島でのバカンスと新型機獣

第38話 リッターコーポレーションの島

 女子寮に戻ってすぐシルフは父アルファスに連絡をいれた。


「あ、もしもしパパ。新しくできたボクの友達を紹介するから、今度彼女たちを別荘に招待してもいいかな?」

『おう、シルフか。早くも友達ができたようで私も父親として安心した、もちろん別荘への招待も喜んで許可しよう』

「ありがとうパパ! その友達なんだけどさ、その中の一人がちょうどかのティラノサウルス型の機獣のウォーリアーだったんだよ」

『何っ!? それは本当か!』


 電話の向こうでガタッ!と物音を立てるアルファスに対し、シルフは苦笑しながら肯定する。


「あはは、本当さパパ。……パパのことだからその機獣も見てみたいんでしょ?」

『もちろんだよシルフ。できれば彼女たちの機獣も連れてきてほしいところだ』

「それじゃあそのように伝えておくよ。じゃあまたっ」


 電話を切ったシルフは、部屋のベッドに寝転がって天井を見つめた。


「パパったら機獣のことになるといっつもあーだからな~。……さてと、ボクも約束の日までに水着を用意しないと」


 こうしてシルフの夜も更けていく……。



 それから三日が過ぎて、ティナとアイラそれからリコリスとルーテシアの四人は女子寮の前で待ち合わせをしていた。


「うぅ~! ヤバい、今からもうワクワクが止まんないよ~!」

「落ち着きなさい、アイラ」

「だって海だよ、別荘だよ!? 落ち着いてられるわけがないじゃんリコリー!」


 行く前から興奮冷めやらないアイラに、リコリスは肩をすくめて呆れる。


 一方何やらモジモジとするティナに、声をかけたのはルーテシアだ。


「ティナっち、どした?」

「ルーちゃん。みんなが選んでくれたこの水着なんだけど、わたしなんかにやっぱり似合うのかなぁ……?」


 ティナは先日アイラたちに水着を選んでもらったのだが、今までになく可愛いタイプのため自分に似合うか不安なのである。


 そんな彼女の肩にルーテシアは気さくに腕を回した。


「心配いらない。アイラっちとリコっちのセンスを信じて」

「……そうだよね。友達が選んでくれたんだもん、恥ずかしがってちゃいけないよね!」

「その意気」


 平らな胸の前でぐっと腕を構えて自己暗示をかけるティナに、ルーテシアも親指を立ててエールを送る。


 少しすると空から紫色の輸送用機獣ホエールジャンボが飛んできて、格納庫の前に着陸した。


「やあ、お待たせ。君たちも準備万端みたいだね」

「おかげさまでね! 待ってたよシルフ~!」


 駆けつけたアイラと握手を結んだところで、シルフがこんな提案をする。


「突然なんだけど、うちの社長パパが君たちの機獣を見たいって言ってきてさ。君たちの機獣も連れていってもいいかい?」

「も、もちろんだよシルフちゃん!」

「アタシも賛成! キー坊たちもきっと喜ぶと思う!」

「私も異論はないわね」

「うちも」

「それじゃあ決まりだね。ちょうど弊社うちのホエールジャンボもあるから、それに搬入すればいい」

「「「「はーい」」」」


 学生証で格納庫を開けるなり、ティナたちは各々の機獣をアルファスコーポレーションのホエールジャンボへ誘導した。


「それじゃあ出発進行!」


 シルフが操縦席につくと、ホエールジャンボは皆を乗せて離陸する。


「はわわわ、高~い!」

「ティナはホエールジャンボに乗るのは初めてかい?」

「う、うん。というか飛行機にも乗ったことないし……」


 指を突き合わせてモジモジするティナに、シルフは快活に笑った。


「初々しいねー。それじゃあうちの別荘ももっと驚くかな」

「それは楽しみ!」

「早くっ、早く到着しないかな~!」

「気が早すぎよアイラ。まだ出発したばかりじゃない」

「えへへ、そうだねリコリー」


 空の旅路につくこと二時間、一行を乗せたホエールジャンボからは絶海に浮かぶ孤島が見えてくる。


「見てみてみんな! あれ島じゃん!」

「ふえっ、フィッちゃんの別荘ってもしかしてあの島なの~!?」

「ああ、そうさ。島全体がアルファスコーポレーションの所有となっててね」

「す、すごーい……!」

「そろそろ着くかな」


 シルフの言う通り、ホエールジャンボは島のヘリポートに向かって高度を下げつつあった。


 そして着陸するなり、真っ先に飛び出してきたのはアイラである。


「はい、いっちばーん!」

「もう、アイラってば子供じゃないんだからっ」

「えへへ~、なんかこういうのやりたくなるっしょ?」


 ニシシと子供みたいに歯を見せて笑うアイラに、リコリスはため息をついてうなだれた。


 一方ティナは島の空気を深呼吸する。


「ん~っ、空気が美味しい~! なんかわたしの地元を思い出すよ~」

「ここは普段無人島だからね。それじゃあ行こうか」

「よっ、待ってましたー!」

「アイラちゃんさっきからはしゃぎすぎだよ~」


 こうして島に降り立ったティナたちは、まず島の別荘へ向かうことにした。

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