第39話 怖いのは side she



話を聞いて思った。

私達はとてもよく似ている。

すぐ近くにあった体温が離れ、寂しさが襲う。

皐月さんを見上げると、いつもとは違う苦しそうな笑顔で私を見ていた。


「ごめんねなんて、言わないでください・・・」


過去は知らない。

けれど、私が知っている皐月さんは決して酷い人ではなくて。


「皐月さんは、優しい人です・・・。

私にはもったいない・・・素敵な人です」


だから余計に、側にいるのが怖いと思った。

絶対に傷つけたくないから。

あの人のような苦しそうな顔をしてほしくなかったから。

なのに、結局・・・。


「皐月さん・・・」


これ以上どうしたらいいのか分からなくて、ただ彼を見つめて名前を呼ぶしか出来ない。

こんなに、・・・・・・好きなのに。

時間なんて関係なくて。

気付けば心の中は皐月さんでいっぱいで。


胸が痛くて、涙か勝手に溢れた。


「・・・ありがと、美乃莉ちゃん」


そんな私の涙を拭ってくれようとしたのか、スッと上がってきた手が頬に一瞬だけ触れる。

けれどその手はまたすぐに落ち、ボックスティシューをザッザッと数枚取ると涙はそれで拭われた。

さっきまで抱きしめてくれていたのに。


・・・・・皐月さんは、諦めてしまったの?


やわらかくて優しい紙の感触がとても悲しくて、拭いても拭いても涙は後から後から落ちる。


「・・・俺が、泣かせてるんだよね・・・。ごめんね」


そう・・・。この涙はあなたの所為。


「・・・皐月さんが、・・・っティッシュなんかで拭くから・・・っ」


ついさっきの、温かさが恋しい。

お願いだから、側にいて。

そう思って言ったのに。


「え。あ!メイク取っちゃった?思いっきり拭いちゃったよ。ごめん」


見当違いな事を言い出す始末。

何度か見た事のあるキャスター姿の時はあんなに頭が良さそうに見えたのに。

どうしてこんな時だけ察してくれないの。


「ちが・・っ」


今度はポンポンと優しく叩かれる頬。

そうじゃない。

私はティッシュを持つ皐月さんの手を捕まえた。


「・・・美乃莉ちゃん?」


自分で言った過去にまた傷ついてる彼に、私は覚悟を決める。


「・・・・・・私も、皐月さんが好きです」


怖いのは、あなたが傷つくこと。

今度は絶対に間違えない。


「あんまり会えないと思うけど・・・・

私を、そばにいさせてください・・・」




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