第27話 一回戦第三試合

 ティナたちが控え室に戻ると、もう早速次の試合が始まろうとしていた。


『やって参りました第三試合! 赤コーナー、爆砕の暴れ牛レイジングバイソン&エバー学園一の突撃男子、ソーマ・エイト選手!』


 画面越しの中継で赤コーナーから入場してくるのは、九門の巨大なキャノン砲を背負った屈強なバイソン型の大型機獣レイジングバイソン。


「グモオオオオオオオ!」


 蹄で地面をかいた後に雄叫びをあげるレイジングバイソンの迫力に、控え室でティナが縮こまる。


「あれもすごい迫力だよ……」

「突撃戦法を得意としつつ背中の火器で中距離もカバーする、強力な機獣ですね」


 冷静にエリアが解説する中、次なるアナウンスが告げられた。


『続きまして青コーナー、漆黒の一匹狼ウルフソルジャー&エバー学園のアウトロー、ウルフ・ターバン選手!』


 実況で観客生徒のボルテージが上がるも、青コーナーは静まり返っている。


『……おや? どうやらまだ準備ができてないようですね~?』

『時間を守らないのもアウトローってことなんでしょうかねえ?』


 対戦相手が来てないと見るや、次々とヤジを飛ばす生徒たち。


「ターバン先輩って、さっき屋台のところにいたっけ?」

「そういえばそうだったね、アイラちゃん。間に合わなかったのかなあ……?」

「これは困ったことになりましたね……」


 困惑するティナたちをよそに、スタジアムではブーイングが吹き荒れている。


『このままターバン先輩が入場しないようであれば、敵前逃亡としてエイト選手の判定勝ちに……』


「――遅れて済まない」


 そこへようやく入場してきたのは、装甲を黒く塗装したウルフソルジャーだった。


「あれってウルフソルジャーだよね? なんかシティーアイランドで見たのとは感じが違うんだけど……」

「色だけじゃなくて武装も違うみたいですね」


 入場してきた黒いウルフソルジャーは、腰に小型のブースターを装着し、背中に積んであるキャノン砲もロングレンジのものとなっている。


『どうやらターバン選手間に合ったみたいですね。それでは試合開始、レディーファイト!』


 ゴングが打ち鳴らされるや否や、口を開いたのはウルフ・ターバンだった。


「エイト先輩、降参してくれないか?」

「は?」


『おっと!? ターバン選手、いきなりエイト選手に降参するよう申し出ましたぁ!』


 予想外の展開に実況含め試合を観戦してる者全員がどよめく。

 そんな状況でソーマ・エイトは怒り心頭に吠えた。


「遅れてきた奴の言うことかよそれ!? ふざけんな!!」

「もしまともに戦えばあんたの大切な機獣もただじゃ済まないだろう。そうなる前に……」

「何かと思えばずいぶん調子に乗ったこと言ってくれるな。上等だ、お前の機獣をズタボロにしてやるよ!」


 怒るソーマに応えるようレイジングバイソンが背中のキャノン砲を向けると、ウルフは落胆したように息を吐いた。


「……そうか。それならば俺たちも手加減はしない、行くぞアーロン!」

「ウオーーーーン!」


 主にアーロンと呼ばれて遠吠えをした黒いウルフソルジャーが、次の瞬間駆け出す。


『ああっとぉ! 小型ブースターも駆使してターバン選手のウルフソルジャーがレイジングバイソンに肉薄ぅ!!』

「なめんなぁ!!」


 しかしレイジングバイソンも負けじと大きな角を振るった。


「っ!」


 その大振りな角攻撃を直前でかわすウルフソルジャーのアーロン。


「へっ、回避が甘いな!」


 そこをレイジングバイソンが背中のキャノン砲を一斉放火した。


『スタジアム内が爆炎に包まれたぁ! これにはウルフソルジャーもひとたまりもないかぁ!?』

「どうだ! ――ん!?」


「――甘いのはあんたの方だったな」


『なんと! ウルフソルジャーがレイジングバイソンの背後をとっていたぁ!!』


 アーロンのファインプレーに、生徒たちが興奮の歓声をあげる。


「受けてみろ」


 ウルフがそう言うなり、アーロンのロングレンジキャノンが火を吹き、がら空きとなったレイジングバイソンの背を撃ち抜いた。


「くっ……なめやがってぇ!」


 振り向き様にレイジングバイソンが怒りの角を振るうも、アーロンには掠りもせず。


 そこからは縦横無尽に駆け回るアーロンの砲撃を幾度となくくらい、レイジングバイソンは崩れ落ちてしまった。


『試合終了~! 勝者、ウルフ・ターバン選手!!』


 決着のブザーと共に、生徒たちの歓声も頂点に達した。

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