第25話 一回戦第二試合

『やって参りました一回戦第二試合! 赤コーナー、韋駄天の刃アクセルラプター&完璧かしましギャル、アイラ・ウタハ選手!』


 アナウンスと共に入場するのは、アイラが操縦するキー坊ことオレンジ色のアクセルラプターだ。


「思いっきり暴れちゃうよー!頑張ろっ、キー坊」

「グーギュルルル!」


 アイラの声かけでキー坊が高らかに吠える。


『対して青コーナー、巨大なる重装機獣エレファイター&叡智なる生徒会長、エリア・タスカー選手!』


 続いて入場してきたのは、25メートルは下らない巨大な象型機獣エレファイターだ。


「パオオオオオオオ!!」


 入場するなり長い鼻を高々とあげて雄叫びをあげるエレファイター。


「アイラ・ウタハさん、あなたの人気はかねがね耳にしております。羨ましい限りですよ」

「いやいや~、アタシなんて全然ですよ会長ー。……でもっ、このバトル負ける気はありません!」

「そうでなくてはバトルの意味がありません。全力でかかってきてください」


 お互い言葉を交わしたところで、キー坊とエレファイターが向かい合う。


『レディーファイト!』


 開戦のゴングが打ち鳴らされるなり、アイラのキー坊が駆け出した。


「先手必勝!」

「グーギュルル!」


 ビームガンを撃ちながら接近しようとするキー坊、だがエレファイターは大きな耳を広げることで張ったピンク色のエネルギーバリアで防ぐ。


『おっと! エレファイターがエネルギーバリアを展開したぁ!』

『エネルギーバリアは光学兵器を無効化しますからね。さすが重装機獣、防御も抜かりないです』


 実況とアルバス先生の解説通り、キー坊のビーム射撃はエレファイターに全く届いていない。


「次はこちらからいかせてもらいますよ! マックス!」

「パオオオオオオオ!!」


 エリアにマックスと呼ばれたエレファイターが、エネルギーバリアを解除してから背中のレーザーキャノンで射撃する。


「わわっ!?」


 乱れ撃ちのレーザー射撃に、キー坊は飛んで跳ねてかわすのがやっと。


「はああっ!」

「プオオオオオ!」


 その隙に接近したマックスが長い鼻を振るい、キー坊を弾き飛ばした。


「うわああああ!?」

「グギュル!?」


 強烈な鼻の一撃に、小型機のキー坊は大きく吹っ飛ばされてスタジアムの壁に叩きつけられる。


「痛っつ……!」


「さすがですねウタハさん、当たり際に一瞬飛び退いてダメージを軽減なさるとは」


 エリアがそんなことを考察しながらマックスを歩ませると、キー坊は身体を震わせて立ち上がった。


「まあねっ。でも近づいてくれて、ありがとっ!」

「グーギュルル!」


 間髪いれずにキー坊がマックの巨体に飛び付き、鋭い足の爪を突き立てる。


「プオオオオオ!?」


 その分厚い装甲を切り裂くには至らずとも、身体に貼り付いたキー坊を嫌がり巨体を揺するマックス。


 しかしキー坊は手足の爪を食い込ませて離れない。


『ああっとぉ! 今度は小型であることを活かして密着したアクセルラプターが有利かぁ!?』

「そらそらそらそらぁ!!」


 マックスに貼り付きながらキー坊がゼロ距離でビームガンをぶっぱなす。


「パオオオオオオオ!!」


 これにはマックスもたまらず身体をさらに揺さぶり、苦痛を露わにした。


「なかなか厄介ですねえ。しかし、これはどうですかね!」

「パオオオオオオオ!」


 するとマックスが自らその巨体をスタジアムの壁に打ち付ける。


『おっとぉ!? その巨体を活かしたプレス攻撃でキー坊もぺしゃんこかぁ!?』

『いえ、よくみてください』


 アルバス先生の指摘と同時に、土煙に紛れてキー坊がマックから飛び退くのが見えた。


「ふーっ、危なかった~!」

「かなりの反応速度、どうやら小型機だからと侮っていたら足元掬われそうですね。マックス!」

「パオ!」


 マックがすかさず鼻先のビームガンを撃ち、空中で回避が遅れたキー坊は直撃してしまう。


「うううっ! キー坊、大丈夫!?」

「グギュル……!」


『どうやら今の射撃でアクセルラプターは脚をやられてしまったみたいですねえ』


 脚からバチバチとショートを起こすキー坊を、マックは鼻先のクローで掴んで捕えた。


「チェックメイトです」

「あはは、これは降参かな……」


『アイラ・ウタハ選手の降参により、勝者はエリア・タスカーに決定!』


 審判の言葉でスタジアムの観客が沸き立つ。


 マックがキー坊を下ろしたところで、お互いコックピットから出てきた。


「いやー、やっぱり生徒会長強いですね~!」

「あなたもなかなかのものでしたよ、ウタハさん」


 アイラと握手を交わす長髪のエリアに、溢れんばかりの拍手がもたされたのである。

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