第42話 悪役王子、まとめて妊娠させる





 俺たちがユースティアからフェイリスに帰還し、一ヶ月近くが経った。


 俺はリンデンの工房で健康診断を受けている。


 リンデン特製の精力剤を飲み干してしまった副作用が無いか、念入りに検査しているのだ。


 結果は……。



「大して問題はねーな。むしろ体力や筋力、僅かだが魔力も向上してやがるぞ」


「よ、良かったあ」



 実は不安だったのだ。


 油断したらゴールデンボールが爆散するのではないかと気が気ではなかった。


 そんなことになったらソフィアたちとエロいこと出来なくなるし。



「……おい。検査は終わったんだ。さっさとオレ様の工房から出ていけ」


「そんなこと言うなよ。俺が落ち着ける場所はここしかないんだ」


「チッ。机の上のモンに触ったら殺すからな」


「うーい」



 リンデンの工房は居心地が良い。


 というか、最近はお城で俺のやることが無くて手持ち無沙汰なのだ。



「聞いてくれよ、リンデもん」


「黙れ。殺すぞ」


「俺の将来の奥さんたちがさ、優秀すぎるの。優秀すぎて怖いの」



 まずはソフィア。


 俺がユースティアに行っている間、彼女はますます従える悪魔の数を増やした。


 今や街の治安維持や国境警備、労働力として無くてはならないくらいに重要となっている。

 戦争にでもなったら悪魔たちが大活躍してくれるだろう。


 革命が起きても大丈夫、と思えるくらいには凄まじい戦力だ。


 シフォンが育成している魔術師団もソフィアの悪魔たちを相手にできるくらい成長してるみたいだし。

 マーリンによる王都の魔術的防御はもっと凄いことになってる。


 なんか隕石が降ってきても百発くらいは耐えられるとか何とか。



「ティエラもミュリエルもイザリスも、本当に凄いんだよ」



 ティエラは何と言うか、人心掌握が恐ろしく上手かった。


 あのソフィアをも言葉で説得し、ティエラ自身とミュリエル、イザリスを俺の嫁にするということを認めさせてしまった。


 口が上手いとか、そういう次元じゃない。


 相手の思考を誘導するというか、好意を抱かせるのが上手いというか。


 俺はソフィアからのお叱りを覚悟していたが、ティエラのお陰で全員の関係が良好という奇跡が起こった。


 そして、ミュリエルだ。


 彼女は政治的な手腕が恐ろしい程で、父上も一部の仕事を彼女に押し付け――頼むくらいだった。


 一国の王として、他国から嫁いできた者に国の仕事を任せるとかどうかと思うが、父上曰く「そなたの選んだ娘なら大丈夫じゃろ」と言ってのけた。


 剛胆というか、楽観的すぎるというか。父上にも困ったものだ。


 最後にイザリス。


 彼女は何というか、基本的に何もしない。ずっと眠っている。


 たまに起きたかと思えば、俺とエッチして食事を済ませ、また寝る。

 恐ろしいのはイザリスの配下であるサキュバスたちだ。


 現在、サキュバスの街にいたサキュバスたちは世界中に散って諜報活動をしている。


 サキュバスはいつでもどこにいても街に戻れるらしく、既存のフェイリスの諜報部隊が軒並み自信を喪失して辞職してしまった。


 最近は元諜報部隊の人たちが、各国に赴いて得た知識をフル活用し、飲食店を開いたらしい。


 兵士たちの間で評判になっていた。


 話を戻すが、サキュバスの諜報能力は恐ろしく高かった。

 相手が男なら情報を引き出すなどサキュバスにとっては朝飯前らしい。


 ただ、まあ、俺はサキュバスたちにも手を出している。


 流石に全員を嫁にすることは出来ないが、彼女たちのことも大切に思っているわけで。


 だから他の男と寝るのだけは禁止させた。


 イザリスの話だとサキュバスって普通の食事でも問題無いらしいしね。

 サキュバスにとって男はデザートみたいなもんとのこと。


 でもそれではサキュバスたちも我慢出来ないだろうということで、俺が全員の面倒を見ることになっている。


 サキュバスの街は時間の流れが違うし、諜報から帰ってきた子とめちゃくちゃ致しているのだ。


 流石に俺も性欲を我慢しなきゃ、とは常々思っているのだが……。



「皆して可愛いから、ついついヤっちゃうんだよねぇ」


「話は終わりか? 終わりだな」


「真面目に聞いてよ」


「知るか。それよりも、ほら」


「ん? って、え、銃!?」



 リンデンが投げて寄越したのは、火縄銃とかそういうものじゃない。


 ライフルだ。


 後ろから弾を込めるタイプで、連射性も悪くなさそうなった。



「試作品だ。ましんがん、だったか? 最終的にはそれを目指す。敵に鹵獲されることを防ぐために、マーリンに魔術を施してもらう予定だ。登録した者以外が触れると爆発して消滅する、みたいなもんだ」


「何それ凄い」



 ここにもチートがいたな!!


