第30話 揺れる気持ち side she




家に戻ると時間は10時半近く。

結局ご馳走して頂く形になってしまった皐月さんに電話するかメールにするかで悩む。

この時間ならまだ起きてる可能性が高いだろうけど、でも・・・。

このゆらゆら揺れてる気持ちを抱えたまま声なんか聞いたら。

そう思って、メールにする。


せっかくの食事も途中になっちゃったし、バッグも届け貰ってお世話になりっぱなしだ。

初めてのメールだからとタイトルには名前を入れ、失礼にならないように堅めの文章を作って送信する。


なのに。


『大変だったね。

今可能なら、少し電話してもいい?』


皐月さんからはそう返信されてきて。

ふう、とひとつ息を吐いて決心をし、彼の番号を呼び出した。

すると緊張する間も無く通話になり『ごめんね、無理言って』と優しい声が聞こえてきた。


ああ、やっぱり・・・って思ってしまう。

だから、


『美乃莉ちゃん、美味しいお店も楽しみだけどさ?

もし良かったら、今少しだけ晩酌付き合ってくれない?』


彼のこんな誘いに


「はい・・」


って言ってしまうんだ・・・。

これ以上進む勇気もないくせに。



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