第26話 悪役王子、精魂尽き果てる
俺は床で正座していた。隣でマーリンも正座している。
そして、正面にはソファーに腰かけたニコニコ笑顔のソフィアさん。
「儂は悪くないのじゃ!! アノンが儂を襲ってきたのじゃ!!」
「あっ、こいつ!!」
「このロリコンめ!! 儂の艶体を好き放題しおって!!」
「し、師匠だって途中からノリノリだったじゃないですか!!」
「あ、あれは、その、おぬしの……あれが気持ち良かったのじゃ!! しかも勝手に中に出しおって!!」
「それはすみません!!」
部屋に色々なものが混ざりあったような臭いが充満する中、俺とマーリンは互いに罪を擦り付け合う。
「お二人とも、お静かに」
「「あ、はい」」
どうしよう。言い訳のしようがない。
だってマーリンとの行為中をばっちり見られてしまったのだ。
微笑むソフィアが怖い。
俺の背筋に嫌な汗が流れ、必死に弁明を考えていたその時。
ずっと黙っていたソフィアが口を開いた。
「まずアノン様」
「は、はい」
「そこまで怯えないでください。別に、アノン様が他の女性を肌を重ねたことを責めるつもりはありませんから」
「……え?」
俺は間の抜けた表情を見せる。
てっきり浮気をバチクソ責められると思って覚悟していたのだが。
「アノン様はフェイリス王国の王子。いずれは王となる身です。となれば、側室の一人や二人はいて当然でしょう。王家の血筋を残すことが使命の一つになるのですから。……まあ、子供が多すぎても色々と問題にはなるでしょうけど。私も嫉妬はするでしょうが、それを止めるつもりは毛頭ありません」
「えっと、はい」
「私が怒っているのは、皆が汗を流して働く日中に快楽を貪っていたことです」
「……はい。すみませんでした」
だ、だってやること無かったし……。
とか言い訳するとソフィアのお説教が長くなりそうなので黙っておく。
「そして、マーリン様」
「う、うむ。な、何なのじゃ?」
「何回ですか?」
「ふぁ?」
「何回、中に出してもらったのですか?」
「えーと、え?」
ソフィアの唐突な質問に、俺もマーリンも目を瞬かせる。
マーリンは困惑しながらもソフィアの問いに答えた。
「えーと、十より先は数えておらんのじゃ」
「……そうですか」
今の質問にはどういう意図があったのだろうか。
「アノン様」
「ひゃい!!」
「一応聞いておきますが、他に手を出した女性はいませんか?」
「あ、は――」
俺は「はい」と頷こうとして、思わず言葉を詰まらせてしまった。
いるのだ。
「……えっと、その、ひ、一人、いや、二人います」
「……誰ですか?」
「シフォン先生と、アデウスです」
アデウスというのは、シフォンが従える悪魔の一匹で、俺の性欲を抑える役割を担っていたが……。
彼女の力では俺の性欲をちっとも抑えられず、お役御免となって、今はソフィアの影に待機しているはずだ。
「……シフォン様はともかく、アデウス? アノン様、ぬいぐるみに興奮なさるのですか?」
「ち、違うから!! アデウスがソフィアに化けたから!! 逆バニーソフィアに化けて我慢できなくなっちゃっただけだから!!」
「そ、そうですか。……分かりました、アノン様」
ソフィアが一度目を瞑って、こくりと頷く。
そして、何を思ってか俺に右手を差し出して、立ち上がらせる。
「アノン様」
「うわあっ!!」
そのままソファーに押し倒され、ソフィアが俺の上に乗る。
え? え、何!? どういう状況!?
「マーリン様」
「な、なんじゃ?」
「少し、シフォン様を呼んできてください。話し合いたいことあるので」
「う、うむ、分かったのじゃ」
ソフィアが肉食獣のようなギラギラした目で俺を見下ろしながら言う。
マーリンはソフィアに逆らえず、一度退室してシフォンを呼びに行った。
しばらくして、シフォンを連れたマーリンが戻ってくる。
「あの、これは、どういう……?」
「シフォン様、アノン様から聞きました。魔術学園に通う前、一度だけ情を交わしたと」
「!? そ、それは……」
「ああ、勘違いしないでください。責めているわけではありません。王族が複数人の女性を娶ることなど珍しくないですし、私とて覚悟はしておりました。……でも、覚悟はしていても嫉妬はするんです」
そう言って、ソフィアが妖しく微笑む。
その仕草が十五歳とは思えないほど妖艶で、俺は思わず生唾を飲み込んだ。
ソフィアが俺のエクスカリバーをズボン越しに指先で撫でる。
「ふふっ、アノン様ったら。いつもより硬いですね?」
「あ、あの、ソフィア? ソフィアさん? 何をするおつもりで?」
「いえ、ただ私という婚約者がありながら、他の女性に手を出したわるぅーい未来の旦那様をお仕置きするだけです」
「えっと、シフォン先生と師匠が見てるんですが」
「見せつけるんです。……私だって嫉妬するんです。私が一番アノン様を気持ち良くできます。それを証明したい。まあ、私ではアノン様の性欲を受け止め切ることはできないでしょうから、秘密兵器を使いますが」
ソフィアがどこからか小瓶を取り出した。
小瓶の中の紫色に輝く怪しい液体を一気に飲み干してしまうソフィア。
「ぷはぁ、ふふっ。アノン様、これが何か分かりますか?」
「わ、分かんないです」
「強力な精力剤です。いつかアノン様の性欲を受け止め切れるよう、リンデン様に作っておいてもらったものです」
俺の身体を撫でながら、ソフィアが耳元で囁きかけてくる。
「これからアノン様が泣くまでエッチなことをします。いえ、泣いてもエッチなことをしまくります。限界以上に搾り取ります。――お覚悟を」
「え、あ、ちょ、待っ」
その後、俺は限界まで搾り取られた。
とは言え、限界を迎えたのは精力剤でドーピングしたソフィアとて同じだった。
ほぼ互角の戦いである。
「はあ、はあ、はあ……。流石はアノン様です。まだ私一人では勝てませんね」
「や、やっと終わった」
「ふふっ、まだ終わってないですよ?」
「え? だって、ソフィアはもう……」
「アノン様は少し痛い目を見るべきです。というわけでお二人とも、後はお願いしますね?」
「ふぁ?」
ソフィアが視線を向けた先には。
「ふぅー、ふぅー、まったく、目の前で盛りおって!! 儂も辛抱たまらんのじゃ!!」
「はあ、はあ、アノン王子……」
鼻息を荒くし、本能を剥き出しにしたシフォンとマーリンがいた。
「ふんっ、さっきの仕返しなのじゃ!! おぬしが負けを認めるまでやるのじゃ!!」
「……すみません、アノン王子。あの日のことを思い出して、身体が火照ってしまって……その、優しくしますから……」
「ちょ、せ、せめて少し休ませ――」
翌日、俺は文字通り精魂尽き果てた状態で見つかるのであった。
――――――――――――――――――――――
あとがき
作者「直接的な描写やストレートな表現は一切していない。だからセーフ。むしろストレートに書けなくてすまなかったと読者の皆様に謝罪したい」
「アノンのエクスカリバーをへし折りたい」「作者はもっとギリギリを攻めろ」「肉食系ソフィアさん最高」と思った方は、感想、ブックマーク、★評価、レビューをよろしくお願いします。
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