 これじゃあマジで俺が浮いてしまう。俺、魔術とかマーリンやシフォンに比べるとかなり地味だし。


 俺にできることと言ったら、女の子をベッドの上で鳴かせることくらい……。


 いや、これもある意味チートか?


 そんなことを考えていると、不意にリンデンの工房に誰かが入ってきた。



「あ、ご主人様いた!!」


「リーシアか。どうしたんだ?」



 姿を現したのはリンデンの妹、リーシアだった。



「ソフィア様に、ご主人様をお部屋へ呼んできて欲しいと頼まれまして」


「ソフィアが? 何かあったのかな?」


「えーと、その、まあ、とにかく行ってあげてください」


「ん、分かった」



 俺はリンデンの工房を後にして、ソフィアの部屋へ足早に向かう。

 もしかしたらソフィアからのお誘いかもしれないからな!!


 実を言うと、最近はソフィアとご無沙汰だった。


 あ、別に不仲ってわけじゃないよ? ソフィアが悪魔を増やしすぎて、その管理に追われていてエッチなことができずにいたのだ。


 それでもお願いしたらヤらせてくれるし、最高の婚約者である。


 ソフィアの部屋の前に到着し、俺は扉をコンコンとノックした。

 すると、中からすぐに返事が返ってきた。



『アノン様、どうぞ』


「どうしたんだ、ソフィア。急に……呼び……出したり……して……」



 理想郷が目の前にあった。



「アノン様、よく来てくださいました」


「こ、この格好は流石に……。いえ、でもアノン王子ならこっちの方が喜びますよね」


「何を恥ずかしがっておるのじゃ、シフォン。もっと堂々と胸を張るのじゃ」


「いや、あの、マーリン殿。この格好は流石に誰でも恥ずかしいのでは……」


「あら、ミュリエルちゃんったら顔を真っ赤にしちゃって。かわいいんだから」


「……お腹……空いた……」



 ソフィア、シフォン、マーリン、ミュリエル、ティエラ、イザリス……。


 六人の美少女美女が、それぞれ破廉恥な格好をしていた。


 俺のエクスカリバーが反応する。



「え、えっと、ソフィア? これは?」


「実は、アノン様に内緒で考えていたことがあるのです。誰が、その、最初に子を宿すのか、と」



 ソフィアが頬を赤らめて言う。



「皆様は正妻である私が最初に授かるべきだと仰っしゃられるのですが、どうにも申し訳なくて……。そこで、ある解決策を見出したんです」


「か、解決策?」


「はい。――その、全員一緒に授かれば良いのでは、と」



 何それ最高かよ。しかし、どうしたものか。



「で、ですが、結婚前に子供を作るのは……」


「は、はい。はしたない、ですよね」



 この世界には授かり婚という概念が無い。


 いや、別に婚約者なのだし、授かってから結婚というのもおかしくはないと思うのだが……。


 そういうわけで、俺は常に誰かとする時は避妊魔術を使っている。



「でも、その少し想像してしまって」


「何を……?」


「赤ちゃんも一緒にする結婚式は、その、素敵な気がして」


「っ」



 そんなこと言われたら……。



「それで、その、実は今日、私たち皆、妊娠しやすい日なんです。アノン様、今晩は寝かせませんからね……?」


「う、うおおおおおおおッ!!!!」



 俺VSソフィアたち。


 その激闘は三日三晩続き、全員が俺の子供を妊娠するまでヤりにヤリまくるのであった。


 そして、全員同時に妊娠した。


 俺の遺伝子を受け継いだ子供たちが、彼女たちのお腹に宿だったのだ。


 ついに俺もファザーになる!! と思った矢先の出来事。



「エルフの集落に行って来て欲しい、ですって!?」

 


 俺は父上から呼び出しを受けて、ある事を頼まれた。


 新たな出会いが、俺を待っているような気がした。






――――――――――――――――――――――

あとがき


作者「避妊魔術って便利だなあ。作者も使えるようにしとかないと」


アノン「使うタイミングないだろ」


作者「……」


アノン「ちょ、ごめん、静かに泣くなって!!」



★お知らせ★

ここで物語の更新を一時的に止めます。ここまでのご愛読、ありがとうございました。



「全員チートで草」「果たして絶倫をチートと呼べるのか」「作者に避妊魔術使うタイミングないだろ」と思った方は、感想、ブックマーク、★評価、レビューをよろしくお願いします。

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劣等国の悪役王子に生まれ変わった俺は亡命してきた悪役たちを受け入れますっ! ナガワ ヒイロ @igana0510

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