第34話 告白
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俯いたまま顔を上げない彼女に焦る。
やっぱ失礼だったよな。
怒っちゃった?
このまま帰るとか、言われちゃう?
ヤバイじゃん。
でも本当にそうなっちゃったら、この先会ってくれる可能性無くね?
せっかく少し近付けたのに。
・・・ねえ、頼むからもう一度俺を見て。
何も言わなくなってしまった彼女にそっと近付いて、驚かせないようにゆっくりと髪に触れる。
顔を覗き込むと伏せた瞼の下には涙が溜まっていて、このまま彼女を抱き寄せたい衝動に駆られた。
さすがにそれはグッと耐えたけれど。
本当にごめん。
傷つけるつもりなんて、ましてや泣かせるつもりなんて全く無くて。
考え無しで本当にごめん。
「気を悪くしたならごめん。気付いた事とかすぐ言っちゃうの悪い癖なんだ。
・・・頼むからもう会わないとかは言わないで?」
言ってしまった言葉は無かった事には出来ないけれど、悪気が無かった事は分かって欲しい。
俺はただ君の事を知りたかっただけ。
別に料理をしようがしなかろうが出来ようが出来なかろうがそんなことはどうでも良くて。
いや、本音は少しは出来てくれたほうが嬉しいけど、でも別に忙しい中無理に作って欲しいなんて思ってるわけじゃなくて。
・・・今はただ、君と同じ時間を過ごしたい。
そう思ってるだけ。
素直に謝ると、ゆっくり、本当にゆっくりと彼女が俺と視線を合わせてくれる。
その潤んだ瞳に光が反射し、キラキラと輝いていた。
これだけは信じて欲しい。
「・・・・・・出会ったばかりでって思うかもしれないけど・・・好きなんだ」
想いが深まる事に時間なんか関係無くて。
あの夜から惹かれ続けた心は、今夜の食事の間に身体中を支配して。
「知らない事もいっぱいあるけど、でも、俺の側にいて欲しい・・・」
ひとすじ落ちた彼女の涙を手で拭う。
彼女は何も言わず、ただ俺を見つめ返すだけ。
それでも後から後から落ちる涙に俺は我慢できず、彼女を腕の中に閉じ込めた。
「ごめんね・・・。ハンカチ今持ってないから、俺の服で拭いて」
肩口でふるふると首を振る意味を今は考えたくない。
「これ以上は何もしないから、涙が止まるまでは慰めさせてよ」
勝手でごめん。
自分で言っといてなんだけど、返事も今は聞きたくない。
少しだけ、黙って俺の腕の中にいて。
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