第38話 昔話 2
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少し前までの自分の愚かさを哂ってしまう。
「彼女と会うのは必ず外。待ち合わせはホテルの部屋。食事もそこで。
抱き合うけど、痕は絶対付けない。終わったら現地解散。出るのは時間差」
知り合いがそんな男と付き合ってるって聞いたら、速攻で『別れたら?』って言うだろう。
でもそんな事が俺の中では普通になってた。
「ツーショット写真なんて勿論撮らせないし、今はどんなアプリがあるか分からないから一緒にいる時は携帯すら触らせない。
・・・要は、付き合ってる女でも信用してなかったって事だけど」
「・・・どうして、付き合ったんですか」
美乃莉ちゃんの声が硬くなってる。
俺が思ったより酷いヤツで緊張してきちゃった?
「絶対にワガママ言わないから付き合ってって言われるから。
今は好きじゃなくても、カラダだけでもいいからって。バカだよねー・・・」
でも、そう言う子に限って次に会うまでに時間が空くとすぐにメール攻撃してくる。
ラインは対応が面倒だから最初から教えない。
「仕事柄業界の女の子と知り合う機会は多いよ。
自分のレベルを分かってて告白してくるから、断られるなんてプライドが許さないんだろうね?
さっき言ったみたいな条件を出しても、それでもいいからって。
そこまで来ると断るのも面倒くさくて、割り切ってたよね」
大人の男の『割り切る』がどんな意味か、当然彼女にも分かるんだろう。
何も言わず俺を見つめながら、一方的に話してる俺の話を聞いていた。
もうその目は怖くて見れない。
「でも多分さ? 彼女達も本気で俺を好きな訳じゃなかったんだと思うよ?
なんつーのかな。ブランド物みたいな、持ってるだけで優越感に浸れるみたいな。
そんな感じだったんだと思うね。
最初は『俺が好きじゃなくても、俺の分まで好きでいるから』とか訳分かんない事言ってたくせに、1カ月会わなかっただけで別れるとか言い出す子が殆どだったから。
当然、俺も追いかけたりしないし」
マネージャーにはその度に『またですか』って溜め息つくけど、でも俺たちを守る立場にあるマネは、俺にとってリスクでしかない彼女達を引き止めろとは絶対に言わない。
「ね・・・?
俺の方が美乃莉ちゃんよりずっとタチが悪いでしょ」
自分で言って、自嘲するしかない。
君の真っ当な理由と違って、なんて下衆っぽい。
「・・・ごめんね。好きになんてなって」
俺は、彼女に触れていた自分の手を離した。
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