第31話 決勝の幕開け
それからティナとアイラは控えの簡易整備スペースでゴウレックスと向かい合っていた。
「ゴウレックス、ここまでいっぱいがんばったね」
「いやー、ずいぶんボロボロになってきたねー」
アイラの言う通り、度重なる戦闘でゴウレックスの装甲は大部分が損傷している。
「ドゥルルル……」
ゴウレックスが寄せた鼻面をティナが触れると、彼女の目とゴウレックスの動力ラインがオレンジ色に光り始めた。
「わわっ、なになに~!?」
アイラがその眩しさから目を背けた直後、ゴウレックスの傷ついた装甲がみるみるうちに修復されていく。
「すごい、元通りになったじゃん!」
「あ、ホントだ。どうしたんだろう?」
「――まさかマインドリンクでこれほどの信じられない現象が起きるとは思いませんでしたよ」
そこへおもむろに歩み寄ってきたのは、先程まで解説を務めていたアルバス先生だった。
「アルバス先生!」
「いやー、大したものですよララミリアさんは。この短期間でマインドリンクをこれほどまでに高めるとは」
「アルバス先生のおかげですよ」
「うんうん。それでは今後もマインドリンクを極めて、面白いものを見せてくださいね」
それだけ言い残してアルバス先生はこの場を去る。
「アルバス先生も行ってたけど、ティナってやっぱすごいじゃん!」
「えへへ、そうかな~? ――それじゃあゴウレックス、決勝もがんばろうね」
「グルルウウウン!」
吠えて応えたゴウレックスを見届けてティナたちが控え室に戻ると、準決勝の第二試合の決着がもうついていた。
『あーっとぉ! ターバン選手のウルフソルジャーがキラータイガーに組み伏せられて死に体だー!』
実況の言う通り漆黒のウルフソルジャーがイザベラのキラータイガーに組み伏せられて、既に勝負ありといった状況。
「うっひゃー、ティーガー先輩のキラータイガー強すぎだって! ターバン先輩のウルフソルジャーだって結構強かったのに!」
予想もしなかった試合展開の早さに、アイラが口許を押さえて驚愕を隠せない。
『おっと! ターバン選手が降参だぁ! これにより、ティーガー選手の勝利が確定ー!』
「キラータイガーとティーガー先輩、あれが決勝戦の相手……!」
モニター越しでもまざまざと伝わる圧倒的な気迫に、ティナもその華奢な肩を震わせる。
そんな彼女に手を添えたのは、やはりアイラだ。
「大丈夫、ティナなら勝てるって!」
「アイラちゃん……ホントかなぁ?」
「アタシはティナたちの方が強いって、確信してるんだけどなー」
頭の後ろで腕を組んであっけらかんと言い放つアイラに、勇気づけられたティナは未発育な胸の前でぎゅっと拳を握る。
「ありがとう、わたしも精一杯がんばるよアイラちゃん」
「そうそう、その意気っしょ!」
「あたっ!?」
アイラに背中をバシッ!と叩かれて、ティナは思わずよろめいた。
「もー、アイラちゃんってば痛いよ~」
「あはは、ごめんごめーん。でもとにかく勝ちなよ」
「うん、もちろんだよアイラちゃん」
アイラと手を組み合わせたティナは、ゴウレックスの元へと再び向かう。
「お待たせゴウレックス。次の相手は強いと思うけど、ゴウレックスなら大丈夫だよね」
「ドゥルルル……」
ゴウレックスが巨大な顔をおもむろに寄せると、ティナはそれに寄りかかった。
「そうだね、わたしもあなたを信じてるよ」
「ドゥルルル」
ゴウレックスが開いた頭のコックピットに、ティナが乗り込む。
それに伴って背後から伸びたケーブルが、ティナの首筋に接続された。
「ああんんっ」
その瞬間ティナの耐Gウェアが鮮やかな朱色に染まり、マインドリンクが施される。
「よしっ、いくよゴウレックス!」
「グルルウウウン!」
意気込んだティナに促されたゴウレックスが赤コーナーから出てくると、溢れんばかりの拍手と喝采が贈られた。
『ついに始まりましたエバー学園機獣バトルトーナメント決勝戦! さてさて入場するは赤コーナー、狂乱の暴君機獣ゴウレックス&小さき新星ティナ・ララミリア選手!』
「グルルルルオオオオオン!!」
実況に呼ばれて雄叫びをあげるゴウレックス。
「続いて青コーナー、紅の牙キラータイガー&慈悲なき狩人、イザベラ・ティーガー選手!!」
続いて溢れんばかりの拍手と黄色い歓声と共に青コーナーから入場してきたのは、イザベラの操縦する紅のキラータイガー。
「ガフウウウウ!!」
キラータイガーが吠えると、コックピットの通信をイザベラが繋ぐ。
「ティナ・ララミリア。ここまで勝ち進んできたというのなら、私たちの相手に不足はないということだろう。全力でかかってこい」
「はい、ティーガー先輩!」
「いざ尋常に」
にらみ合うゴウレックスとキラータイガー。
『笑っても泣いてもこれが最後、それではレディーファイト!!』
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます