第28話 一回戦第四試合
『さーて、一回戦も残すところあと一試合! 入場してきたのは赤コーナー、動く弾薬庫ブラックホーン&名高きヒラリー財閥のご令嬢、マリア・ヒラリー選手!!』
赤コーナーから重厚な足音を立てて入場するブラックホーンに、観客生徒が歓声をあげる。
『青コーナー、紅の牙キラータイガー&慈悲なき狩人、イザベラ・ティーガー選手!!』
青コーナーから歩み出てくる深紅の虎型機獣と中に乗ってるイザベラのアップがモニターに映し出された途端、女子生徒の黄色い声がスタジアムに響き渡った。
「きゃー! ティーガー様~!」
「見て、こっち向いてくれましたわ!」
控え室のモニター越しでも伝わる黄色い声の沸きっぷりに、アイラが一目置く。
「すごい人気じゃん、ティーガー先輩」
「かっこいいもんね~」
ティナの言う通り、イザベラの凛とした顔立ちと一つに結んだ長い黒髪がとても精悍に映っていた。
「あれ~、ティナってああいうのがタイプなの~?」
「ちちち違うよ!! わたしは別にそんなんじゃ、むしろわたし的にはアイラちゃんの方が……あっ」
途中まで言いかけてティナは、突然頬をポッと赤く染めてしまう。
「いやいや、そんなんじゃないよ!? そんなんじゃ~!!」
「ん、どうしたの?」
一方アイラは意味がわかってないのかケロッとした様子。
「――痴話喧嘩はともかく、試合が始まりますよ」
エリアの言葉でアイラとティナは改めてモニターを見ると、試合は既に始まっていた。
にらみ合う深紅のキラータイガーと漆黒のブラックホーン。
「先日こっぴどくやられましたもの、ここはさっさと勝ち上がってララミリアさんに借りを返さないとですわ!」
「おや、私はあくまで通過点でしかないと。こんな対戦相手は私も初めてだ、面白いっ」
「ガフウウ!」
イザベラがそう言うなり吠えるキラータイガーが、背中の二連装ビーム砲でビーム射撃しながら駆け出す。
しかしブラックホーンは襟飾りから展開したエネルギーバリアでそれを防いだ。
『おっと! ブラックホーンがエネルギーバリアでキラータイガーの射撃を防いでいるぞ!?』
「おーっほっほっほ! あれからわたくしのブラックホーンもカスタマイズを重ねましたの!」
「それがこの強固なエネルギーバリアか。それなら!」
すると今度はキラータイガーが回り込むように走って距離を詰めようとする。
しかしブラックホーンはエネルギーバリアを限定的に解除したところから大型ビームガトリング砲で乱れ撃ちして牽制。
キラータイガーがそれをことごとくかわすうち、周囲が弾幕で包まれてしまった。
『あっとぉ!? なんということでしょうか、ブラックホーンの射撃の嵐で土煙だらけになって見えません!』
「さて、どこから来まして?」
余裕綽々のマリア、しかし弾幕が晴れたところでブラックホーンの背中に重い衝撃が走る。
「なっ!?」
『なんと! いつの間にかキラータイガーがブラックホーンの上に乗っているーー!!』
実況の言う通り、イザベラのキラータイガーがブラックホーンの背中にしがみついていた。
「どうやら背中がお留守のようだったな」
「そんな、いつの間に……!? 確かにレーダーでは反応が……!」
『おや、これはどういうことでしょう? アルバス先生』
『ヒラリーさんは弾幕で囲った後、おそらくレーダーでキラータイガーの位置を確認していたのでしょう。しかしキラータイガーは大型機獣でありながらステルス性能も高いですからね~』
「――そういうことだ、甘かったな」
「ガルルルウ!」
キラータイガーが強靭な腕と鋭い爪で、ブラックホーンの背中の武装を叩き落とす。
「そんな!?」
「トドメだ」
そしてがら空きとなったブラックホーンの首筋に、キラータイガーが鋭く長大な牙を突き立てて決着。
『ブラックホーンのシステムフリーズにより、勝者キラータイガー&イザベラ・ティーガー選手ー!!』
判定の瞬間スタジアムはまたしても黄色い歓声に包まれるのであった。
『さて、これで準決勝へ進む選手が決まりました! 準決勝は昼休みの後、それまでしばしの辛抱を』
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