第15話 親友
続いて四人が足を運んだのは、可愛い内装のコスメショップだ。
「ここはコスメショップ【プリティーホーリー】!」
「ここも定番よね~」
「コスメは女の子の身だしなみにマスト」
アイラたち三人が抵抗なく入ってくなかで、ティナだけは入り口でためらっている。
「コスメだなんて、わたしには敷居が……」
「ティナー、ここのコスメを使うとホントに生まれ変わるんだよ! 騙されたと思って一歩踏み出してみなって!」
「生まれ……変わる……」
アイラの言葉に背中を押されたのか、ティナも意を決してプリティーホーリーへ入った。
「ティナにはこれがいいかな~?」
「あら、こっちの方が合うんじゃないかしら」
「うちとしてはこっちが」
(わたしにはどれがどれだか分からないのに……。みんな大人だなあ……)
キラキラとしたコスメの数々を手に取りながら吟味するアイラたちに、ティナは尊敬さえしてしまっている。
そうかと思えばアイラに連れていかれるがままティナはメイクスペースの椅子に座ることに。
「えーと、これをこうして~」
アイラの巧みなメイクで、ティナの顔は見違えるようにあか抜けた。
「これが、わたし……?」
いつもの芋っぽさはどこへやら、ティナは見るも可憐な顔立ちに。
「うんうん、すごく似合ってるよティナ!」
「やっぱり私のにらんだ通りね」
「まさに埋もれてた原石」
「みんな……! ありがとう!」
「いいってことよ!」
これに使ったコスメもティナが買い上げたところで、一向が続いて向かったのはゲームコーナー。
「ううっ、すごい音……!」
ビカビカと光る画面の数々と猛烈なサウンドに、ティナは思わず耳をふさいでしまう。
「もしかしてこういうの苦手、みたいな?」
「う、うん……あんまりこういうの経験ないから……」
「そっか。それじゃあ別のところにしよっか」
「え、いいの?」
「いいっていいって! ティナが楽しめないところに用なんてないし!」
「アイラちゃん……!」
当たり前のように自分を気にかけてくれたアイラに、ティナは思わず胸がときめいた。
「リコリーもルールーもそれでいいよねっ」
「私も賛成よ。今日はそんな気分じゃないもの」
「ちょっと残念、でも異論なし」
「それじゃあ次つぎ~!」
それからショッピングモールを出た一向は、続いてシティーアイランドの水族館へ足を運ぶ。
「わ~! 水族館、行ってみたかったんだ~!」
「ティナってこういうとこ好きそうだもんねっ」
学生証を見せて半額の入場料で入ると、早速出迎えたのは色とりどりな熱帯魚の入った
「うわ~、きれーい!」
水槽の中で優雅に泳ぐ熱帯魚に、ティナはもう釘付け。
「やっぱお魚見てると癒されるよね~!」
「あ、このお魚カクレクマノミだ! 可愛い~!」
「カクレクマノミって、昔の映画に出てたやつかしら?」
「そうそう! あの映画の主人公だったよね! わたしあの作品可愛くて好きだったな~」
熱帯魚の次に待っていたのは、トンネルのような構造を潜る大水槽。
「ふわ~! イワシがたくさーん! 見て、あそこにはサメが!」
「なんかティナちゃん、すごく生き生きしてるわね」
「こういうのって確か、水を得た魚って言うんだっけ」
巨大な水槽の中で舞踏を繰り広げるように泳ぐたくさんの魚たちに、ティナはまたしても目を奪われていた。
それからクラゲのゆったりとした動きに癒されたり、ヨチヨチ歩きのペンギンを微笑ましく眺めたりして楽しんだところで、ティナたちが足を運んだのはイルカショーである。
ショーが始まるまで少し時間があるため、ティナたちは座席を取ってしばし待つことに。
「それじゃあわたしとルーが売店で何か買ってくるから、二人は待っててちょうだい」
ウインクするリコリスの気遣いで、ティナとアイラは二人きりになる。
「やっぱりティナってこういうの好きなんだね」
「うん! 電車の中では恐竜が好きって言ったけど、きっと生き物全般が好きなんだと思う」
「そっか。……前から思ってたんだけど、そのリボン可愛いよね」
アイラの言葉でティナは頭のリボンに手を添えた。
「あーこれね。このリボンはね、小さい頃天国に行っちゃったお母さんからもらったものなんだ」
「あっ……。なんかごめん……」
「ううん! アイラちゃんが気にすることじゃないよ。でもこれはお母さんとの大切な思い出の一つなの」
「そっか」
「……ねえアイラちゃん。昨日は言えなかったことなんだけどね、昨日はこんなことがあったんだ」
ティナが昨日の出来事を話すと、アイラは難しそうな顔で考え込む。
「そっか……。ゴウレックスと一つに、ねー。……ティナはどうしたいの?」
「え、わたし? わたしは……よく分からないんだ。もちろん暴走は怖いけど、ゴウレックスともっと通じ合いたい気持ちもあるっていうか。……変かなあ?」
「ううん、変じゃないよ。アタシがティナと同じ立場だったら、キー坊ともっと繋がりたいって思うもん」
「アイラちゃん……。ありがとう」
「えへへ、こちらこそ話してくれてありがとっ」
ティナとアイラがお互い笑い合っていたところで、リコリスとルーテシアの二人が飲み物を持って戻ってきた。
「あらあら、仲のよろしいことっ」
「なんかときめきそう」
「あはは! だってアタシとティナは
そう言いながらアイラに肩を抱かれて、ティナはトクンと胸が鳴るのを感じる。
「ま、まぶだち……うん!」
そうしているうち、時間が来てイルカショーが開演した。
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