第24話 一回戦第一試合

 打ち鳴らされたゴングと共に、にらみあっていた両者が動き出した。


「行くよゴウレックス!」

「グルルオオオン!!」


 声を張り上げるティナに呼応するように、ゴウレックスが雄叫びをあげて駆け出す。


『まずはゴウレックスが突進!! デッドリーゲーターはどう出るかぁ!?』


 それに伴って実況の熱弁がスタジアムに響いた。


「おお、巨体の割にごっつ速ええな!」


 ゴウレックスの速さにジョーは目を見張りつつ、落ち着いて操縦桿を握る。


「あらよっと」


 そしてゴウレックスの強靭なあごが迫ろうとしたところで、ジョーの操縦するデッドリーゲーターが横転してかわす。


「なっ!?」

「どや、動きならわいも負けへんで!」

「ギシェエエエエ!!」


 かわし際に横へ回り込んだデッドリーゲーターが、背中の装甲を開いて無数のミサイルを発射した。


「グルルウウウ!?」

「うううっ!」

『おっと! デッドリーゲーターの隠し弾が炸裂ぅ! これはゴウレックス痛い!』


 ミサイルの雨を浴びてうめくゴウレックスとティナ。


「ほんならわいらもいかせてもらうで!」


 それからデッドリーゲーターが巨大な顎門あぎとを開けて、強靭な尻尾をバネにして飛びかかろうとする。


「わわっ!?」


 とっさにゴウレックスが尻尾を振ったことで、デッドリーゲーターのあごはその尻尾を捕えた。


「グルルル!?」

「うっ!」


 ゴウレックスが尻尾を噛まれたことで、ティナが苦悶の声をあげる。


『ああっとぉ! デッドリーゲーターがゴウレックスの尻尾に食らいついたぁ! さあアルバス先生、この状況をどう見ますか?』

『これはいきなりデッドリーゲーターがチャンスを掴んだ形になりますね。こうなるとワニ型の機獣は厄介ですよ~』


 実況とアルバス先生の言う通り、デッドリーゲーターに噛まれたゴウレックスは苦しそうだ。


「このっ!」


 ティナが操縦してゴウレックスが振り落とそうとするが、デッドリーゲーターは尻尾に食らいついたまま離れない。


「へへっ、こいつは一度噛んだら絶対離さんで~!」

「それならゴウレックスだって!」


 負けじとティナもゴウレックスにその場で回転させる。


『おっとぉ!? ゴウレックスが尻尾でデッドリーゲーターをぶん回してます!!』


「うおおおおおおお!!」

「目を回させようって魂胆か、けどその手には乗らんで! わいらも三半規管は鍛えとるんや!」


 得意気なジョーの言葉に応えるよう、デッドリーゲーターも死に物狂いで尻尾に食らいついて離れない。


 そうかと思えばゴウレックスが回転しながらじりじりと後退りしていたことで、デッドリーゲーターがスタジアムの壁に叩きつけられた。


「ギシェエエエエ!?」

「のわっ!?」


 叩きつけられた衝撃で、デッドリーゲーターが口を離す。


「今度はこっちの番だよ! いっけぇ、ゴウレックス!」

「グルルオオオン!!」


 仰向けにひっくり返るデッドリーゲーターの腹部を踏みつけて、ゴウレックスはその喉元に噛みついた。 


 その途端喉が食い破られたデッドリーゲーターがフリーズ。

 これによりスタジアムで決着のブザーが鳴り響く。


『試合終了~! 勝者、ティナ・ララミリア選手&ゴウレックスー!』


 審判の言葉で観客が沸き立つなか、ゴウレックスはまだうずうずとした様子ながらデッドリーゲーターを解放していた。


「ふ~っ、ゴウレックスを落ち着かせるのは大変だよ~」


 そしてゴウレックスが座り込んだところでティナがコックピットから降りて、ショートを起こすデッドリーゲーターの元へ歩み寄る。


「へへっ、負けちまった」

「ゲータ先輩も強かったですよ! 勝てたのはゴウレックスのおかげです」

「せやな。次からはわいらの分まで頑張りや~」

「はい!」


 そんな会話を交わしてからティナとジョーは拳を突き合わせた。


 赤いゲートをくぐって控え室に戻るなり、飛び付くアイラがティナを抱きしめる。


「ティナー! 初戦突破おめでとーっ!!」

「えへへ、アイラちゃん。ゴウレックスのおかげでなんとか勝てたよ……」

「あれはティナの実力だって! じゃあ次アタシの番だから、待ってて!」

「うん! アイラちゃんも絶対勝ってね!!」


 お互いハイタッチを交わしたところで、ティナとすれ違うようにアイラが入場口へと駆けていくのであった。

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