第23話 開幕
『これよりウォーリアーの紹介に入ります。エントリーナンバー1。名高きヒラリー財閥のご令嬢、マリア・ヒラリー選手!』
アナウンスと共に上がる歓声に、マリアは慣れた様子で微笑みながら手を振る。
「エントリーナンバー2。完璧かしましギャル、アイラ・ウタハ選手!」
「へーい! 頑張っちゃうよ~!」
沸き上がる歓声に同調するように跳び跳ねながら手を振るアイラ。
そこから順々に選抜ウォーリアーたちが呼ばれ、残すところ後二人に。
「――エントリーナンバー7。エバー学園の小さき新星、ティナ・ララミリア選手!」
どっと沸き立つ歓声にティナは
「ほーら、もっと自信持っていいんだよっ」
「でも……!」
アイラに肩を叩かれて励まされるも、ティナはこの状況にまだ馴染めない。
「そしてエントリーナンバー8。慈悲なき狩人、イザベラ・ティーガー選手!」
イザベラの名が出たところで、観客のボルテージも最高潮になった。
そんな溢れんばかりの歓声にも、当のイザベラは普段通りに堂々としている。
「やっぱり最強ってすごいんだね……!」
「アタシはティナも負けてないと思うけどなー」
「そんな、無理だよ~!」
アイラの評価にティナがおろおろしているうち、トーナメントの組み合わせが発表された。
「あ、アタシあそこじゃん!」
「わたしが最初~!?」
「わたくしは一回戦の最後ですか。ま、最強は遅れてやってくるものですわ」
そんなトーナメントの組み合わせに一喜一憂する選抜ウォーリアーたちは、自分達の番になるまで控え室で待機することに。
「う~、緊張するよ~!」
控え室のベンチに座るティナは、頬を抱えて緊張に震えている。
そんな彼女の背中を軽く叩いたのは、やはりアイラだ。
「そんな緊張してたらゴウレックスにも伝わっちゃうよ? ほら、リラックスリラックス~」
「そ、そうだね。わたしがしっかりしなくっちゃだよね!」
アイラに励まされてすくっと立ち上がったティナの元にやってきたのは、二年生の男子である。
「よう、まずはお前さんが対戦相手みたいやなっ」
「あなたは……?」
「おっと、申し遅れたな。わいはジョー・ゲータ、二年生や」
「ゲータ先輩っ、お、おはようございますっ!」
先輩と聞いてガチガチに緊張するティナに、ジョーは軽く笑った。
「まあまあ、そない緊張せんでもええって。とにかく、最初の試合でお前と当たるわけだから挨拶しに来たってわけや」
「そうだったんですね」
「そんじゃ、わいも負けへんでララミリアちゃん」
「はい、わたしも負けません!」
ティナと握手を結んだところで、ジョーは一足早くスタジアムへの青い入場口へ駆け出す。
「それじゃあ行ってくるね、アイラちゃん」
「うん、頑張ってよ!」
赤い入場口の途中で、ティナは待機していたゴウレックスと対面した。
「ドゥルルル」
「ゴウレックス、今日も一緒に頑張ろうね」
ティナがそう言うと、ゴウレックスはおもむろに顔を寄せる。
「ゴウレックスも励ましてくれてるんだよね。ありがとっ」
「ドゥルルル」
ティナもそれに応えるよう、ゴウレックスの顔に手を添えた。
「それじゃあ行くよ!」
「グルウウン!」
ゴウレックスが頭のコックピットハッチを開けると、ティナも速やかに乗り込む。
「ああんっ」
そして背後から伸びるケーブルが首筋に接続され、いつものあの感覚が全身を伝いティナは身体をのけ反らせた。
同時に耐Gウェアもくすんだ紺色から鮮やかな朱色に早変わりし、コックピット内の機材もブウウウン……と音を立てて起動し始める。
「行こう、ゴウレックス!」
「グルルウウウン!!」
ゴウレックスを操縦してティナがスタジアムに出ると、対面で待っていたのは緑色のワニを思わせる大型機獣だった。
「それが先輩の機獣なんですね!」
「せや! デッドリーゲーターっちゅうねん、ごっつう強ええアゴやからあっさりやられんといてや!」
「ブルルルル!」
操縦するジョーに呼応するよう、ワニ型のデッドリーゲーターも喉を鳴らす。
「あごならわたしたちも負けませんよ、先輩!」
「グルルオオオン!!」
やる気十分なティナとゴウレックスも負けじと吠え返したところで、実況によるアナウンスが流れてきた。
「双方準備が整ったようなので、紹介させていただきます。赤コーナー、狂乱の暴君機獣ゴウレックスと小さき新星ティナ・ララミリア選手!」
「グルルオオオン!!」
アナウンスの紹介で沸き立つ観客に、ゴウレックスも吠える。
「青コーナー、這いよる死神デッドリーゲーターと西方の色男ジョー・ゲータ選手!」
「ブルルルル!」
こちらも観客たちが沸き立ち、デッドリーゲーターも長い顔を高々に上げて唸った。
「システムフリーズ及びウォーリアーの戦意喪失により勝負が決まります。レディー、ファイト!!」
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