第41話 悪役王子、愛を見せつける
ティエラが俺の隣に座り、しなだれかかってくる。
女の子の甘い良い匂いがして、俺は心臓がドキドキするのを感じた。
「あー、フェイリスのせがれ。一つだけ訊かせろ。ティエラに責任を取るって宣ったのは本当か?」
「あ、はい。そうですね」
「……そうか」
たしかにティエラとのエッチの最中、言った気がする。
俺がユースティア王の問いに頷くと、ティエラは嬉しそうに目を細めた。
「ま、本当ならオレは何も言えん。ティエラ殿、一応言っておくが、フェイリスのせがれは貴女より一回りは歳下だぞ」
「ええ、知っているわ。でも好きになっちゃったらんだから仕方ないじゃない? 遅めの初恋よ♡ それとも母が父以外の男に嫁ぐのは嫌?」
「面白くない冗句だ」
母? ああ、そうか。ティエラは前ユースティア王の後妻だしな。
血縁上の関係は無いが、一応ユースティア王が俺の息子になるのか。面白い関係図だな。
「まあ、承知した。フェイリスのせがれ、ティエラ殿は中々ポンコツなところがある。苦労するぞ」
そう言って少し寂しそうに笑うユースティア王。
……もしかして……。
「ユースティア王、貴方は――」
「おっと、そろそろ仕事に戻らにゃならん。愚息にも話すことがあるし、お前さんらはとっとと部屋に戻れ」
「……はい」
ユースティア王が立ち上がり、部屋を出ようとする。
そんな彼の背に向けて、俺は言った。
「ユースティア王」
「ん? なんだ?」
「俺、ティエラ殿をしっかり幸せにしますから」
「……ふっ、ははは!! 小僧が言いおるわ!!」
がははと笑って部屋を出るユースティア王。
やはり、ユースティア王はティエラに対して浅からぬ想いを抱いていたのかも知れない。
「えっと、アノン王子殿下。今のやり取りは?」
「男と男の約束って奴です」
「?」
それから俺とティエラは部屋に戻った。
ミュリエルが遊びに来ていたらしく、シフォンと楽しくお茶会中だった。
イザリスはベッドで横になって
「おや。早かったですね、アノン王子」
「はい。早く話が終わりまして。シフォン先生は、ミュリエルと何を話していたんですか?」
「アノン王子の妻になったらどういう苦労があるか話していました」
「む」
苦労、苦労かあ。たしかに迷惑はかけてるかも知れないが。
「ちなみにミュリエル、シフォン先生に何を吹き込まれたんですか?」
「その、アノン殿下はいつでもどこでも求めてくるので、下着は履かない方がいい、と」
「あ、シフォン先生が最近下着を付けていないのはそういう理由だったんですね」
言われてみれば、たしかに最近のシフォンは下着をあまり履いていない。
俺としてはシフォン先生の見た目に反して大人な下着が良かったから履いて欲しいんだけどなあ。
「ちなみに、より激しいエッチをして欲しい時は他の男性と話しているところを見せると良いですよ。夜になると『他の男と楽しそうに話すのやめて!!』と面倒臭い恋人発言しながら、こっちが気絶してもやめてくれなくなるので」
おい、シフォン。
ミュリエルになんてことを教えるんだ。まあ、事実だけども。
「そ、それはアノン殿下が可哀想なのでは?」
「ふふっ、それはそうなんですがね? アノン王子は嫉妬すると乱暴になって、Mっ気のある私にはそれくらいがちょうどいいので」
「ふむふむ……」
ミュリエルがメモを取り、うんうんと頷く。
すると、二人の会話に興味を持ったティエラがさり気なく参加する。
「ところでシフォンちゃん、アノン王子殿下とマンネリになったりしないの?」
「マンネリ、ですか? ……そうですね、あまりそういうことは。よくエッチな衣装を着てシチュエーションを変えるので」
「具体的にはどのような?」
「え、い、言わないと駄目ですか?」
「「是非!! 今後のために!!」」
「そ、その、『ちあがある』という、応援のための衣装を着て、アノン王子に頑張れーって言いながらエッチしたり……」
「「おおー」」
なんだろ、聞いてるこっちも恥ずかしくなってきた。
俺がいたたまれなくなっていると、ベッドで眠っていたイザリスがむくりと起き上がって来る。
「……旦那さま……お腹……空いた……」
「あ、たしかにもうお昼ですもんね。厨房から何か貰って――」
「……んっ……お昼ご飯は……旦那さま……」
「え? うわあ!!」
イザリスに押し倒されて、ファイッ!!
それからシフォンやミュリエル、ティエラまで混ざってきて大乱闘だ。
以前の俺であれば苦戦したかも知れないが、今の俺は精力剤の副作用か、いくらエネルギーを放出しても萎えない。
魔術に関してはまだまだ中の下の実力しかないが、ベッドの上では無双である。
一通り全員を可愛がった後、俺は視線を感じ、あることに気付いた。
誰かが部屋の入り口の扉を少し開いて、俺たちのガチバトルを盗み見している。
アレク王子だった。
昼間から覗きとか良い趣味してんなあ。まあ、男として気持ちは分かるが。
「はあ、はあ、アノン殿下ぁ」
その時だった。
ミュリエルが男心をくすぐるような猫なで声で俺に甘えてきた。
それを見て、俺の中の悪魔が囁いてくる。
「おら、まだまだこんなもんじゃないぞ!!」
「はぅ!!」
俺はアレクにミュリエルの顔がよく見えるように戦闘を続行した。
俺たちの愛を見けつけてやるのだ。
アレクは表情の無いミュリエルしか知らない。
ははは、知らなかっただろ!! ミュリエルがこんなに可愛い顔をするなんて!!
でももうお前の女じゃないからな!!
ミュリエルは俺の女で、俺だけがミュリエルとエロいことしても良いんだ!!
「ふふっ、あらあら。アノン王子殿下ったら、悪い人ね」
「次はお前だ、ティエラ!!」
「はい、いつでもどうぞ」
ティエラも俺の女だ。
ゲームのシナリオ通りならアレク、お前の女だったはずの女。
でも今は俺の女!! 手を出したら許さないからな!!
俺がミュリエルとティエラを激しく攻撃していると、シフォンが何かを察した。
「あー、そういう……。まったく、うちの王子は性格が悪いというか、大人気ないというか。いえ、アノン王子の方が歳下みたいですが」
「……シフォン……」
「む、なんですか? イザリスさん」
「……旦那さまが……あっちに構ってて……暇……」
「彼のことです、待っていればすぐ順番は回ってきますよ」
「……待てない……から……汝でいい……」
「え? ちょ、待っ」
これは大乱闘。誰が誰と戦っても良いバトルロワイヤルだ。
ミュリエルとティエラを倒した後、俺はシフォンとイザリスのバトルに割って入って漁夫の利を得た。
勝者、俺である。
こうして長いようで短かったユースティア王国の結婚式は終わり、俺は数日後にミュリエルとティエラを連れてフェイリスに帰った。
アレクはなんか知らんけど、女性不信になって青少年に固執するようになったらしい。
俺、悪くないよね?
――――――――――――――――――――――
あとがき
作者「寝取り寝取られは紳士の嗜み。ただし、エロの深淵を覗き見た者に限る」
アノン「何言ってんだ、こいつ」
「王様、嫌いやないで」「この主人公やばい」「アレクざまあ!!」と思った方は、感想、ブックマーク、★評価、レビューをよろしくお願いします。
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