し、背中の刃カウンターショーテルで斬りつけ。


「プリンセス、串刺しぃ!!」

「グーギュルル!」


 プリンセスと呼ばれたピンク色のルーテシア機が鋭い爪でゴリラパラドクスにしがみつき、背中のパイルバンカーで急所を的確に貫く。


「学生たちに続けぇ!!」


 アクセルラプター三体組に触発されたのか、自警団も奮起して攻撃の手を強める。


 そんな中でゴウレックスに乗るティナは、その場を動けずにいた。


「うう……!」


 ゴウレックスに乗っているとはいえ、先日の蜘蛛型よりも強そうなゴリラパラドクスとの自警団たちの激しい交戦に、ティナはすっかり気圧けおされていたのである。


「ドゥルルル……!」

「ちょっと、ゴウレックス!?」


 すると突然ゴウレックスが、ティナの操縦に関わらずおもむろに歩みを進め始めた。


「……そっか、そうだよね。わたしたちだけ怖じ気づいてるわけにいかないよね!」


 そう口にしたティナは、操縦桿を強く握りしめて叫ぶ。


「行くよ、ゴウレックス!!」

「ドゥルルル……グルルルオオオオオ!!」


 ティナに触発されたゴウレックスが雄叫びをあげて、その歩みを次第に早めた。


「いっけええええええ!!」


 声を張り上げるティナに呼応するよう、ゴウレックスがミサイル攻撃をものともせずゴリラパラドクスを次々とくわえては噛み砕いたり投げ飛ばしたりする。


「おお、ゴウレックスが来た!」

「あれがティナちゃんの機獣、すごい迫力だわ……!」

「まさに大恐竜」


 アイラたちと合流したところで、ティナが奮起した。


「みんなお待たせ~! わたしたちも戦うよ!!」

「そう来なくっちゃ! みんなでパラドクスをやっつけるぞー!」

「「「おー!!」」」


 それからはティナたちの独断場だった。


 ゴウレックスが力任せに暴れてパラドクスを圧倒し、アイラたちアクセルラプター三体組が取りこぼしを的確に撃破していく。


「……今時の学生ってすごいんだな……」


 その様子を自警団たちは黙って眺めるばかりであった。


 そしてゴリラパラドクスの数が僅かになった、その時。


「見て、あそこ!」

「わぁ、でっか!?」


 ちょうどティナたちの真上に、巨大な亀裂が生じていたのだ。


「これは来る……超でかいのが」

「ふえっ、そうなのルーちゃん!?」


 ルーテシアの言う通り、亀裂を突き破るように巨大な腕が飛び出してきたのである。


「あいつがボスだね……!」

「ええ、間違いないわ」


 そして全身を現したのは、高さ15メートルを超える巨大なゴリラのパラドクスだった。


「ルルルオオオオオ!!」


 分厚い胸板を叩きながらの雄叫びで、取り巻きの中型ゴリラパラドクスがいそいそと隊列を成す。


 そしてボスゴリラパラドクスが背中から大きなミサイルを発射すると、後方に控えていたキャノントータスたちがまとめて消し飛んだ。


「うわあああああ!!」


「まさか鉄壁のキャノントータスが、一撃で!?」


 これにたじろいだウルフソルジャーをも、ボスゴリラパラドクスは左肩のガトリング砲で次々撃ち抜いていく。


 そうこうしているうち、射程距離から外れてたティナたちを除く自警団の機獣は全滅してしまっていた。


「ルルルオオオオオ!!」


「グルルルアアア!!」


 揃って胸を叩く大小ゴリラパラドクスに、アイラは戦慄を覚える。


「何あれ、ヤバすぎ……!?」

「そんなこと言ってる場合!?」

「ここでうちらがやらなきゃ誰がやる」


 リコリスとルーテシアの叱咤激励で、アイラはなんとか立ち直ることができた。


「そうだよね、ここでアタシたちがこのシティーアイランドを守んなくちゃだよね!」

「アイラちゃん、わたしもいるよ!」

「うん! 一緒にシティーアイランドを守ろう!!」


 ゴリラパラドクス軍団と対峙する、ゴウレックスとアクセルラプター三体組。


今まさにシティーアイランドの存亡をかけた戦いが始まろうとしていた……!

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る