第30話 勝利を信じて
(踏み潰される……もうダメだ!)
ゴウレックスのコックピット内で目をギュッと閉じてティナが顔を背けた、次の瞬間。
「グルルウウウン!!」
ゴウレックスが操縦の範囲を超えて、振り下ろされようとしたマックスの足に食らいついたのである。
「なっ!?」
思わぬ形で自身の攻撃を受け止められて、ぎょっと目を見開くエリア。
『ああっとぉ! エレファイターの踏みつけを、ゴウレックスがそのあごで食い止めたぁ!!』
「ゴウレックス……?」
ティナが恐る恐る目を開けると、コックピット内のモニターでゴウレックスの自律的な挙動を目の当たりにする。
それと同時にゴウレックスの鼓舞が自分に伝わったように、ティナは感じた。
「――そうだよね、まだ諦めるのは早いよね! ゴウレックス!!」
声を張り上げた直後ティナの双眸がオレンジ色に染まり、マインドリンクが極限にまで高められる。
「グルルルルオオオオオン!!」
それからゴウレックスが立ち上がり際にマックスの足をくわえあげて、その巨体をスタジアムに叩きつけた。
「グルルルルオオオオオン!!」
「いっけえええええええ!!」
ティナの激に呼応して巨大な
「ううっ!」
「グルルウ!?」
「そうはさせませんよ! マックス!」
「パオオオオオオオオ!!」
マックスがさらに鼻のビームガンを発射し、ゴウレックスを後ずさらせた。
「やはり近接戦は危険ですね」
「パオオオオオオオオ!!」
距離をとらせたところでマックスが背中のレーザーキャノンを乱れ撃ち。
そして目の前は白い土煙に包まれる。
『エレファイターは中距離射撃も得意と見ました! これには火器のないゴウレックスもひとたまりもないか~!?』
「――まだだよ!」
響き渡るティナの声と共に、ゴウレックスが土煙を突き破って突進を仕掛けた。
「そんなっ!?」
虚をつかれたエリアとマックスに、ゴウレックスが食らいついて再びその巨体を押し倒す。
『おっとぉ!? エレファイターの射撃もものともせず、ゴウレックスが突撃ぃ!?』
『しかも今度は足でマックスの鼻を踏みつけて、反撃の目を潰しておりますよ! さすがはララミリアさん、成長が目覚ましいですね!』
アルバス先生の評価通り、ゴウレックスとティナは戦いの最中で成長を遂げているのだ。
「トドメだよ!」
「グルルウウウン!」
そしてゴウレックスが分厚い装甲に覆われたマックスのボディーを食い破り、その鼻が力なく崩れ落ちる。
『エレファイターのシステムフリーズ! よって勝者、ゴウレックス&ティナ・ララミリア選手ーー!! なんと、一年生が優勝候補のエレファイターを下して決勝進出ーー!!』
「グルルルルオオオオオン!!」
実況から勝利を告げられるなり、ゴウレックスがマックスを踏み台に大きく雄叫びをあげた。
「やったー! ティナが勝った~!!」
控え室ではモニターを見届けたアイラが感激のあまりピョンピョン跳び跳ねている。
一方激闘繰り広げられたスタジアムでは、ティナとエリアがお互いコックピットから降りて対峙していた。
「私の完敗です。さすがティナさんですね」
「いやー、途中まで危ないところだったよエリアちゃん。でもわたしっ、ゴウレックスを信じてみたんだ」
「なるほど。良い勝負でした」
「こちらこそだよ!」
ティナとエリアが固い握手を結び、スタジアムは歓声に包まれる。
試合を終えて控え室に戻ろうとしたティナは、行く途中で駆けつけてきたアイラに飛び付かれた。
「ティナー!! おめでとー!!」
「わぷっ、アイラちゃん!?」
その途端ティナの顔にアイラの豊かな胸の膨らみが押しつけられる。
「やっぱティナはサイコーじゃん! アタシ信じてたよ!!」
「むぷっ、アイラちゃん苦しい……」
「あっ、ごめん」
胸に顔を埋められてもがくティナを、アイラが慌てて解放した。
「でも危ないところだったよアイラちゃん。わたしだけじゃきっと負けてたと思うな」
「そうだね、ティナもゴウレックスと繋がってたんだもんね。ティナはやっぱりすごいや」
「――全くですよ。あなたは大したものです、ティナさん」
そこへ手をパチパチと叩きながら歩み寄ってきたのは、さっきまで対戦相手だったエリアである。
「あ、エリアちゃん」
「ですから、私の分まで勝ってください。約束ですよ」
「うん!」
そうしてティナはエリアと拳を突き合わせて、さらなる勝利を誓ったのであった。
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