第11話 神様仏様エレベーター様



「次、1時間後だっけ?」


取材1本とスチール撮りが終わり、小休憩。

次は最近注目されてきた若手作家との対談の筈。

だったのだが。


「ああ、それなんですが、先程出版社から連絡がありまして予定されてた先生がつい先程急病で運ばれたそうで。

対談の方は後日また設定させて頂きたいということでした。

なので、今日はこれで終わりです」

「マジ?まだ4時じゃん」

「そうですね。どうされますか?マンションまで送りますか?」


マネージャーに言われてちょっと考える。

何をするにも中途半端な時間。

ご飯屋の夕方営業は大抵5時からだし、急だったから誰にも声を掛けていない。


「・・・ま、いっか。一回家帰るわ」


毎日せかせかとした日々を過ごし、休みは前々からびっちり予定を組む。それこそ分単位。

そんな生活に慣れている所為か生まれ持った性格か、こんな風に急にぽっかり空く時間の過ごし方がいつまで経っても上手くならない。


せいぜい、読み掛けの本を読むとか?

・・まあ、たまにちょっとだけゆっくりするのもいいだろう。


そんなことを考えながら、車を回しに行ったマネージャーを追いかけた。





中途半端な時間の所為か渋滞にも巻き込まれず、車はスムーズにマンションの近くまで来た。

あと少しで地下駐だというその時。


「・・・!」


出掛けに見掛けたばかりの彼女がマンションに帰っていくのを見つけた。


「マネージャー、早く」


エレベーターのタイミング次第ではまた会えるかもしれない。

そう考えると、思わず口に出てしまった。

ヤバイと思っても口から出た言葉は引っ込められない。


「もう着きますよ。なんですか急に」


良かった。マネージャーは今回は気付いていないらしい。

言い訳は、無難にこれだろ。


「トイレ漏れそう」

「お願いですから我慢してください」


バックミラーに映った顔は苦笑していた。


「もうギリ」


そんなやり取りをすること20秒。マネージャーは車を入り口の真ん前で停めてくれる。


「おつかれ!」


言いながらダッシュで車を降り、


頼む!エレベーター!

お願いだから彼女に会わせてくれ!


祈りながらカードキーを認証させた。




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