シティーアイランド・パニック

第13話 初めてのお出かけ

 アイラとのお出かけ当日、ティナは待ち合わせ場所の駅前でワクワクを抑えきれずにいた。


「アイラちゃんと一緒にお出かけ……友達……! いや~、ワクワクが止まんないよ~!」


 頬に手を添えて身体をくねらせるティナは、この日精一杯のお洒落として純白のワンピースと空色の羽織を着ている。


「今まで汚しそうだから着ないでいたけど、とっておいてよかったよ~」


 自分のおめかしを見て誉めちぎるアイラの笑顔を想像しながらティナが待っていると、ついにその時が来た。


「ティナー! お待たせー!」

「あ、アイラちゃん! ……へ?」


 手を振り返そうとしたティナは、駆けつけてくるアイラを見て絶句する。


 いや、正しくはアイラの両隣にいる知らない少女二人を見てからであった。


「アイラちゃん、その人たちは……?」


 震える口でのティナの問いかけに、アイラはにへらと笑って答える。


「あー、この二人? アタシの友達だよ!」

「と、友達……」


 アイラが友達と称したのは、青いショートカットで背の高い少女と、ちょっとだけ背が低め――それでもティナより幾分か高い――で黒髪をツインテールにした少女。

(アイラちゃんと二人きりじゃないのか……)


「あら、あなたがアイラの言ってた娘ね。私はリコリス、リコって呼んでちょうだい」

「うちはルーテシア。ルーって呼んで」


 黒く薄手のオフショルダーシャツに藍色のスキニーパンツがスタイリッシュな装いをした青いショートカットのリコリスと、黒くふんわりとしたゴスロリ服を着たツインテール――ところどころピンクのインナーカラーが見えかくれする――のルーテシア。

 ちなみにアイラはラフな黄色いTシャツにデニムのミニスカートという、快活なコーデである。


(どうしよう、みんなお洒落……。わたしだけ田舎娘みたいで場違いだよ~!)


「て、ティナです……。今日はよろしくお願いします、リコさんにルーさん……はわっ!?」


 控えめに自己紹介したティナの肩に、リコリスとルーテシアが腕を回す。


(はわわ、二人ともいい匂い~! 香水使ってるのかなあ?)

「あら、私たち同い年じゃない。アイラと同じように呼んでちょうだい、ティナちゃん」

「うちもうちも」

「わ、分かったよリコちゃんにルーちゃん」

「「それでよしっ」」


 親しく呼んだことでティナはリコリスとルーテシアの二人から解放された。


「それじゃあ四人揃ったことだし、みんなでシティーアイランドに行こー!」

「「おー」」


「お、おー……」


 リコリスとルーテシアそれからティナの三人をまとめて抱きしめたアイラが一声あげたところで、お出かけは始まったのである。


 学園の程近くにある駅から電車に乗ったティナたちだが。


「でさでさー、このアクセすっごく可愛いと思うんだよねー!」

「分かる、これ神ってる」

「私も欲しいわね~」


(ど、どうしよう。アイラちゃんたちの会話に全然入れないよ……!)


 アイラたちが話してるのは最新の流行モノ様々で、そういうのに疎かったティナには彼女たちが何のことを話してるのかさえ理解することができなかった。


 もどかしい思いのまま電車の席でティナが縮こまっていると、隣に座るルーテシアがアイラを肘でツンツンとつつく。


「アイラ、ティナがぼっちになってる」

「へ、ホント!? ――はわわわっ、ごめんティナ!」


 ルーテシアに指摘されたアイラが慌てて謝るも、ティナは軽く手を振ってなだめた。


「う、ううん。気にしないでアイラちゃん」

「そういうわけにはいかないよ! だってアタシ、ティナを放ったらかしにしちゃってたんだもん! マジ許して!!」

「だからいいってば……」


 必死で謝るアイラにティナが困惑してると、続いて話しかけてきたのはリコリスである。


「ところでティナちゃんは何か好きなものってある?」

「えーと……。強いていうなら恐竜が好きかなあ、おっきくて強くてなんか憧れちゃう。……変かなあ?」

「ううん、変じゃないよティナ! そうなるとゴウレックスとの出会いはホント運命だったんだね!」

「運命……」


 キラキラとしたアイラの瞳に、ティナは改めてゴウレックスとの出会いを思い出した。


(あれも運命だったのかな~?)


「恐竜はロマン」

「今は女の子にだって恐竜は人気なのよ~」

「そうなんだ~」


 ルーテシアとリコリスにも自分の趣味が思いもよらずうけて、ティナも嬉しくて浮き足たつ。


「それじゃあ恐竜の話にしよっか! ティナ、いろいろ教えて~!」

「任せてよ! えーとねー……」


 得意な恐竜に話題が向いたことで、ティナもアイラたちと楽しくおしゃべりできるようになったのであった。

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