第17話 新鮮な遊び side she
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先を歩いていく皐月さんの少し後ろを付いていく。
「ごめんね。俺から誘っといてなんだけど、少し後ろを歩いてくれないかな。
マスコミに見つかったら面倒だし、榊さんにも迷惑が掛かるから」
マンションを出る前、申し訳なさそうに彼が言った。
「分かりました」
確かに、こんな人気者が写真に撮られたら大変な騒ぎになるんだろうなと素直に頷く。
でも、彼の次の台詞にちょっと笑った。
「でも離れ過ぎないで。付かず離れずみたいな感じ?」
だってそれって。
「なんか尾行みたいですね(笑)」
ドラマで刑事とか探偵とかが犯人を追い詰めるみたいな。
「本当だ。じゃあ、俺の事、尾行してきて(笑)」
「はい(笑)」
皐月さんも曇った表情から笑顔に変わって、でも歩き出す前にまた「ごめんね」と謝ってくる。
別に、こんな事なんともないのに。
「いいえ。なんか、初めての事でちょっと楽しくなっちゃってるんで大丈夫です」
歩き出すと、皐月さんは時々後ろを振り返って私がちゃんと付いてきてるのかを確かめてる。
私はその度、誰かにバレないように彼から視線を外し、そっぽを向く。
だんだんそれが楽しくなってきてしまい、皐月さんが振り返るたび笑いを堪えていた。
そんな風にマンションから2~3分歩き、目の前には少し大きな交差点。
という所で突然皐月さんがマスクを下ろした。
何やってるんですかっ!
バレたらどうすんですか!?
そう思ったけれど、声に出したら余計にバレそうで。
あわあわしながら彼を見ると何かを私に喋っている。
なに?
『で・ん・わ・し・・』・・・ああ。電話して?
電話すればいいのね!?
するからちゃんとマスクして下さい!
コクコク頷くとマスクはまた元の位置に。
バッグから電話を取り出し、さっき登録したばかりの皐月さんの番号を呼び出す。
コールすると3秒ももしないうちに彼が出た。
「電話ありがと。ここ右曲がるよ」
指で右を指しながらちらっとこちらを見る。
わざわざ知らせてくれるなんて、優しい人だ。
最初の日もちょっと言い方はキツかったけど、多分皐月さんだって仕事終わりなのに病院まで送ってくれて。本当に、いい人。
角を曲がった彼について、右に曲がる。
そして、そういえばと思い出した。
すぐ上の兄が、この辺でイタリアンの店を出している。
・・・ピザとビール・・・。
・・・マサカ、ね?
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