第7話 限界女帰宅 side she



ああ、今日も疲れた・・・。

日勤だけど定時で帰れることなんて年に数度あるかどうか。

それでも今日は1時間残業で済んで、まだスーパーが開いてる時間に帰ってこれた。

といっても料理までする気力は無いから、買ってきたものは飲み物と

ヨーグルトやゼリーなんかのさっぱりするもの。


あ、晩御飯買ってくるの忘れた。

歩いてすぐのところにコンビニもあるけど。もう、出前でもいいかなあ。

後でコンシェルジュの井上さんに電話して贔屓のお蕎麦屋さんにざる蕎麦とミニカツ丼のセットを

頼んでもらおう。


仕事中は忙しくてご飯に時間なんて掛けてられない。

今日だって病院の売店で買ったおにぎりとチューブパックのゼリーだけ。

はっきり言って全然足りない。

あ、茶碗蒸しも付けようかなあ。うん。あそこの美味しいんだよねえ。


気分が上がってきたところで電話を取り出す。

井上さんは、出前のお願いをするといつもの穏やかな声で「かしこまりました」と了解してくれる。

来たら下まで取りに行く約束をして電話を切ろうとしたところで、井上さんから声を掛けられた。


「榊様、皐月様からお手紙をお預かりしておりますがお渡ししてもよろしいでしょうか?」


皐月さん、はあの皐月さんよね。


もう、みっともないとこ見せた上にあんなお世話になっちゃって

ファンの人にバレたら殺されちゃうんじゃないかしら。






あの日はもう、何もかもが限界で。眠くて眠くて仕方なかった。




ああ・・・もうヤバイ。眠い・・。

やっとこさ意識を保ってマンションまで帰ってきたけど、もうこのまま寝れそう・・。

この2週間、キツかった・・・。

3日ぶりの自宅・・・。

・・・やっぱベッドまでは頑張ろう。

車の中でなんて寝てたら、警備員さんに注意されちゃ・・・ああ、いかん。寝ただめだって。


のろのろ車から降りて、そしたらご飯を買ってくるのを忘れてるのに気付いた。

冷蔵庫の中にはそれっぽいものは無い。

出前、と思ったけど絶対に待ってる間に寝ちゃうと考え直して、仕方なくコンビニへ。

カツ丼とお茶を買ってマンションに戻る。

井上さんの「お帰りなさいませ」の声には何とか反応を返した。・・筈。

乗り込んだエレベーターに先客がいるのに気付いて一応挨拶をし家の階のボタンを押した。

・・・とこで記憶が切れて。


気付いたら隣に国民的アイドルグループのメンバーがいた。



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