第27話 悪役王子、Uターンする




 ソフィアたちにこってり搾られた翌日。



「リンデもん、俺にも精力剤作ってくれぇ」


「帰れ」



 リンデンの工房を訪れて、俺はソフィアたちにリベンジするべく精力剤の作製を依頼していた。


 昨日の三人は凄かった。


 特に精力剤を飲んだソフィアが物凄く激しかったのだ。

 いや、もう激しいとかいう次元じゃない。


 あれは完全にサキュバスだ。


 根こそぎ俺の生命エネルギーを吸い取るために姿を現した美少女サキュバスに違いない。

 サキュバスを懲らしめるには、さらなるスタミナを要する。


 ああ、別に負けっぱなしでも悪くはないのだ。


 一通り激しく搾ってきた後はめちゃくちゃ甘やかしてくれるし。


 でも、ああ、でもしかし、だ。


 男たるもの女の子にされるがままというのはとても恥ずかしいのだ。



「可能なら三日三晩連戦できるような絶倫になる薬が欲しい」


「オレ様は便利屋じゃねーんだぞ……」



 リンデンが悪態を吐く。


 えー? でもリンデンってお願いしたら何でも作ってくれるし、実質ドラ◯もんだと思うのよ。


 なんて考えていると、リンデもんが小瓶を投げて寄越した。



「これって……」


「てめぇの婚約者様に頼まれて作った精力剤、の原液だ」


「ほほう!!」



 俺は昨日のソフィアを思い出す。


 普段なら俺との行為に耐えられず、途中でバテてしまうソフィアが、まるでA5ランクの黒毛和牛を目の前にした空腹の獅子みたいになってしまう薬だ。


 俺がこれを飲めば、もうベッドの上で無双できるのではなかろうか。


 ニヤニヤが止まらない。


 ソフィアだけでなく、昨日俺を散々いじめてくれたシフォンやマーリンにも仕返しできる。



「先に言っておくが、一度に大量摂取するなよ」


「え、なんで?」


「一滴で一晩、二滴で三日、三滴で七日は飲まず食わずでもデキるようになる代物だ。丸々一本飲めばてめぇのイチモツが、というか玉が破裂する」


「ヒエッ。な、なんで!?」


「出す速度よりも生成する速度が上回っちまうんだよ」


「……これ、危ない薬じゃないよな?」


「安全性は問題ねーよ。用法用量を守ればな」



 どんなものでも飲み過ぎは良くないってことか。



「ま、ありがたくもらっておこうかな。っと、そろそろ行かないと」


「どこ行くんだ?」


「父上に呼ばれてるんだ。なんか、結構大事な話らしい」



 俺はリンデンの工房を後にし、父上の執務室へと向かった。

 この時間帯、父上は王城の執務室で大量の書類とにらめっこしている。


 と言っても宰相や文官がまとめた書類に判子を押すだけだが。



「父上、アノンです」


「おお、よく来たな。時間通りじゃ」


「それでお話というのは?」


「ああ、まずは座りなさい」



 父上に促され、俺は椅子に腰かける。



「実は、折り入ってそなたに頼みがあってな」


「頼み、ですか」


「うむ。三ヶ月後、ユースティア王国の第一王子が結婚する話は知っておるか?」


「そりゃあ、まあ。仮にも同盟国のおめでたいことですし。それがどうかなさったので?」


「その結婚式に祝いの使者として参列して欲しいのじゃ」


「えぇー」


「露骨に嫌そうな顔をするのう」



 だって実際に嫌だもん。


 ユースティア王国はフェイリス王国最大の友好大国だから、まあ、祝いの使者は良い。


 でもそういうのって、決まって面倒なパーティーにも参加しなくちゃ駄目なのだ。



「俺、パーティー嫌いですから」


「余も嫌いじゃ」



 王族と言ったら毎日パーティーしてそうなイメージだが、フェイリスでは違う。


 何というか、パーティーって無駄が多いのだ。


 アホみたいなお金がかかるし、うちみたいに貧乏な劣等国では一年に一回の建国記念日くらいしかパーティーが無い。


 そのパーティーも招待状だけは各地の貴族に送って、来たい人だけ来るゆるい集まりだ。



「何故父上が行かないのです?」


「余はほら、忙しいしのだ」


「父上がユースティアに行ってる間、俺が政務を代わりに行いますよ?」


「ほっほっほっ、遠慮するでない。ユースティアは大国。そなたは子供、たまには遊びに行くことも必要じゃ」


「ははは」


「ほっほっほっ」



 ちくしょう!! 結局俺がユースティアに行くことになっちまった!!


 しかし、となると色々と準備が必要だな。


 俺は速攻でUターンして、リンデンの工房に突撃した。



「ヘイ、リンデもん!! ちょっと作って欲しいものがあるんだけど!!」


「てめぇ、一日に何度来る気だ。……で? 何が欲しいんだ?」


「実は――」



 俺は前々から欲しかったものの構造を大雑把に説明し、作製を依頼する。


 すると、リンデンは難しい表情をしながらも、ただ一言呟いた。



「――を、一ヶ月くらいで作って」


「面白ぇじゃねーか。てめぇはどこからこんなもんの知識を持ってくるんだ?」


「え? あ、えーと、ははは、内緒」



 こうして俺は、ユースティア王国への行くことが決まるのであった。


 ……それにしても、ユースティアの第一王子の結婚式か。

 何かあったような気がするけど、何だっけ?


 まあ、そのうち思い出せるよね。







――――――――――――――――――――――

あとがき


作者「リンデもーん、その精力剤作者にもプリーズ」


リンデン「帰れ」



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