第39話 悪役王子、呼ばれる
「ええと、つまりこういうことですか?」
翌日。
シフォンがこめかみを押さえながら、心底困った様子で言う。
「アノン王子は欲求を抑えられず、ティエラ殿と肌を重ね、彼女にかかった淫魔の呪いを解き、その現場を偶然目撃してしまったミュリエル嬢にも手を出した挙げ句、ティエラ殿に呪いをかけたサキュバスに呼び出されて肌を重ね、サキュバスの街にいたサキュバスたち全員と致したと」
「あ、はい。大体そうなります」
「そして、先程からアノン王子に密着している女性がクイーンサキュバスのイザリスさん、と」
シフォンの視線が俺に抱きついているイザリスに向けられる。
イザリスは2mにも及ぶ身長だからか、膝立ちになった状態だ。
「これはまた、ソフィア嬢がなんと言うか」
「は、ははは。やっぱり、怒られますかね?」
「怒られるでしょうね。まさか一晩で三人どころか何百ものサキュバスたちと間違いを犯すとは」
いや、サキュバスの街は異空間にあったし、正確には数日での出来事だけど。
「ど、どうしよう……」
「私は手助けしませんよ。ご自分でどうにかしてください」
「そんなあ、シフォン先生ぇ!!」
「そ、そんな目で見ても駄目なものは駄目ですからね?」
いや、でも俺だって必死だったのだ。
あのまま抵抗せずにいたら、間違いなくイザリスに搾り殺されていた。
リンデンの精力剤を飲み干してベルセルクにならねば、俺は死んでいたのだ。
しかし、精力剤を飲み干してしまったことで歯止めが利かなくなり、サキュバスたちを美味しくいただいてしまった。
「そういう事情も考慮して、どうか!!」
「ああもう、本当にアノン王子は仕方ない人ですね。分かりました、少なくともサキュバスの件に関しては味方してあげますから。ティエラ殿とミュリエル嬢については知りませんからね!!」
やった!! なんだかんだ俺の味方をしてくれるシフォン、大好きだぜ!!
「……旦那さま……」
「ん? どうした、イザリス」
「……この小娘は……?」
「彼女はシフォン。俺の魔術の先生だよ」
「……」
俺に抱きついていたイザリスが、シフォンをまじまじと見つめる。
シフォンはイザリスの視線に居心地が悪くなったのか、かすかに身じろぎした。
イザリスはシフォンの胸の辺りを見て一言。
「……勝った……」
「あ゛?」
「……旦那さまは……大きな胸が好き……汝の乳より……妾の方が大きい……妾の……圧勝……」
「はっ、何を言い出すかと思えば。図体と乳がデカイ割に脳みそは小振りなようですね」
「……負け犬の遠吠え……」
「上等ですよ!! 私は売られた喧嘩は買うよう昔からお師匠様に言われているんです!! 表に出てください!!」
なんか急に一触即発の空気になった!!
俺は慌ててシフォンとイザリスの間に割って入り、喧嘩を止める。
「この際です。ずばりお聞きしますが、アノン王子は大きい胸と小さい胸、どちらがお好きなのですか!!」
「え、うーん。大きい胸が好きだけど、小さい胸も好きですかね」
「そういうのはナシです!!」
そんなこと言われても。というか……。
「俺は好きになった人のおっぱいが好きなだけですし。どっちが好きとか無いです」
「むっ、そ、そうですか」
「……旦那さま……」
何故か二人して争いを止め、俺を優しく抱きしめてきた。
え、今度は何なの?
「イザリスとか言いましたね。今は争うのをやめましょう。アノン王子、今からお仕置きです」
「え、なんで!?」
「アノン王子は一度でも肌を重ねたら、その子のことを好きになるじゃないですか」
それはそうかも知れない!!
「……たしかに……旦那さまは……妾以外のサキュバスたちにも……愛を囁いていた……」
「え、いや、そんなことは、あったかもですけど」
「この場にはいないソフィア嬢に代わって、アノン王子の節操無しなコレをお仕置きします」
そう言うと、シフォンは俺をベッドに押し倒してきた。
「……ん……妾も……混ぜるが良い……」
「む、良いでしょう。では私は右からアノン王子を攻めるので、貴女は左側からお願いします」
「ちょ、なんで急に仲良くなるんですか!!」
「気のせいです」
「……気のせい……」
それから俺は、シフォンやイザリスとファイティング。
しかし、お仕置きと称して襲ってきたシフォンを返り討ちにし、イザリスにも余裕で勝ってしまった。
おかしい。
イザリスには苦戦するかと思っていたが、普通に圧勝だった。
心なしか俺のエクスカリバーも大きくなってる気がするし、スタミナも以前と比べて十数倍になっているような気がしなくもない。
まさかとは思うが、リンデンの作った精力剤の副作用だろうか。
冷静に考えてみれば、大勢のサキュバスたちをまとめて相手しても余裕で勝利を収められるようになる精力剤だ。
何らかの副作用があっても不思議ではない。
「ふぅ、気持ち良かった。イザリスもシフォン先生と仲直りできたし、めでたしめでたしだな」
イザリスも本気で俺に惚れているのか、魔王軍との縁は切ったというし、サキュバスたちも俺に好意的だ。
俺の裁量で動かせる人員が千人弱手に入ったと思えば、まあ、いいかな。
そんなことを考えていると、不意に誰かが俺の部屋の扉をノックした。
「ん? 誰かな、はーい」
ガチャッと扉を開いた先には、ミュリエルが立っていた。
ミュリエルの視線が部屋の中、ベッドで横たわっているシフォンやイザリスに向けられて、サッと視線を逸らされる。
「あ、えっと、ミュリエル嬢?」
「その、アノン殿下に話があって来ました。国王陛下と私の父、サイフォン大公がお呼びです」
「え゛?」
やばい。今度は社会的に死ぬかも知れない!!
そう思って、ミュリエルに案内された部屋に入ると。
「てめぇがうちの娘に手ぇ出した野郎かぁ!! 歯ぁくいしばれぇ!!」
「ひぇ!?」
訂正する。物理的に死ぬかも知れない。
――――――――――――――――――――――
あとがき
作者「次回は修羅場かなあ?」
アノン「ガクブルガクブル」
「制裁を受ける時が来た」「作者も制裁受けそう」「落ちで草」と思った方は、感想、ブックマーク、★評価、レビューをよろしくお願いします。
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