第14話 シティーアイランド
『間もなくシティーアイランド、シティーアイランド~』
電車のアナウンスでアイラがシュバッと席を立った。
「もうすぐだね! う~っ! 今からもう楽しみすぎるよー!!」
「んもう、アイラったらはしゃぎすぎよ」
「シティーアイランドなら何度も行ったことある」
テンション最高潮のアイラを穏やかになだめるリコリスとルーテシアの言葉に、ティナはまたしても引っ掛かってしまう。
(やっぱりアイラちゃんたちには何度も行ったことある場所なんだよね……。田舎娘のわたしなんかとは大違いだよ)
後ろ向きな思考で顔が曇るティナの肩に手を回し、アイラがハツラツとこう言った。
「今日はティナが一緒だから楽しみなんじゃーん! ねー、ティナ!」
「う、うん!」
自分といるのが楽しみと言ったアイラの笑顔が、ティナにはとても眩しく見えて。
(やっぱりわたしもアイラちゃんの友達になれてるんだ……!)
そんなこんなで最寄りの駅に着いたところで、ティナとアイラたち四人は電車を降りる。
「はわわ……、人がいっぱいだよ……!」
初めて見る規模の人だかりに、ティナは目を回してしまうようだ。
「こんなのまだ序の口よティナちゃん。シティーアイランドはもっとなんだから」
「シティーアイランド、マジ神スポット」
「それじゃあ行こーっ!」
「あ、待ってよアイラちゃ~ん!」
アイラの背中に着いて、ティナはなんとか迷わず駅の中を進んでいく。
そして駅を出てティナが目の当たりにしたのは、賑わう街並みから海の向こうにかかる巨大な橋だった。
「あのキラキラブリッジから先がシティーアイランドだよ!」
「すごい……、海の向こうに街があるんだ……!」
「感動してるのもいいけど、急がないとバスに乗り遅れるわよ二人とも」
「そうだったねリコリー! 急ごっ、ティナ!」
「う、うん!」
アイラに急かされてティナもシティーアイランド行きのバス停へ急ぐ。
「ふーっ、なんとか乗れた……!」
「見てみてティナ、あの景色を見ないと損だよ!」
ギリギリのところでバスに乗れて一息つくティナに、アイラが肩をツンツンして窓の向こうを見るよう促した。
「わあ~!」
ティナの目に映ったのは、橋の向こうで見える青い海と人工的な港の対比。
「こんな場所があるんだね~!」
多くの船が行き交う都会の海に、ティナは目を奪われてしまう。
そうしてるうち四人はキラキラブリッジを越えて、目的地のシティーアイランドに到着した。
「とうちゃ~く!」
バスのステップからピョンと飛び降りるアイラに続いて、ティナもバスを降りる。
「海の向こうにこんな賑やかな街があるんだね~!」
ティナが感動するのも無理はない、シティーアイランドはこの辺りでも有数のお出かけスポットなのだから。
「最初どこ行く?」
「何度来てもどこへ行くか迷うものね~」
「でもまずはあそこっしょ! ほら、ティナも!」
「へっ? ――ひゃあ~!?」
アイラに勢いよく手を引かれてティナがやってきたのは、巨大なショッピングモール。
「じゃーん! ここはショッピングモール【ジャスト】! ここなら何でも揃うよ~!」
「はえ~、おっきい~」
ガラス張りの内装と三次元的な奥行きに富んだ光景に、ティナは目を見張った。
「ほらほら! こんな入り口でポカーンとしてないで、行くよ!」
「待ってよアイラちゃ~ん!」
アイラの後を追いかけるティナは、まずモール内のブティックにたどり着く。
「まずはここ、キャンディーキャンディー!」
「可愛い服がいっぱいあるお店よ、ティナちゃん」
「女の子は可愛いが正義」
「ここってお洋服屋さんだよね……? なんかキラキラしてるよ……」
きらびやかに見える洋服の数々に、ティナは目がチカチカするようだった。
そんな彼女の手を引いたのは、やはりアイラである。
「ほら、ティナも可愛いの着てみなって~!」
「え、わたしが!? そんな、わたしなんか似合わないよ~!」
「そんなの着てみなくちゃ分かんないじゃんっ」
アイラに手を引かれるがまま、ティナは洋服を選ぶことに。
「ティナちゃんにはこれがいいんじゃないかしら」
「おお、さすがリコリー! 読モは伊達じゃないね!」
「毒グモ?」
とんちんかんなことを口走ってしまったティナに、リコリスが訂正する。
「読者モデルよ。私こう見えてバイトでちょっとしたモデルやってるの」
「へ~すごーい! リコちゃんすごいスタイルいいもんね!」
「やーねぇ、照れちゃうわ~」
ティナの言う通りリコリスの身体はスラッとしているうえ、出るところはしっかり出ている抜群のプロポーションなのだ。
「それじゃああなたも着てみない?」
「え、いいの? 似合うかなあ……?」
「アタシもティナの可愛い服着たとこ見てみたい!」
「アイラちゃんがそう言うなら……えへへ」
リコリスからもらった服を手に、ティナは試着室に入る。
しばらくすると着替えたティナがカーテンを開けて姿を現した。
「ど、どうかなあ?」
「「「おお~!」」」
ティナが着ているのはベージュのセーラー服にオリーブ色のミニスカートという、案外おとなしめのコーデであるが。
「似合ってる、ちょー似合ってるよティナ!」
「え、ホントに? 嬉しいなあ~」
「やっぱりティナちゃんには素朴なのが似合うわね」
「リコちゃんもありがとう! この服気にいっちゃった!!」
ティナが試着した服を買い上げたところで、一行は次の場所へ向かうことにした。
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