第44話 スペアキー
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そんなこんなで目出度く付き合い始めた俺達。
が、やっぱり会えない俺達。
いや、そんな事は予想してたし。
お互い想定内だし。
でも今は連絡先も知ってるし。
毎日とはいかないけど電話とかメールとかしてるし。
それで十分。
・・・・なんて、そんなわけねえ!
今までの彼女には悪いけど、本気で好きなんだよ。
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仕事の迎えが来る1時間前
俺は普段はデリバリーを頼む時くらいしか用の無いマンションのエントランスに立ち、コンシェルジュに声を掛けた。
「井上さんおはようございます。お願いしてたアレ、出来ました?」
あれから3週間、俺は彼女に全く会えていない。
1週目は彼女が学会参加のため海外へ出張。
行き先はドイツ。お土産を貰ったけどそれはコンシェルジュを通してだ。
帰ってきた次の日は休みだったけど、その日俺は地方にロケに行ってて会えなかった。
俺が買ってきたお土産も渡した。それもやっぱりコンシェルジュを通して。
その後もなんだかんだ見事にすれ違う日々。
そんな中、俺は決心した。
このまま黙っていたら俺達は永遠に会えない。
彼女から言ってくれたとはいえさすがにもう少しお互いを知ってからと思っていたお互いの家のスペアキー。
けれど状況が状況だけに俺はそれを作ってもらうようコンシェルジュにお願いした。
多少緊張しながら彼女にそれを伝えたら、彼女の方も同じ事を考えてくれていたらしくすぐ了承してくれた。
「皐月様、おはようございます。
はい、カードキーの方は御用意出来ました。榊様のお部屋の分もございます。
あとは指紋認証をして頂くだけですが」
5人いるコンシェルジュの中、井上さんだけには事情を話してある。
彼女がこの人は大丈夫だからと言ったから。
「指紋認証か。俺の方はやっちゃうから、彼女に渡してくれる?」
「はい。かしこまりました」
彼女は夜勤明けの筈だけど、帰宅の連絡は入っていない。
話をしながら指紋認証の手続きをしていると突然スマホが震えた。
「っと・・」
メールには『今帰ってきました』って。
ナイスタイミング。
俺は井上さんに断って彼女に電話を掛けた。
「お帰り。今エントランスにいるよ。疲れてるとこ悪いけど、来てもらって良い?」
『はい、今行きますね』と短返事をしてくれた声は若干眠そうだった。
用事が終わったら送ってあげよう。
ほら、なんせ俺達出逢いが出逢いだからさ。
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